保証料を払ってきたのに、なぜ保証会社から請求が来るのですか。
保証料は、保証会社が金融機関に対して保証債務を負うことへの対価です。債務者の債務そのものを消しておく前払金ではありません。保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときにその履行をする責任を負い(民法446条1項)、履行した保証人は主たる債務者に対して求償権を取得します(同法459条1項)。したがって、保証料を納めてきたことと、代位弁済の後に請求を受けることは、法律の仕組みの上では両立します。
要旨
求償権は、保証会社が代位弁済によって新しく取得する固有の権利です。額は、支出した財産の額と消滅した主たる債務の額の低いほうが天井になり、これに法定利息と避けられなかった費用が加わります。担保の付いた原債権も代位で移りますが、その行使は求償できる範囲に限られます。
キーワード債権総論/求償権/代位弁済
代位弁済の通知が届いたあと、次に来る書面の差出人は、それまで返済してきた金融機関ではありません。保証会社、あるいは債権の管理回収を担う会社の名が並び、表題には「求償金請求書」と書かれています。金額は、直前まで見ていた残高とほぼ同じか、少し増えています。相談の場でこの書面を拝見していると、「保証料を払ってきたのに、なぜ自分に請求が来るのか」と尋ねられることがあります。
本稿は、この請求の根拠になっている求償権が民法上どう組み立てられているかを、条文にさかのぼって確かめます。先に書けば、代位弁済のあとに保証会社が手にする権利は一つではありません。求償権と、債権者から引き継いだ原債権と、二つが並んで立っています1。
順に三つを見ます。誰と誰の間の契約がいくつ走っていて、そのうちどれが代位弁済で終わるのか。民法459条とその周辺が、求償の額と行使の時期をどこまで決めているのか。そして、並んで移ってくる原債権が、住まいの売却の場面でどう働くのか。
住宅ローンの多くには、保証会社が付いています。借りるときに、債務者は保証会社との間で保証委託契約を結び、保証会社は金融機関との間で保証契約を結びます。保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときにその履行をする責任を負う——民法446条1項はそう定めています。保証会社は、この責任を業として引き受けている会社です。
数えておきたいのは、借りるときに結ばれる契約が一つではないことです。債務者と金融機関の間に金銭消費貸借契約、保証会社と金融機関の間に保証契約、債務者と保証会社の間に保証委託契約。三つは当事者の組み合わせが違うので、別々の書面になります。代位弁済で役目を終えるのは、このうち前の二つです。三つ目に基づく関係だけが残る。差出人が変わるとは、背後にあった三つ目が前面に出ることです。
保証料の位置づけも確かめておきます。保証料は、保証会社が金融機関に対して保証債務を負うことへの対価です。債務者の債務そのものを消しておく前払金ではありません。したがって、保証料を納めてきたことと、代位弁済のあとに請求を受けることとは、法律上は両立します。書面を受け取った方が最初につまずくところなので、先に書いておきます。
滞納が続き、期限の利益が失われて残額の全部が請求できる状態になると、金融機関は保証会社に保証債務の履行を求めます。保証会社が支払えば、金融機関の債権は満足を受けて消えます。債務者から見ると、返済してきた相手との関係はここで終わります。しかし債務が消えたわけではありません。相手が入れ替わっただけです2。
この経過には日付が三つあります。保証委託契約を結んだ日、保証会社が金融機関に払った日、請求書が手元に届いた日です。権利が生まれるのは二つ目です。民法442条2項は、求償に含まれる法定利息の起算を「弁済その他免責があった日以後」と書いています。書面が届いた日ではありません。請求書を開いた時点で、利息はすでに何日分か積まれていることになります。
請求書に並ぶ項目も、条文と対応させて読むことができます。代位弁済の日と代位弁済額は459条1項の「支出した財産の額」に、その後の利息は442条2項の法定利息に、手続に要した実費は同項の「避けることができなかった費用」に、それぞれ当たる位置にあります。ただし、どの欄がどれに当たるかを条文が指定しているわけではありません。書面の様式は債権者ごとに違いますから、同じ内訳が別の名前で並ぶこともあります。
もう一点、保証会社が委託を受けた保証人であることも確かめる値打ちがあります。民法は、委託を受けた保証人(459条)と、委託を受けないで保証をした者(462条1項)と、主たる債務者の意思に反して保証をした者(同条2項)を書き分け、求償の幅を変えているからです。住宅ローンの保証会社は、借入れのときに委託を受けています。三つのうち最初の型に当たります3。
委託を受けた保証人の求償権は、次のように書かれています。
