返済ノート

担保不動産競売の全体像|申立てから配当まで、条文がどこに置かれているか

要旨

担保不動産競売は、担保権の登記がされた不動産についての申立てで開始します。判決は要りません。開始決定、現況調査、評価、売却、代金納付、配当という骨格の大半は、民事執行法188条が強制競売の規定を準用して動いています。

キーワード民事執行/担保不動産競売

裁判所から封書が届いた、という電話を受けることがあります。中身は担保不動産競売開始決定の正本です。それまで金融機関との間だけで進んでいた話に、突然、裁判所という三人目が入ってくる。手続の名前も、条文の番号も、送られてきた紙の上で初めて見る言葉です。

本稿は、この手続の全体像を条文の並びとして示します。個々の段階の中身は、以後の論考で扱います1。組み立てておきたいのは骨格です。骨格が分かると、届いた書面がどの段階のものかを自分で置けるようになります。

先に、条文の在処だけ書いておきます。担保権の実行は民事執行法の第三章(180条から195条)に置かれています。ところが、その章をいくら読んでも、現況調査も、期間入札も、配当も出てきません。中身は第二章の強制競売の規定にあり、188条がそれを丸ごと借りてきています。この手続を条文で追うには、二つの章を行き来することになります。

申立て 民執法181条 開始決定 差押えの宣言 調査と評価 民執法57条・58条 売却の実施 民執法64条 代金納付 民執法79条 早い 遅い
図1 段階の順序。出典:民事執行法181条・45条・57条・58条・64条・79条。各段階の間隔は事案により異なるため、期間の長短を表すものではない。

1. 「競売」という言葉が指している二つの手続

日常の言葉では、家が競売にかけられる、と一括りに言います。条文の上では、同じ結果に向かう入口が二つあります。判決などの債務名義に基づいて行われる強制競売と、抵当権などの担保権の実行として行われる担保不動産競売です。住宅ローンで問題になるのは、通常は後者です。

担保権の実行のほうは、民事執行法の第三章に置かれています。その最初の条文が、実行の方法を二つに分けています。

民事執行法180条(不動産担保権の実行の方法)

不動産(登記することができない土地の定着物を除き、第四十三条第二項の規定により不動産とみなされるものを含む。以下この章において同じ。)を目的とする担保権(以下この章において「不動産担保権」という。)の実行は、次に掲げる方法であつて債権者が選択したものにより行う。

一 担保不動産競売(競売による不動産担保権の実行をいう。以下この章において同じ。)の方法
二 担保不動産収益執行(不動産から生ずる収益を被担保債権の弁済に充てる方法による不動産担保権の実行をいう。以下この章において同じ。)の方法

まず、一号の書き方に目を留めてください。担保不動産競売とは「競売による不動産担保権の実行」である、と書かれています。「競売」という語そのものは、ここで定義されていません。売る方法の細目は、後に見る64条以下に回されています。

語の広さは章の末尾にも表れます。同法195条は、留置権による競売や、民法その他の法律の規定による換価のための競売についても、担保権の実行としての競売の例によるとしています。「競売」は、性質の違う場面をまとめて運ぶ器の名前です。

柱書には、もうひとつ大事な文言があります。二つの方法のうち「債権者が選択したもの」により行う、と書かれている点です。売ってしまうのか、賃料から回収するのか。選ぶのは債権者であって、所有者ではありません。もっとも収益執行は収益を弁済に充てる方法ですから、賃料が発生していない持ち家では選ばれる余地が乏しくなります2

強制競売との違いは、入口の要件に表れます。強制執行は債務名義により行われ(民事執行法22条)、執行文の付された債務名義の正本に基づいて実施されます(同法25条)。裁判を経て、判決なり公正証書なりを得てから、という順序です。担保権の実行はここが違います。

強制競売 判決などが要る 債務名義に基づく 民執法22条・25条 金銭債権の一般の執行 担保不動産競売 担保権の登記で足りる 判決を要しない 民執法181条1項1号 抵当権の実行
図2 入口の要件の違い。出典:民事執行法22条・25条・181条1項1号。手続の進み方や結果の違いを示す図ではなく、開始するために何が要るかだけを対比したもの。

入口は違いますが、共通して働く規定もあります。同法194条は38条・41条・42条を担保権の実行としての競売にも準用します。38条は第三者異議の訴え、42条1項は執行の費用を債務者の負担とする定めです。そして41条1項は、開始後に債務者が死亡した場合でも手続を続行できるとします。相続が起きても、そこで止まる仕組みにはなっていません。

差押債権者 申立てをした人 執行裁判所 決定と配当を行う 執行官 現況調査を行う 実行の申立て 調査の命令 報告書の提出
図3 手続に登場する三者。出典:民事執行法2条・3条・57条1項・84条1項。当事者の全部を示す図ではなく、書面が誰から誰へ動くかの向きだけを示すもの。

