返済ノート

抵当権の順位は何で決まるか|民法373条と、配当が届かないということ

要旨

抵当権の順位は、契約の日でも金額の大小でもなく、登記の前後で決まります(民法373条)。優先を主張できる利息と遅延損害金は最後の二年分まで(375条)。そして代金が上位で尽きれば、下位の抵当権者には配当が届きません。

キーワード担保物権/抵当権の順位

登記簿の乙区に、抵当権が二つ、三つと並んでいることがあります。順位番号1が住宅ローン。2が数年後に借りたリフォームの資金。3が事業のための借入れ。相談の場で登記事項証明書を拝見すると、この番号の意味を尋ねられることがあります。順番が付いているのは分かる。それで何が変わるのか、と。

不利なことから先に書きます。売却の代金が全員に行き渡らない場合、順位が下位の抵当権者には配当が届きません。これは運用の問題ではなく、優先弁済という仕組みがそう組まれているからです。本稿は、民法373条から376条までと不動産登記法4条を読み、順位が何によって決まり、優先の枠がどこで区切られているのかを確かめます。個別の事案で誰にいくら届くかを見通す記事ではありません1

あわせて、配当の場面で条文が何を書いていないかも追います。順位が下位であるために手続そのものが取り消される場合を、民事執行法は63条に置いています。順位の話は、届く金額の話であると同時に、手続が進むかどうかの話でもあります。

売却代金 一番抵当権者へ 二番抵当権者へ 届かない部分 先に充てられる 後になるほど届きにくい ※ 執行費用は別に控除される(民執法85条1項)
図1 順位に従った配分の形。出典:民法373条、民事執行法85条1項・87条1項。帯の長さは金額の割合を表すものではない。

1. 登記の前後が決めていること

決める基準 登記の前後(民法373条)。
優先の枠 通算して最後の二年分。
配当の場面 上位で尽きれば下位に残らない。

順位を決める基準は、条文に一行で書かれています。

民法373条(抵当権の順位)

同一の不動産について数個の抵当権が設定されたときは、その抵当権の順位は、登記の前後による。

不動産登記法4条1項も、同一の不動産について登記した権利の順位は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記の前後によるとしています。二つの法律が同じことを言っています。

ここで挙げられていないものに目を向けると、この規定の性格が見えます。契約を結んだ日ではありません。金額の大小でもありません。借りた事情の切迫の度合いでもありません。登記所の受付の前後という、外から確かめられる一点だけが基準になっています。誰が先に登記を備えたかで順位が決まり、その順位は登記簿を見た誰にでも読み取れます。

この割り切りには理由があります。抵当権は占有を移さない担保です。物を預かるわけではないので、外から見て担保の存在が分かる手がかりは登記しかありません。順位まで登記に結び付けておかなければ、後から融資しようとする者が、自分がどの位置に立つのかを判断できなくなります。順位は当事者どうしの序列であると同時に、これから関わろうとする第三者への告知でもあります。

その告知は、書面の上で具体的な形を取っています。不動産登記法59条は、権利に関する登記の登記事項として、登記の目的、申請の受付の年月日及び受付番号、登記原因およびその日付などを挙げています。受付の年月日と番号が記録されているからこそ、前後が読み取れるということです2

1 乙区に何番まで並んでいるか 2 受付の年月日と受付番号 3 債権額と利息に関する定め 4 損害賠償額の定めがあるか
図2 書面で確かめる項目。出典:不動産登記法59条・83条1項・88条1項。並びは確認の順序であって重要度ではない。

順位は動かせないわけではありません。民法374条1項は、抵当権の順位は各抵当権者の合意によって変更することができるとし、利害関係を有する者があるときはその承諾を得なければならないと定めます。同条2項は、この順位の変更は登記をしなければ効力を生じないとしています。合意だけでは足りず、登記まで済んで初めて効力が生じる。ここでも登記が効力の側に置かれています3

順位を動かす方法は、もう一つ隣に置かれています。

民法376条(抵当権の処分)

抵当権者は、その抵当権を他の債権の担保とし、又は同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその抵当権若しくはその順位を譲渡し、若しくは放棄することができる。

2 前項の場合において、抵当権者が数人のためにその抵当権の処分をしたときは、その処分の利益を受ける者の権利の順位は、抵当権の登記にした付記の前後による。

374条の順位の変更が、順位そのものを入れ替えるものであるのに対し、376条は、抵当権者が自分の優先を他の債権者のために使わせる形を並べています。そして2項は、複数の処分がされたときの順位を「付記の前後による」としました。不動産登記法4条2項も、付記登記の順位は主登記の順位により、同一の主登記に係る付記登記の順位はその前後によると定めています。本体の順位も、その上に重ねた処分の順位も、どちらも登記の前後で決まるということです。