保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務者に代わって弁済その他自己の財産をもって債務を消滅させる行為(以下「債務の消滅行為」という。)をしたときは、その保証人は、主たる債務者に対し、そのために支出した財産の額(その財産の額がその債務の消滅行為によって消滅した主たる債務の額を超える場合にあっては、その消滅した額)の求償権を有する。
2 第四百四十二条第二項の規定は、前項の場合について準用する。
読みどころは括弧の中です。求償できるのは「支出した財産の額」ですが、それが消滅した主たる債務の額を超える場合には、消滅した額が限度になります。支出額と消滅額の低いほうが天井です。保証人が余分に払っても、余分の部分は本人に回せません。
2項が準用する442条2項は、求償の中身を広げます。同項は、求償が「弁済その他免責があった日以後の法定利息及び避けることができなかった費用その他の損害の賠償を包含する」と定めています。法定利率は404条2項で年3パーセントとされ、同条3項以下により3年を一期として変動します4。請求書の額が代位弁済の額より大きいことがあるのは、この部分が乗るためです。
ここで、条文が使う語そのものを見ておきます。459条1項は「支出した財産の額」と書きますが、何をもって支出とするかを定義していません。442条2項の「避けることができなかった費用」も同じで、どこまでが避けられなかったのかを条文は決めていません。民法はここに答えを置いていないということです。額の当否が争いになる余地が残るのは、この書き方に由来します。
保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務の弁済期前に債務の消滅行為をしたときは、その保証人は、主たる債務者に対し、主たる債務者がその当時利益を受けた限度において求償権を有する。(後略)
3 第一項の求償権は、主たる債務の弁済期以後でなければ、これを行使することができない。
弁済期の前に払った場合、基準は「支出した財産の額」ではなく「その当時利益を受けた限度」に置き換わります。加えて3項により、その求償権は主たる債務の弁済期以後でなければ行使できません。権利は発生しているが、まだ使えないという状態が条文の上にあるということです。住宅ローンでは、期限の利益が失われて残額の全部が弁済期にある状態になってから代位弁済がされますから、この規定が正面から働く場面ではありません。それでも459条と隣り合わせに置かれていること自体が、民法が時期で扱いを分けている証拠です。
委託の有無でも変わります。委託を受けないで保証をした者が債務の消滅行為をした場合には459条の2第1項が準用され(462条1項)、主たる債務者の意思に反して保証をした者は、主たる債務者が現に利益を受けている限度でのみ求償権を有します(同条2項)。時期と委託の二つで、幅が段階的に狭くなる形です。
弁済の前に求償できる場合もあります。民法460条は、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けて債権者がその破産財団の配当に加入しないとき、債務が弁済期にあるとき、保証人が過失なく弁済をすべき旨の裁判の言渡しを受けたときに、あらかじめ求償権を行使できると定めます。もっとも主たる債務者の側にも手当てがあり、債権者が全部の弁済を受けない間は、保証人に担保を供させ、または自己に免責を得させることを請求できます(461条1項)。
保証人が複数いる場合の内部関係も条文にあります。数人の保証人があり、主たる債務が不可分であるため、または各保証人が全額を弁済すべき旨の特約があるために、そのうちの一人が全額または自己の負担部分を超える額を弁済したときは、連帯債務者間の求償の規定が準用されます(465条1項)。互いに連帯しない保証人については462条が準用されます(同条2項)。親族が保証人に並んでいる契約では、この規定が効いてきます。
通知の規定もあります。委託を受けた保証人が主たる債務者にあらかじめ通知しないで債務の消滅行為をしたときは、主たる債務者は債権者に対抗できた事由をもって保証人に対抗できます(463条1項)。反対に、主たる債務者が弁済したことを保証人に通知せず、そのために保証人が善意で弁済したときは、保証人は自分の弁済を有効であったものとみなすことができます(同条2項)。求償の額は、条文だけで一意に決まるものではありません5。
ここまでが求償権です。代位弁済では、もう一つの権利が動きます。債務者のために弁済をした者は債権者に代位し(499条)、代位した者は「債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利」を行使できます(501条1項)。金融機関が持っていた債権と、それに付いていた抵当権が、保証会社の手に移るということです。
二つ並ぶと聞くと、二重に払わされるのかと心配になります。そうはならない仕組みが501条2項に置かれています。
2 前項の規定による権利の行使は、債権者に代位した者が自己の権利に基づいて債務者に対して求償をすることができる範囲内に限り、することができる。