この三者のうち、所有者と居住者は図の外にいます。開始決定が届いた側の立場は、そこに表れています。競売と任意売却の違いは任意売却と競売は、何が違うかに整理しました。

2. 181条の入口と、188条という条文の作り

入口の条文 181条。登記があれば開始する。
争う条文 182条。理由は二つに限られる。
借りる条文 188条。中身は第二章にある。

担保不動産競売が始まる要件は、181条に置かれています。

民事執行法181条1項(不動産担保権の実行の開始)

不動産担保権の実行は、第一号の申立て又は第二号の文書若しくは電磁的記録の提出があつたときに限り、開始する。

一 担保権の登記(仮登記を除く。)がされた不動産についての不動産担保権の実行の申立て

一号を読んでください。担保権の登記がされた不動産について申立てがあれば、それだけで開始します。訴えを起こして勝つ必要はありません。抵当権の設定登記が、そのまま実行の切符になっています。括弧の中の「仮登記を除く」も読み飛ばさない値打ちがあります。条文は登記の種類まで指定しています。

裁判を先に経ないことの見返りは、争う場が後に置かれていることです。同法182条は、開始決定に対する執行抗告または執行異議の申立てにおいて、債務者または不動産の所有者は担保権の不存在または消滅を理由とすることができるとします。挙げられている理由は、担保権が無いことと、消えたことの二つだけです。返済が苦しいこと、額に納得がいかないこと、家族が住んでいることは、この条文が並べている理由ではありません。

手続を止める場面も限定的です。同法183条1項は、担保権の登記の抹消がされた不動産についての停止の申立てがあったとき、または同項二号が列挙する文書の提出があったときに、手続を停止しなければならないとします。いずれも、書面によって外から示される事実です。売却の話し合いが進んでいることそれ自体は、停止の事由には入っていません3

時間の幅も、開始決定の日で切れているわけではありません。同法187条1項は、開始決定の前であっても、所有者や占有者が価格減少行為をする場合に特に必要があるときは、申立てをしようとする者の申立てにより保全処分などを命ずることができるとしています。裁判所が関わる場面は、開始決定より前から始まりうるということです。

開始決定の前 民執法187条 開始のとき 民執法181条 決定のあと 民執法182条 手続の途中 民執法183条 早い 遅い
図4 第三章に固有の条文が働く場面の順序。出典:民事執行法181条・182条・183条・187条。それぞれの要件の中身を示す図ではなく、置かれている位置だけを示すもの。

ここまでが、第三章に固有の条文です。裏を返せば、第三章にはこれだけしかありません。現況調査も、物件明細書も、期間入札も、配当も、この章には書かれていない。両者をつないでいるのが188条です。

民事執行法188条(不動産執行の規定の準用)

第四十四条の規定は不動産担保権の実行について、前章第二節第一款第二目(第八十一条を除く。)の規定は担保不動産競売について、同款第三目の規定は担保不動産収益執行について準用する。

一文しかありませんが、運んでいる分量は相当なものです。「前章第二節第一款第二目」とは、強制競売について定めた45条から92条までを指します。開始決定、差押えの効力、配当要求の終期、現況調査、評価、物件明細書、売却の方法と許可、代金の納付、引渡命令、配当。担保不動産競売の実質は、ほとんどすべてがこの準用によって動いています。

強制競売の規定 民執法45条〜92条 開始決定から配当まで 第二章第二節第一款第二目 担保不動産競売 民執法180条〜188条 入口だけが別に置かれる 第三章 準用 188条は81条だけを準用から除いている
図5 準用の向き。出典:民事執行法188条。準用される個々の条文の中身や、読み替えの有無を示す図ではない。

そして、括弧の中です。準用から除かれているのは、81条ただ一か条だけ。81条は法定地上権の規定で、土地とその上の建物が「債務者の所有に属する場合」を要件にしています。一方、抵当権については民法388条が同じ趣旨の規定を置き、「同一の所有者に属する場合」と書いています。債務者の所有か、同一の所有者か。この一語の差があるために、担保不動産競売では民法388条が直接に働きます4。抵当権を設定した人が債務者本人とは限らない場面を考えると、この差が効いてきます。第三章を通して読むと、185条と186条は「削除」となっており、番号だけが残っています5

3. 開始から配当まで、条文がどこに置かれているか

準用される規定を、順に並べます。まず開始決定です。執行裁判所は開始決定をし、その決定において債権者のために不動産を差し押さえる旨を宣言します(45条1項)。差押えの効力は、開始決定が債務者に送達された時に生じます(46条1項)。ただし同条2項は、差押えは債務者が通常の用法に従って不動産を使用し、または収益することを妨げないとしています。差押えの登記が入っても、その日から住めなくなるわけではありません。

