再生計画は、債権者の多数決だけで決まりますか。
多数決だけでは決まりません。民事再生法174条1項は、再生計画案が可決された場合には次項の場合を除き裁判所が認可の決定をするとし、同条2項は四つの不認可の事由を挙げています。手続または計画の法律違反、遂行される見込みがないとき、決議が不正の方法によって成立したとき、決議が再生債権者の一般の利益に反するときです。可決の後に裁判所の判断が置かれた構造になっています。
要旨
再生計画は、案の作成(民事再生法154条・156条)、決議に付する決定(169条1項)、可決(172条の3)、認可(174条)という段を経て決まります。可決には頭数の過半数と議決権の額の二分の一以上の双方が要ります。
キーワード倒産と再建/再生計画
「再生計画」という言葉は、民事再生の話のなかでよく出てきます。ところが、それが誰の手で、どういう順序で決まるものなのかは、あまり語られません。裁判所が決めるのか、債権者が決めるのか、それとも申し立てた本人が書いた案がそのまま通るのか。相談の場でも、この点は曖昧なまま残りがちです。
民事再生法は、この問いに条文で答えています。計画に何を書くかは154条以下が定め、案を決議に付するかどうかは169条1項が定め、可決の要件は172条の3が定め、認可するかどうかは174条が定めます。案の作成・決議・認可という三つの段が、別々の条文で組み立てられているのが特徴です。本稿は、その段の並びを条文から追います。個別の事案で計画が認可されるかどうかを述べるものではありません1。
最初の段は、案の中身です。民事再生法154条1項は、再生計画において定めなければならない事項を三つ挙げます。
再生計画においては、次に掲げる事項に関する条項を定めなければならない。
一 全部又は一部の再生債権者の権利の変更
二 共益債権及び一般優先債権の弁済
三 知れている開始後債権があるときは、その内容
一号の「権利の変更」が中心です。何をどう変更するのかについては、156条が、債務の減免、期限の猶予その他の権利の変更の一般的基準を定めなければならないとしています。減免と期限の猶予が、条文の言葉として並んでいます。
その内容には枠がはめられています。155条1項は、権利の変更の内容は再生債権者の間では平等でなければならないと定めます。また同条3項は、債務が負担され、または期限が猶予されるときは、特別の事情がある場合を除き、認可の決定の確定から十年を超えない範囲でその期限を定めるものとしています。十年という数字は、条文に書かれた上限です2。
もっとも、155条1項が使う「平等」という語に、条文は定義を置いていません。置かれているのは、平等でなくてよい場合のほうです。同項ただし書は、不利益を受ける再生債権者の同意がある場合、少額の再生債権について別段の定めをする場合、84条2項に掲げる請求権について別段の定めをする場合を挙げ、これらの者の間に差を設けても衡平を害しないときはこの限りでないとします。平等の中身ではなく、平等の例外のほうが列挙されている書き方です。
84条2項が何を指しているかは、条文をたどれば分かります。再生手続開始後の利息の請求権、開始後の不履行による損害賠償および違約金の請求権、そして再生手続参加の費用の請求権です。返済が滞ってから積み上がっていく部分が、ここで別の枠に入れられています3。
できないことも書かれています。155条4項は、再生手続開始前の罰金等について、再生計画において減免その他権利に影響を及ぼす定めをすることができないとしています。計画で触れてよい範囲に、条文の側から線が引かれている形です。
書面の側から見ると、案に書くべきことはさらに細かく決まっています。157条1項は、権利を変更する条項において、変更されるべき権利を明示し、かつ156条の一般的基準に従って変更した後の権利の内容を定めなければならないとします。同条2項は、計画によって権利に影響を受けないものがあるときは、その権利を明示しなければならないとしています。影響を受けないものまで書かせるのが、この条文の設計です。
そして、計画の効力が及ばない範囲も条文にあります。177条2項は、再生計画は、別除権者が有する担保権、再生債権者が保証人その他共に債務を負担する者に対して有する権利、および再生債務者以外の者が提供した担保に影響を及ぼさないと定めます。自宅に設定された抵当権は、原則として計画の外側に残ります。別除権は再生手続によらないで行使することができるからです(53条2項)。
案が出ても、そのまま投票になるわけではありません。169条1項は、再生計画案の提出があったときは、四つの場合を除いて、裁判所が当該再生計画案を決議に付する旨の決定をすると定めます。除かれるのは、一般調査期間が終了していないとき、財産状況の報告がないとき、裁判所が案について174条2項各号(三号を除く)の要件のいずれかに該当すると認めるとき、そして再生手続を廃止するときです。