一番抵当権者 登記が先 二番抵当権者 登記が後 主たる債務者 通知か承諾が要る 順位の譲渡・放棄 377条1項 付記の前後
図3 抵当権の処分をめぐる三つの立場。出典:民法376条1項・2項・377条1項。処分が行われることを示す図ではない。

377条1項は、この処分について、467条の規定に従い主たる債務者に通知するか、主たる債務者が承諾しなければ、主たる債務者・保証人・抵当権設定者およびこれらの者の承継人に対抗できないとしています。登記の外側に、通知という別の要件が置かれている場面です。誰に対して主張できるかは、登記だけで決まっているのではありません。

順位を決めるもの 民法373条 登記の前後 順位変更の登記 民法374条2項 決めていないもの 条文にない基準 契約を結んだ日 債権額の大小 事情の切迫の度合い
図4 順位の基準の所在。出典:民法373条・374条、不動産登記法4条1項。右側は条文が基準として挙げていない事柄である。

2. 民法375条が区切る「最後の二年分」

順位が先だからといって、その抵当権者が請求する金額のすべてに優先が付くわけではありません。民法は、優先の枠に上限を置いています。

民法375条(抵当権の被担保債権の範囲)

抵当権者は、利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、その満期となった最後の二年分についてのみ、その抵当権を行使することができる。ただし、それ以前の定期金についても、満期後に特別の登記をしたときは、その登記の時からその抵当権を行使することを妨げない。

2 前項の規定は、抵当権者が債務の不履行によって生じた損害の賠償を請求する権利を有する場合におけるその最後の二年分についても適用する。ただし、利息その他の定期金と通算して二年分を超えることができない。

1項は利息その他の定期金について、抵当権を行使できる範囲を最後の二年分に限りました。2項は、遅延損害金についても同じ扱いをしたうえで、利息と通算して二年分を超えないと重ねています。滞納が長引けば遅延損害金は積み上がりますが、抵当権として優先を主張できる部分は、この枠の中に収まります。

この規定が守っているのは、後から関わる者の予測です。登記簿には債権額と利息の定めが記録されます。もし過去の利息のすべてに優先が付くなら、二番抵当権を取ろうとする者は、先順位がいくらまで膨らむのかを見積もれません。二年分という枠は、登記から読み取れる範囲に優先を抑える働きをしています。

1項のただし書も見ておきます。それ以前の定期金についても、満期後に特別の登記をしたときは、その登記の時から抵当権を行使することを妨げない、と書かれています。枠を広げる道が残されており、その道もまた登記です。そして効力が生じるのは登記の時からであって、さかのぼるとは書かれていません4

利息と遅延損害金 最後の二年分 民法375条1項本文 それ以前の分 特別の登記があれば 通算して二年分を超えない(同条2項)
図5 375条が置いた枠。出典:民法375条1項・2項。枠の外の債権が消えることを示す図ではない。

誤解を避けるために書き添えます。枠の外に出た利息や遅延損害金が消えるわけではありません。375条が定めているのは、抵当権という優先の権利を行使できる範囲であって、債権そのものの存否ではありません。優先が付かない部分は、担保のない債権として残ります。ここは読者にとって不利な点なので、先に置いておきます。

その枠が登記簿からどこまで読めるかも、条文が決めています。不動産登記法83条1項1号は債権額を、88条1項1号は利息に関する定めを、同項2号は民法375条2項に規定する損害の賠償額の定めを、それぞれ登記事項としています。先順位がどこまで膨らみうるかを見積もる材料は、登記簿に置かれているということです。ただし、今日の残元本がいくらかは登記事項ではありません。読めるものと読めないものが、条文の側で分けられています。

登記簿から読める 不登法59条・83条・88条 受付の年月日と番号 債権額・利息の定め 損害賠償額の定め 読めないもの 登記事項ではない 今日の残元本の額 積み上がった遅延損害金 代位弁済があったか
図6 書面から読めるものと読めないもの。出典:不動産登記法59条・83条1項・88条1項。実際の記録内容は事案により異なる。
  • 順位は登記の前後で決まる(民法373条)
  • 優先の枠は通算して二年分(375条)
  • 枠の外の債権は、担保なしで残る

