返済ノート

持分だけが差し押さえられたとき|共有の家に届く範囲を条文で確かめる

要旨

民事執行法43条2項は、共有持分を不動産とみなします。だから持分だけを対象に競売の手続が進みます。ただし効力が及ぶのはその持分にとどまり、他の共有者の持分には届きません。他方、持分が売却されれば買受人が共有者となり、家の使われ方が変わる局面が開きます。

キーワード家族と家/共有持分

登記事項証明書を取ってみたら、甲区に差押えの登記が入っていた。しかも、家全体ではなく、兄弟のうち一人の持分についてだけ入っている。相談の場でそういう書面を拝見することがあります。家には別の兄弟が住んでいて、その人は返済に遅れたことがない。それなのに、家の登記に裁判所の文字が並んでいます。

持分だけが差し押さえられるとは、どういう状態なのか。本稿は、民事執行法が持分をどう扱っているかを条文から確かめ、それが家の使われ方にどこまで届くのかを整理します。先に条文の骨格を書けば、共有持分は不動産とみなされ(民事執行法43条2項)、不動産に対する執行の規定がそのまま働きます。しかし差押えの効力が及ぶのは、あくまでその持分です1

順に、三つを見ます。「みなす」という語が何を引き寄せ、準用からは何が外されているか。差押えの効力がどこで止まり、代わりに何が動き出すか。そして、手続が生活の側にどんな形で姿を現すか。

申立て 債権者による 開始決定 民執法45条1項 送達 民執法45条2項 差押えの登記 民執法48条1項 売却 民執法59条 早い 遅い
図1 持分に対する執行の順序。出典:民事執行法43条2項・45条・48条1項・59条。各段階の間隔は事案により異なるため、期間の長短を表すものではない。

1. 持分が「不動産とみなされる」ということ

民事執行法は、不動産に対する強制執行を強制競売または強制管理の方法により行うと定めます(43条1項)。そのうえで、2項に一文が置かれています。

民事執行法43条(不動産執行の方法)

不動産(登記することができない土地の定着物を除く。以下この節において同じ。)に対する強制執行(以下「不動産執行」という。)は、強制競売又は強制管理の方法により行う。これらの方法は、併用することができる。

2 金銭の支払を目的とする債権についての強制執行については、不動産の共有持分、登記された地上権及び永小作権並びにこれらの権利の共有持分は、不動産とみなす。

「みなす」という語が使われています。共有持分は、それ自体としては物ではなく割合ですが、金銭債権についての強制執行の場面では不動産と同じ扱いを受ける。だから持分だけを対象に、競売の手続を進めることができます。2項が並べているのが、不動産の共有持分だけでなく、登記された地上権および永小作権とそれらの共有持分でもある点にも目を留める値打ちがあります。登記によって公示されうることが、この扱いの下地になっています。

担保権の実行についても同じです。180条は、不動産担保権の実行の対象となる「不動産」に、43条2項によって不動産とみなされるものを含めています。抵当権が持分の上に付いていれば、その持分について担保不動産競売を申し立てることができるということです。

ただし、準用の仕方には除外があります。188条は、担保不動産競売について前章第二節第一款第二目の規定を準用すると定めつつ、括弧書きで81条を準用の対象から外しています。81条は、土地および建物が債務者の所有に属する場合に、その一方の差押えと売却によって所有者を異にするに至ったとき、建物について地上権が設定されたものとみなす規定です2条文が何を準用し、何を準用から外したかは、手続の輪郭をそのまま示しています。

強制競売 民執法43条2項 債務名義に基づく 持分を不動産とみなす 45条以下がそのまま働く 担保不動産競売 民執法180条1号 抵当権などに基づく みなされる持分も対象 188条が81条を準用から外す
図2 二つの競売の根拠の違い。出典:民事執行法43条2項・180条1号・188条。どちらが申し立てられるかは事案によるため、根拠の違いだけを示す。

手続の流れは不動産と変わりません。執行裁判所は強制競売の開始決定をし、その決定において債権者のために不動産を差し押さえる旨を宣言します(45条1項)。開始決定は債務者に送達されます(同条2項)。差押えの効力は、開始決定が債務者に送達された時に生じ、ただし差押えの登記が送達前にされたときは登記がされた時に生じます(46条1項)。開始決定がされたときは、裁判所書記官が直ちに差押えの登記を嘱託します(48条1項)。登記に文字が現れるのは、この嘱託によります。

債権者が一人とは限りません。47条1項は、競売の開始決定がされた不動産について強制競売の申立てがあったときは、執行裁判所は更に強制競売の開始決定をするものとすると定めます。先の申立てが取り下げられ、または先の手続が取り消されたときは、後の開始決定に基づいて手続が続行されます(同条2項)。一つの持分の上に、複数の手続が重なって進むことがあるということです。