次に、期限が一本引かれます。49条1項は、裁判所書記官が物件明細書の作成までの手続に要する期間を考慮して配当要求の終期を定めなければならないとします。同条2項は、その終期を公告し、一定の債権者と、租税その他の公課を所管する官庁または公署に対し、債権の存否・原因・額を届け出るよう催告することを求めています。この催告によって、それまで表に出ていなかった債権者が姿を現します。

  • 配当要求の終期は書記官が定める(49条1項)
  • 後順位の抵当権者もこの場に立つ(87条1項4号)
  • 租税を所管する官公署にも催告が届く(49条2項3号)

誰が配当を受けるかは、87条1項が並べています。差押債権者、終期までに配当要求をした債権者、差押えの登記前に登記された仮差押えの債権者、そして同じく登記前に登記された先取特権・質権・抵当権で売却により消滅するものを有する債権者です。後順位の抵当権者は、この四号によって配当の場に立ちます。任意売却で話をする相手が一行とは限らないことは、この並びからも読み取れます6

開始決定 配当要求の終期 現況調査 期間入札 45条 49条 57条 64条
図6 四つの節目の前後関係。出典:民事執行法45条・49条・57条・64条、188条(準用)。各点の間隔は期間を表すものではなく、終期がいつ定まるかも事案により異なる。

調べる段階も準用で動きます。執行裁判所は執行官に現況調査を命じ(57条1項)、評価人を選任して評価を命じます(58条1項)。この二つをもとに、裁判所書記官が物件明細書を作成し(62条1項)、執行裁判所が売却基準価額を定めます(60条1項)。買受けの申出の額は、売却基準価額からその十分の二を控除した買受可能価額以上でなければなりません(同条3項)。62条1項二号は「売却によりその効力を失わないもの」を記載事項に挙げています。売却によって消えないものが、この紙の上に書き出されます。

値が付かない場合の定めも置かれています。63条1項は、買受可能価額が手続費用の見込額を超えないとき、または手続費用と優先債権の見込額の合計額に満たないときは、執行裁判所がその旨を差押債権者に通知しなければならないとします。同条2項本文は、差押債権者が通知を受けた日から一週間以内に一定の申出と保証の提供をしないときは、手続を取り消さなければならないとしています(ただし書に例外があります)。手続が途中で終わる道筋も、条文の側に置かれています。ただし、そこで動くのは執行裁判所と差押債権者です。

売却代金 債権者への配当 執行費用 残る債務 代金から出るもの 手続後も残るもの ※ 割合は事案により異なる。図は費目の並びを示すもの。
図7 配当に並ぶ費目。出典:民事執行法84条1項・2項、59条1項、42条1項。金額の割合も、控除の順序も表すものではない。売却代金で足りない部分が残ることを示すもの。

そして売る段階です。売却は裁判所書記官の定める方法により行われ、方法は入札または競り売りのほか最高裁判所規則で定めるとされています(64条1項・2項)。売却決定期日に許可または不許可が言い渡され(69条)、その決定は確定しなければ効力を生じません(74条5項)。買受人は代金を納付した時に不動産を取得します(79条)。82条1項は、代金の納付があったときに、買受人の権利の移転の登記と、売却により消滅した権利に係る登記の抹消を、裁判所書記官が嘱託しなければならないとします。当事者が共同で申請するのではなく、書記官が嘱託する。任意売却の決済とは、力の入り方が違います。

最後に、代金の行き先です。不動産の上に存する抵当権は売却により消滅し(59条1項)、執行裁判所は代金の納付があった場合に配当表に基づいて配当を実施します(84条1項)。売却代金で各債権者の債権と執行費用の全部を弁済できるときは、弁済金を交付し剰余金を債務者に交付します(同条2項)。

申立ての取下げ 買受けの申出前 同意の定めはない 買受けの申出後 同意が要る(76条) 同項ただし書に例外の定めがある
図8 取下げの条件が変わる線。出典:民事執行法76条1項。取下げができるかどうかは債権者の判断であり、この図はその判断を示すものではない。

手続が始まったあとでも、申立てが取り下げられれば競売は終わります。ただし76条1項は、買受けの申出があった後に取り下げるには、最高価買受申出人または買受人および次順位買受申出人の同意を得なければならないとしています(ただし書に例外があります)。入札が入った後は、取下げに他人の同意が要るようになります。時間の性質が、この線を境に変わるということです。ほかの手は任意売却以外の選択肢に並べています。