3. 配当という場面で、順位が数字になる

順位が実際の金額に翻訳されるのは、配当の場面です。担保不動産競売では、不動産の上に存する先取特権、使用および収益をしない旨の定めのある質権ならびに抵当権は、売却により消滅すると定められています(民事執行法59条1項)。順位の上下にかかわらず、抵当権はいったん全部が消えます。

消えた抵当権は、代金の上に移ります。配当等を受けるべき債権者の範囲を定める87条1項は、その4号で、差押えの登記前に登記がされた先取特権、質権または抵当権で売却により消滅するものを有する債権者を挙げています。そして85条1項は、執行裁判所が配当期日において各債権者の債権の額、執行費用の額、配当の順位および額を定めるとし、同条2項は、順位および額を定める場合には民法、商法その他の法律の定めるところによらなければならないとしています。登記簿に並んでいた番号が、ここで配当表の数字になります。

売却 民執法188条 抵当権の消滅 民執法59条1項 配当表の作成 民執法85条1項 配当 民執法87条1項
図7 順位が金額になるまでの順序。出典:民事執行法59条1項・85条1項・87条1項・188条。各段階の間隔は期間の長短を表すものではない。

ここで、冒頭に書いた不利な点が形を取ります。代金から執行費用を控除した残りを、順位に従って上から充てていきます。上位で使い切られれば、下位には何も残りません。これは配当の失敗ではなく、優先弁済という制度が予定している結果です。競売の手続の全体は任意売却と競売は何が違うかにまとめています。

条文は、足りる場合と足りない場合を書き分けてもいます。民事執行法84条2項は、債権者が一人である場合、または債権者が二人以上であっても売却代金で各債権者の債権および執行費用の全部を弁済することができる場合には、執行裁判所が売却代金の交付計算書を作成して債権者に弁済金を交付し、剰余金を債務者に交付するとしています。配当という手続が動くのは、足りない場合だということです。また88条は、確定期限の到来していない債権について、配当等の関係では弁済期が到来したものとみなすとしています5

足りない度合いが大きいときは、手続そのものが止まります。

民事執行法63条(剰余を生ずる見込みのない場合等の措置)

執行裁判所は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、その旨を差押債権者…に通知しなければならない。

一 差押債権者の債権に優先する債権(以下この条において「優先債権」という。)がない場合において、不動産の買受可能価額が執行費用のうち共益費用であるもの(以下「手続費用」という。)の見込額を超えないとき。
二 優先債権がある場合において、不動産の買受可能価額が手続費用及び優先債権の見込額の合計額に満たないとき。

2項は、通知を受けた差押債権者が一週間以内に一定の申出と保証の提供をしないときは、執行裁判所は手続を取り消さなければならないとしています。後順位の抵当権者が競売を申し立てても、代金が先順位と手続費用で尽きる見込みであれば、手続は取り消されうるということです。順位は、届く金額だけでなく、手続を動かせるかどうかにも効いています6

買受可能価額 見込額を超える 手続は進む 満たない 申出がなければ取消し 民事執行法63条1項・2項
図8 剰余の見込みによる分かれ道。出典:民事執行法63条1項・2項・60条3項。個別の事案の結果を示す図ではない。

任意売却の場合も、順位の意味は消えません。売買によって所有権を移す以上、抵当権の登記は抹消しなければならず、抹消には各抵当権者の同意が要ります。配当が回らない見込みの後順位抵当権者にも、同意を求める必要があります。そこで、代金の配分をどう組み立てるかという話が出てきます。同意が得られるかどうかは、それぞれの債権者の判断です。当社が結果をお約束することはしていません。任意売却という手続の輪郭は任意売却とはに書きました。

後順位抵当権者にとって、配当が回るかどうかと、抹消に同意するかどうかは、別の問いです。回らないから同意しない、とは限りません。回る見込みでも条件が折り合わないこともあります。この二つを混ぜて考えると、話が進まなくなります。ご自身が今どの段階にいるかは住宅ローンの滞納は今どの段階かで確かめられます。