三号に注目してください。不認可の事由にあたると裁判所が認める案は、投票の前で止まります。認可の段で見る要件の一部が、決議の入口でも見られている構造になっています。
一号と二号は、別の性質の条件です。一般調査期間が終了していること、そして財産状況報告集会における報告または125条1項の報告書の提出があること。投票にたどり着くまでに、調査と報告という別の作業が置かれていることが、この並びから読めます。
投票に至った場合の可決の要件が、172条の3です。
再生計画案を可決するには、次に掲げる同意のいずれもがなければならない。
一 議決権者(債権者集会に出席し、又は第百六十九条第二項第二号に規定する書面等投票をしたものに限る。)の過半数の同意
二 議決権者の議決権の総額の二分の一以上の議決権を有する者の同意
「いずれもが」と書かれています。頭数の過半数と、議決権の額の二分の一以上。二つの条件が重ねられていて、どちらか一方では足りません。頭数だけを数えるのでも、金額だけを数えるのでもない設計です。少額の債権者が多数を占める場合と、大口の債権者が一人いる場合とで、それぞれ別の条件が効くことになります。
議決権の行使の方法は、169条2項が三つ挙げます。債権者集会の期日で行使する方法、裁判所の定める期間内に書面等投票による方法、そして議決権者がそのどちらかを選ぶ方法です。裁判所は決議に付する決定のなかで、このいずれかを定めなければなりません。同条3項は、裁判所が期限を公告し、かつ115条1項本文に規定する者に対して、その期限と再生計画案の内容またはその要旨を通知しなければならないとします。債権者の手元には、案そのものかその要旨が書面として届くという設計です4。
誰が投票するのかも、条文が絞っています。87条2項は、84条2項に掲げる請求権、再生手続開始前の罰金等、共助対象外国租税の請求権について議決権を有しないとします。先ほどの84条2項が、ここでもう一度出てきます。同じ請求権が、変更の場面と投票の場面の両方で別枠に置かれているということです。
もう一つ、201条1項は、住宅資金特別条項を定めた再生計画案の決議において、その条項によって権利の変更を受けることとされている者および保証会社は、住宅資金貸付債権またはその保証に基づく求償権については議決権を有しないと定めます。権利を変更される側が、その変更に投票しない場面があるということです。代わりに同条2項は、裁判所がその者の意見を聴かなければならないとしています。
可決に至らなかった場合の定めもあります。172条の5第1項は、債権者集会の期日で議決権を行使する方法が定められ、かつ可決に至らなかった場合において、一定の同意があるときは、裁判所が続行期日を定めて言い渡さなければならないとします。ただし、続行期日で可決される見込みがないことが明らかな場合は、この限りでないとされています。同条2項は、可決が最初の期日から二月以内にされなければならないとし、3項は、伸長できる期間が一月を超えることができないとしています。条文は、やり直しの機会と、その締切の両方を書いています。
可決されても、まだ終わりません。174条1項は、再生計画案が可決された場合には、次項の場合を除き、裁判所は再生計画認可の決定をすると定めます。その「次項」が不認可の事由です。
2 裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合には、再生計画不認可の決定をする。
一 再生手続又は再生計画が法律の規定に違反し、かつ、その不備を補正することができないものであるとき。ただし、再生手続が法律の規定に違反する場合において、当該違反の程度が軽微であるときは、この限りでない。
二 再生計画が遂行される見込みがないとき。
三 再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき。
四 再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反するとき。
二号の「遂行される見込みがないとき」という言い方に、この制度の性格が出ています。債権者が賛成しても、計画が実行できる見込みを欠くと裁判所が認めれば、認可されません。多数決だけで完結しない仕組みになっています。四号の「一般の利益に反するとき」も同じ向きの規定で、賛成しなかった債権者の側から結論を見直す通路になります。