3 第一項の場合には、前項の規定によるほか、次に掲げるところによる。
一 第三取得者は、保証人及び物上保証人に対して債権者に代位しない。
四 保証人と物上保証人との間においては、その数に応じて、債権者に代位する。
2項は天井の話です。代位した原債権を振りかざせるのは、求償権の額までにとどまります。求償権が上限として働き、原債権は担保を伴った回収の手段として働く。そういう役割分担です。
3項は、代位する者が何人もいる場合の順番を人の類型ごとに決めています。第三取得者、すなわち債務者から担保の目的となっている財産を譲り受けた者は、保証人および物上保証人に対して債権者に代位しません(1号)。保証人と物上保証人の間では、その数に応じて代位します(4号本文)。物上保証人が数人あるときは、保証人の負担部分を除いた残額について各財産の価格に応じます(同号ただし書)。同じ「代位」という語が、誰であるかによって違う配分で働くということです。
全額ではなく一部だけが弁済された場合の規定も置かれています。代位者は債権者の同意を得て、弁済した価額に応じて債権者とともに権利を行使できます(502条1項)。債権者のほうは単独でも行使でき(同条2項)、担保財産の売却代金については債権者の権利が代位者の権利に優先します(同条3項)。売却代金の配分という場面に置き換えれば、一部弁済をした者は、残っている債権者の後ろに並ぶということになります。
債権者の側にも制約があります。弁済をするについて正当な利益を有する者がある場合において、債権者が故意または過失によってその担保を喪失させ、または減少させたときは、その者は、代位をするにあたって償還を受けることができなくなる限度で責任を免れます(504条1項)。ただし、担保を失わせたことに取引上の社会通念に照らして合理的な理由があると認められるときは、この規定は適用されません(同条2項)。任意売却では抵当権を抹消してもらう手続を踏みますから、条文の上ではこの規定が視野に入る場面です。もっとも、合理的な理由があるかどうかの評価は法律の判断であり、当社が述べる事柄ではありません。
この構造は、住まいの話に直結します。抵当権が保証会社に移ると、担保不動産競売を申し立てる立場も保証会社に移ります。登記の上では、抵当権の移転は付記登記としてされ、その順位は主登記の順位によります(不動産登記法4条2項)。設定の日にさかのぼった順位のまま、権利者の名前だけが変わるということです。任意売却を検討する場合、価格や配分について同意を得る相手も、この保証会社になります。ご自身がどの段階にいるかは今どこにいるかに整理しました。
売却して代金を配当に充てても、求償金の全額に届かないことがあります。届かなかった部分は債務として残ります。残った債務をどう扱うかは、返済の話ではなく法律上の整理の話になり、当社の仕事の外側です。売却以外の道は任意売却以外の選択肢に並べ、競売との違いは任意売却と競売は、何が違うかにまとめています。
注
参考文献
この記事のよくある質問
保証料は、保証会社が金融機関に対して保証債務を負うことへの対価です。債務者の債務そのものを消しておく前払金ではありません。保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときにその履行をする責任を負い(民法446条1項)、履行した保証人は主たる債務者に対して求償権を取得します(同法459条1項)。したがって、保証料を納めてきたことと、代位弁済の後に請求を受けることは、法律の仕組みの上では両立します。
民法459条2項が準用する同法442条2項により、求償には弁済その他免責があった日以後の法定利息と、避けることができなかった費用その他の損害の賠償が含まれるためです。法定利率は同法404条2項で年3パーセントとされ、同条3項以下により3年を一期として変動します。適用される利率は利息が生じた最初の時点で決まります。実際の内訳と計算の当否は書面の記載によりますので、金額に疑問がある場合は弁護士・司法書士にご確認ください。
民法501条2項は、代位による権利の行使は、代位した者が自己の権利に基づいて債務者に求償できる範囲内に限りできると定めています。代位によって移ってきた原債権や抵当権を行使できるのは、求償権の額までということです。求償権が天井として働き、原債権は担保を伴った回収の手段として働きます。ただし個別の請求額が条文の範囲に収まっているかどうかの判定は法律の判断であり、当社は行いません。
抵当権の移転は付記登記としてされ、その順位は主登記の順位によります(不動産登記法4条2項)。設定の日にさかのぼった順位のまま、権利者の名義が変わるかたちです。順位が下がることも上がることもありません。任意売却を検討する場合、価格や配分について同意を得る相手が金融機関から保証会社に替わる、という実務上の変化のほうが大きく効いてきます。
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