  • 順位変更も処分も、登記で効力が決まる
  • 上位で使い切れば下位には残らない
  • 剰余の見込みがなければ手続が取り消されうる
  • 抹消の同意は、各債権者の判断による
先に申し上げること どの債権者にいくら配当されるか、後順位の抵当権者が抹消に同意するかどうかを、当社が見通して申し上げることはしていません。配当額は執行裁判所が定めるものであり、同意は各債権者の判断だからです。順位や被担保債権の範囲についての法律の判断も、弁護士・司法書士の領域です。当社にできるのは、登記事項証明書に並んだ順位を一緒に読み、売却の条件として配分案を組み立て、債権者に提示することまでです7。当社の立場は私たちの立場に書いています。
小括 抵当権の順位は登記の前後によって決まり(民法373条、不動産登記法4条1項)、変更するには合意と利害関係人の承諾に加えて登記が要ります(民法374条)。376条の抵当権の処分では、その順位も付記の前後によります。優先を主張できる利息と遅延損害金は、通算して最後の二年分に限られます(同法375条)。配当では、代金から執行費用を控除した残りが順位に従って充てられ、上位で尽きれば下位には届かず、剰余の見込みがなければ手続そのものが取り消されうる(民事執行法63条)という組み立てになっています。本稿は制度の組み立てを追ったにとどまり、個別の事案での金額や見通しを示すものではありません。

  1. 本稿は同一の不動産に複数の抵当権が設定されている場合を扱う。複数の不動産に共同抵当が設定されている場合の負担の割付け(民法392条・393条)や、根抵当権の極度額の扱いには別の検討が要るため、本稿では触れない。
  2. 不動産登記法59条は権利に関する登記に共通の登記事項を定める。抵当権については、これに加えて83条1項(債権額・債務者など)と88条1項(利息の定めなど)が重ねて適用される。
  3. 民法374条2項が順位の変更について登記を効力の要件としているのは、177条の対抗要件とは異なる建て付けである。対抗要件であれば当事者間では効力が生じるが、効力要件であれば登記まで済まなければ変更そのものが生じない。
  4. 民法375条1項ただし書がいう「特別の登記」の手続については、同項の文言からは内容が読み取れない。何をもってこれに当たるかは登記の実務と法律の判断に属し、本稿は枠を広げる道が条文に置かれていることを示すにとどめる。
  5. 民事執行法88条が期限の到来していない債権を弁済期の到来したものとみなすのは、配当等の場面に限られる。債権そのものの弁済期を動かす規定ではない。
  6. 民事執行法63条の買受可能価額は、売却基準価額からその十分の二に相当する額を控除した価額である(同法60条3項)。担保不動産競売については188条がこれらの規定を準用している。
  7. 弁護士法72条は、報酬を得る目的で法律事件に関して法律事務を取り扱うことを、弁護士でない者に禁じている。当社は宅地建物取引業者として売買の媒介と売却条件の調整を行い、法律の判断を要する事項は提携する弁護士・司法書士におつなぎしている。

参考文献

一次情報:https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089

抵当権の順位は何で決まりますか。

民法373条は、同一の不動産について数個の抵当権が設定されたときは、その抵当権の順位は登記の前後によると定めています。不動産登記法4条1項も、同一の不動産について登記した権利の順位は、法令に別段の定めがある場合を除き登記の前後によるとしています。契約を結んだ日や債権額の大小は、条文が基準として挙げていません。登記所の受付の前後という、外から確かめられる一点が基準になっています。

後順位の抵当権者に配当が届かないことはありますか。

あります。担保不動産競売では、売却代金から執行費用を控除した残りについて、執行裁判所が配当の順位および額を定め、その際は民法その他の法律の定めるところによらなければならないとされています(民事執行法85条1項・2項)。順位に従って上から充てていく仕組みですので、上位で尽きれば下位には残りません。これは配当の失敗ではなく、優先弁済という制度が予定している結果です。個別の金額は当社が見通せる事柄ではありません。

遅延損害金にも抵当権の優先が付きますか。

民法375条1項は、利息その他の定期金について、満期となった最後の二年分についてのみ抵当権を行使できるとしています。2項は、債務の不履行によって生じた損害の賠償についても同じ扱いをしたうえで、利息その他の定期金と通算して二年分を超えることができないと定めます。ただし枠の外に出た部分の債権が消えるわけではありません。優先が付かない部分は、担保のない債権として残ります。

順位を後から入れ替えることはできますか。

民法374条1項は、抵当権の順位は各抵当権者の合意によって変更することができるとし、利害関係を有する者があるときはその承諾を得なければならないとしています。同条2項は、この順位の変更は登記をしなければ効力を生じないと定めます。合意だけでは足りず、登記まで済んで初めて効力が生じる建て付けです。実際に変更できるかどうかは各抵当権者の判断になりますので、当社が結論を申し上げることはしていません。

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