認可の決定が確定すると、再生計画の定めや法律の規定によって認められた権利を除き、再生債務者はすべての再生債権について責任を免れます(178条1項)。ただし、ここでも177条2項が効いています。保証人に対する債権者の権利は、認可によっても変わりません。家族が保証人になっている場合、この点は生活の側で大きく響きます。用語の整理は用語集に置きました。
そして、自宅の抵当権も残ります。別除権者は、別除権の行使によって弁済を受けることができない債権の部分についてのみ、再生債権者として権利を行うことができます(88条本文)。つまり担保割れの部分だけが計画の対象に入る形です。ご自身の段階の確かめ方は今どこにいるかにあります。
ここまでは、177条2項によって抵当権が計画の外側に残る形を見てきました。ところが条文は、住宅についてもう一つの型を置いています。196条以下の住宅資金特別条項です。同条3号は住宅資金貸付債権を、住宅の建設もしくは購入または改良に必要な資金の貸付けに係る分割払の定めのある再生債権であって、その債権または保証会社の求償権を担保するための抵当権が住宅に設定されているものと定義します。
同条1号の「住宅」にも条件が書かれています。個人である再生債務者が所有し、自己の居住の用に供する建物であって、床面積の二分の一以上に相当する部分が専ら自己の居住の用に供されるもの。建物が二以上あるときは、主として居住の用に供する一の建物に限られます。面積と用途が、定義の側に書き込まれているわけです。
この条項があるとき、177条2項の適用が外れます。203条1項は、住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可の決定が確定したときは、住宅および敷地に設定された196条3号の抵当権について177条2項を適用しないとしています。先ほど「計画の外側に残る」と書いた抵当権が、この場面では計画の内側に入るという関係です5。
できないことも、同じ章に書かれています。198条1項ただし書は、住宅の上に53条1項の担保権(196条3号の抵当権を除く)が存するとき、または住宅以外の不動産にも同号の抵当権が設定されている場合において当該不動産の上にこれに後れる担保権が存するときは、この限りでないとします。200条1項は、住宅資金特別条項を定めた再生計画案を再生債務者のみが提出することができるとしています。提出できる人が、ここでは一人に絞られています。
認可の要件も別に置かれています。202条2項は、不認可の事由として、174条2項1号または4号の事由があるとき、再生計画が遂行可能であると認めることができないとき、再生債務者が住宅の所有権または敷地を住宅の所有のために使用する権利を失うこととなると見込まれるとき、決議が不正の方法によって成立するに至ったときを挙げます。同条5項により、この場合には174条1項および2項が適用されません。家をどうするかという問いは、条文の上でも別立てで扱われているということです。その並びは任意売却以外の選択肢に整理しました。
注
参考文献
この記事のよくある質問
多数決だけでは決まりません。民事再生法174条1項は、再生計画案が可決された場合には次項の場合を除き裁判所が認可の決定をするとし、同条2項は四つの不認可の事由を挙げています。手続または計画の法律違反、遂行される見込みがないとき、決議が不正の方法によって成立したとき、決議が再生債権者の一般の利益に反するときです。可決の後に裁判所の判断が置かれた構造になっています。
民事再生法172条の3第1項は、再生計画案を可決するには二つの同意のいずれもがなければならないと定めます。一つは議決権者の過半数の同意で、ここでいう議決権者は債権者集会に出席した者または書面等投票をした者に限られます。もう一つは、議決権者の議決権の総額の二分の一以上の議決権を有する者の同意です。頭数と金額の双方が条件になっており、どちらか一方だけでは足りません。
民事再生法177条2項は、再生計画は、別除権者が有する53条1項に規定する担保権、再生債権者が保証人その他共に債務を負担する者に対して有する権利、および再生債務者以外の者が提供した担保に影響を及ぼさないと定めています。別除権は再生手続によらないで行使することができます(53条2項)。自宅の抵当権は計画の外側に残る位置づけです。
民事再生法155条3項は、再生計画によって債務が負担され、または債務の期限が猶予されるときは、特別の事情がある場合を除き、再生計画認可の決定の確定から十年を超えない範囲でその債務の期限を定めるものとすると定めています。十年は条文が示す上限の枠であり、実際に定められる期限がこれに近づくことを意味するものではありません。個別の内容は弁護士・司法書士にご確認ください。
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