  • 担保権の登記があれば判決を要しない(181条1項1号)
  • 手続の実質は強制競売の規定の準用(188条)
  • 外の人が読む一枚は物件明細書(62条1項)
  • 買受けの申出を境に、取下げの条件が変わる(76条1項)
先に申し上げること 当社は、競売の手続を止められると申し上げることができません。停止や取消しは民事執行法183条などが定める場面の話であり、執行に関する手続の代理は弁護士の領域です7。開始決定が出たあとに任意売却を進められるかどうかも、債権者が申立てを取り下げるかどうかにかかっています。当社にできるのは、売却の条件を組んで債権者に示し、回答をそのままお伝えすることまでです。
小括 担保不動産競売は、担保権の登記がされた不動産についての申立てで開始します(民事執行法181条1項1号)。判決を要しない点が強制競売と異なり、争う場は182条によって後に置かれています。開始決定から配当までの実質は、188条が45条から92条までを準用することで動いており、除かれているのは81条だけです。配当要求の終期(49条)、物件明細書(62条)、無剰余の場合の取消し(63条)も準用の側にあります。本稿は条文の並びを示したにとどまり、各段階に要する期間や、個別の事案で何ができるかを示すものではありません。段階ごとの整理は今どこにいるかに、当社の限界は私たちの立場に置いています。

  1. 本稿は骨格を扱う。開始決定と差押えの効力、現況調査、評価と売却基準価額、期間入札と開札、引渡命令といった各段階は、本連載の以後の論考で個別に扱う。
  2. 担保不動産収益執行の手続は、188条により同法93条以下の強制管理の規定を準用して動く。賃貸されている不動産で選択されうる方法である。
  3. 民事執行法183条1項2号は、担保権の不存在・消滅を証する確定判決の謄本など、提出があれば手続を停止すべき文書を列挙する。同条2項は、そのうち一定のものについては既にした執行処分をも取り消さなければならないとする。停止と取消しとで要件が書き分けられている。
  4. 同じ趣旨の規定が二つ置かれ、担保不動産競売では民法388条が働く。要件をめぐる解釈は法律の判断であり、本稿は文言の差があることを示すにとどめる。
  5. 民事執行法185条および186条は、条文の位置に「削除」と記されている。e-Gov 法令検索の本文でも同様である。
  6. 87条1項4号が挙げるのは「差押えの登記前に登記がされた先取特権、質権又は抵当権で売却により消滅するもの」を有する債権者である。登記の前後が、配当を受けられるかどうかの線になっている。
  7. 弁護士法72条は、報酬を得る目的で法律事件に関して法律事務を取り扱うことを、弁護士でない者に禁じている。当社は宅地建物取引業者として売買の媒介と売却条件の調整を行い、法律の判断を要する事項は提携する弁護士・司法書士におつなぎしている。

参考文献

一次情報:https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004

裁判を経ていないのに、なぜ競売が始まるのですか。

民事執行法181条1項1号が、担保権の登記(仮登記を除く)がされた不動産についての不動産担保権の実行の申立てがあったときに開始すると定めているためです。強制執行が債務名義に基づいて行われる(同法22条・25条)のとは、入口の要件が異なります。住宅ローンの契約時に登記された抵当権が、そのまま実行の根拠になります。もっとも同法182条は、開始決定に対する執行抗告または執行異議において担保権の不存在または消滅を理由とすることができるとしており、争う場は後に置かれています。

開始決定が届いたら、すぐに家を出なければなりませんか。

条文はそのように定めていません。差押えの効力は開始決定が債務者に送達された時に生じますが(民事執行法46条1項)、同条2項は、差押えは債務者が通常の用法に従って不動産を使用し、または収益することを妨げないとしています。引渡しが問題になるのは、買受人が代金を納付して不動産を取得した後です(同法79条・83条)。ただし各段階に要する期間は事案により異なり、当社が見通しを申し上げる立場にはありません。

競売が始まってからでも、任意売却はできますか。

手続が始まったあとでも、債権者が申立てを取り下げれば競売は終わります。ただし民事執行法76条1項は、買受けの申出があった後に申立てを取り下げるには、最高価買受申出人または買受人および次順位買受申出人の同意を得なければならないと定めています(同項ただし書に例外があります)。入札が入った後は、取下げに他人の同意が要ることになります。取り下げるかどうかは債権者の判断であり、当社が決められることではありません。

売却代金は、どこから先に充てられますか。

執行裁判所は、代金の納付があった場合に配当表に基づいて配当を実施します(民事執行法84条1項)。債権者が一人であるとき、または売却代金で各債権者の債権および執行費用の全部を弁済できるときは、弁済金を交付し、剰余金を債務者に交付します(同条2項)。不動産の上に存する抵当権は売却により消滅します(同法59条1項)。もっとも売却代金が債権額に届かない場合、消えるのは抵当権であって債務ではありません。残る部分は債務として残ります。

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