国土交通省の3.5%減は、競売が増えたという意味ですか。
違います。既存住宅販売量指数は、個人が取得した既存住宅の所有権移転登記をもとにした指数で、別荘や投資用物件なども含みます。2026年5月の合計が前月比3.5%減だったことは、任意売却や競売の件数、個別の家の売却可能性を示しません。
この記事の結論
Q. 2026年の市場データが下がったなら、任意売却と競売のどちらを急いで選ぶべきですか。 A. 既存住宅販売量指数の3.5%減は、任意売却や競売の件数ではありません。任意売却は債権者の承諾を要する市場取引、競売は裁判所の手続です。通知の段階、売出価格、売却後の住まいを先に確認してください。
国土交通省は2026年8月31日、既存住宅販売量指数の2026年5月分を公表しました。戸建住宅とマンションを合わせた季節調整値は125.0で、前月比3.5%減です。基準は2010年平均を100とする指数で、5月に市場全体の移転登記量が4月より少なかったことを示します。
この数字は、住宅ローンの返済に詰まった持ち主が最初に見るには有用です。ただし、任意売却の成約件数でも、競売の申立件数でもありません。国土交通省の定義は、建物の売買を原因とする所有権移転登記のうち、個人が取得した既存住宅を加工・指数化したものです。別荘、セカンドハウス、投資用物件なども含まれます。
3.5%減を見て「任意売却は売れない」と決めるのも、「競売より高く売れる」と決めるのも、数字の使い方が違います。この指数から分かるのは、既存住宅全体の動きだけです。返済中の家が、どの価格なら、どの期間で売れるかは、所在地、道路、建物の状態、抵当権者の条件を個別に確かめるしかありません。
任意売却は、住宅金融支援機構の案内では、不動産競売のような法的手続による強制的な物件処分ではなく、通常の不動産取引として売買する方法です。ただし、売主と買主が契約すれば終わる取引ではありません。抵当権を消すため、債権者が売出価格と売却条件を確認し、抹消に応じるかを審査します。
住宅金融支援機構の2026年4月1日更新の案内には、本人が仲介業者を選ぶ、物件調査と価格査定を行う、機構が売出価格を確認する、販売活動をする、抵当権抹消の承諾を審査する、売買契約と決済へ進む、という順番が示されています。機構が確認していない価格で購入希望者を見つけても、抵当権の抹消に応じられない場合があるとも書かれています。
競売は、民事執行法にもとづく裁判所の手続です。担保権の実行として申立てがされると、開始決定、執行官による現況調査、物件明細書の作成、売却基準価額の決定、入札、売却決定、代金納付へ進みます。民事執行法79条は、買受人が代金を納付した時に不動産を取得すると定めています。
違いを一枚に置くと、比較の軸は「どちらが得か」ではありません。任意売却は価格と買主と引渡し時期を市場の中で組み立てる余地がある一方、債権者の承諾が要ります。競売は裁判所の日程と書面で進み、所有者が販売条件を組む手続ではありません。任意売却にも時間の制約があり、競売にも申立ての取下げという動きが残る場合があります。どちらも個別の結果を先に保証できるものではありません。
国土交通省の指数が前月比3.5%減だったとき、私なら市場の悪化を理由に売却を急がせません。まず、指数が測っているものと、自分の家で測るものを分けます。前者は登記データから見た全国の既存住宅の動きです。後者は、売却可能な価格、債権者へ渡す額、決済までに残る日数です。
数字を置く紙は三列で足ります。左に住宅ローンの残高と次回返済日、中央に売却価格の査定額から売買に要る費用を差し引いた見込み、右に競売の通知に書かれた期日を置きます。査定額だけでは足りません。抵当権の抹消に必要な額と、売却後の住まいに要る現金も別に書きます。
ここで、私の判断を明示します。今回は使える体験ストックがないため、相談事例ではなく意見として書きます。市場指数は、売却を急ぐ号令ではなく、売り方を比べる前に自分の現在地を置くための材料です。3.5%という全国値を自宅の値下がり率に変換してはいけません。家計に落とせる数字だけを残すのが、私の仕事の癖です。
私が迷うのは、市場全体の数字を出すことで、かえって急いで売らなければならないと読まれないかという点です。数字は判断材料になりますが、通知に書かれた期日や家計の不足額を置き換えません。だから指数の見出しだけで結論を出さず、測っている範囲と測っていない範囲を同じ紙に残します。
反対に、競売の通知が来ているのに「市場が下がったから、もう無理だ」と決めるのも早いです。民事執行法の手続は進みますが、通知の種類によって確認する場所が違います。開始決定なのか、現況調査の通知なのか、入札の公告なのかで、残り時間の性質は変わります。滞納から開札までの7段階で届いた書面の言葉と照合してください。
任意売却を選ぶとしても、当社が買い取る側には回りません。売主の側で条件を整理し、債権者に示すところまでです。任意売却を率先して勧めず、返済方法の変更、通常の売却、親族による購入、競売を受け入れる判断などを同じ紙に置きます。選択肢の並べ方は競売はいつまで取り下げられるかや担保不動産競売の全体像でも確認できます。
深夜にひとりで読んでいるなら、今夜は結論を出さなくて構いません。封筒を捨てず、表題と差出人と日付を紙に写します。次に、住宅ローンの返済予定表から残高と次回返済日を出します。最後に、売ったあとに住む場所へ必要な初期費用を、売却価格とは別に書きます。
通常の売却と任意売却の違いは、価格だけではありません。任意売却では抵当権者の承諾が加わり、競売では裁判所の手続が進みます。市場データを見たあとに電話する先も、現在の借入先、競売の申立てをした債権者、相談する宅地建物取引業者で役割が異なります。任意売却の引っ越し費用についても、認められると決めず、先に家計の現金として数える順番を置いています。
私は、売却後の生活を紙の右端から外したくありません。家が売れた日が問題の終わりとは限らず、住まい、通勤、子どもの学校、連絡先の変更が続きます。債務の減免や法的な見通しは私が判断せず、提携する弁護士・司法書士へ渡します。宅地建物取引士としては、売買の条件と日程を整理し、分からない点を分からないまま残さないところまでを案内します。
出典
大石浩之(磐田市/不動産業)
宅地建物取引士。住宅ローンの返済に詰まった方の現在地を確かめ、任意売却を率先して勧めない立場で相談を受けています。詳しい立場は私たちの立場をご覧ください。
一次情報:https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo05_hh_000001_00273.html
この記事のよくある質問
違います。既存住宅販売量指数は、個人が取得した既存住宅の所有権移転登記をもとにした指数で、別荘や投資用物件なども含みます。2026年5月の合計が前月比3.5%減だったことは、任意売却や競売の件数、個別の家の売却可能性を示しません。
高く売れると決められません。任意売却は通常の不動産取引として進める余地がありますが、抵当権者が売出価格を確認し、抹消に応じるかを審査します。市場の価格、物件の状態、期限、債権者の条件を個別に確かめる必要があります。
相談はできます。ただし、競売の手続は裁判所の日程で進みます。開始決定、現況調査、期間入札の公告など、届いた書面の段階を確認し、債権者が申立てを取り下げる見込みを含めて条件を詰めます。競売を止められるとは申し上げません。
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富士ヶ丘サービス株式会社/宅地建物取引士 大石浩之(静岡県知事 第027186号)。 記事の内容は執筆時点の法令・公表資料にもとづきます。 個別の事案の見通しを示すものではありません。