書面の側も動きます。差押えの効力が生じた場合、裁判所書記官は物件明細書の作成までの手続に要する期間を考慮して配当要求の終期を定めなければならず(49条1項)、これを公告したうえで、登記された担保権者などのほか、租税その他の公課を所管する官庁または公署に対しても、債権の存否と原因と額を届け出るべき旨を催告します(同条2項)3。執行力のある債務名義の正本を有する債権者などは、配当要求をすることができます(51条1項)。

共有者A 返済が滞った 共有者B・C 滞納していない Aの持分に差押え 民執法43条2項 同じ家の共有者 Aの持分だけ B・Cの持分は別
図3 差押えが向けられる先。出典:民事執行法43条2項・45条1項。破線は関係の存在を示すもので、権利の移動や金額を表すものではない。

2. 差押えが届く範囲と、残されているもの

持分に差押えの登記が入ったあと、家に住み続けている共有者はどうなるのか。条文は、効力の範囲をこう区切っています。

民事執行法46条(差押えの効力)

差押えの効力は、強制競売の開始決定が債務者に送達された時に生ずる。ただし、差押えの登記がその開始決定の送達前にされたときは、登記がされた時に生ずる。

2 差押えは、債務者が通常の用法に従つて不動産を使用し、又は収益することを妨げない。

2項に注意してください。差し押さえられた側の共有者ですら、使用そのものを直ちに止められるわけではありません。まして他の共有者は、差押えの当事者ではありません。民法の側からも同じことが言えます。249条1項は、各共有者は共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができると定めます。差押えは、共有者Aの持分という権利の上に置かれた処分の制限であって、共有者B・Cの持分に触れるものではありません。家という一つの物の上で、差押えを受けた割合と受けていない割合が並んでいる状態です。

家(1個の不動産) Aの持分 Bの持分 Cの持分 差押えが及ぶのは持分だけ 家は共有のまま ※ 割合は事案により異なる。図は及ぶ範囲を示すもの。
図4 差押えが及ぶ範囲。出典:民事執行法43条2項・46条2項、民法249条1項。帯の長さは実際の持分の割合を表すものではない。

範囲が限られていることは、影響が小さいことを意味しません。持分が売却されれば、その持分を買い受けた者が共有者になります。買受人は民法249条1項により共有物の全部について持分に応じた使用ができ、256条1項により、いつでも共有物の分割を請求することができます。家の中に、これまでいなかった共有者が入ってくるということです。分割請求の仕組みは用語集とあわせてご確認ください。

民法254条も見ておく値打ちがあります。共有者の一人が共有物について他の共有者に対して有する債権は、その特定承継人に対しても行使することができる。管理の費用をめぐる債権が残っていれば、それは買受人にも向けられうるということです。買受人の側から見れば、割合とともに前の共有者の位置を引き受けることになります。

売却の効果についても条文があります。不動産の上に存する先取特権、使用および収益をしない旨の定めのある質権ならびに抵当権は、売却により消滅します(59条1項)。消滅する権利を有する者や差押債権者に対抗することができない不動産に係る権利の取得は、売却によりその効力を失い(同条2項)、差押えや仮差押えの執行も同様に効力を失います(同条3項)。他方、留置権と、使用収益をしない旨の定めのない質権で2項の適用がないものについては、買受人がこれらによって担保される債権を弁済する責めに任じます(同条4項)。売却は、持分の上に積み重なっていた権利関係を整理する場面ですが、すべてが消えるわけではありません。

ただし、手続がここまで進むとは限りません。63条1項は、差押債権者の債権に優先する債権がない場合に不動産の買受可能価額が手続費用の見込額を超えないとき、または優先債権がある場合に買受可能価額が手続費用および優先債権の見込額の合計額に満たないときは、執行裁判所がその旨を差押債権者に通知しなければならないと定めます。通知を受けた差押債権者が一週間以内に一定の申出と保証の提供をしないときは、執行裁判所は手続を取り消さなければなりません(同条2項)4

執行裁判所の通知 申出と保証をする 通知から一週間以内 しないとき 手続は取り消される 民事執行法63条1項・2項
図5 剰余を生ずる見込みがない場合の分かれ方。出典:民事執行法63条1項・2項。該当するかどうかの判断は執行裁判所のものであり、経路の形だけを示す。

この規定が持分の執行で意味を持つのは、価額の側にも事情があるからです。持分は単独の所有権と同じようには扱われにくく、他方で家の全体に抵当権が付いていれば、優先債権の見込額はその抵当権の側で立ちます。差押えが登記に現れたことと、売却まで進むこととは、条文の上でも別のことです。もっとも、どちらになるかを当社が見通すことはしていません。

3. 持分は宙に浮かない——生活の側から見ると

ここまでは条文の話です。生活の側から見ると、持分の差押えは三つの形で現れます。第一に、公示です。差押えの登記がされると、登記官はその登記事項証明書を執行裁判所に送付します(48条2項)。登記は誰でも取得できますから、家の状況は外から見える状態になります。62条は、裁判所書記官が物件明細書を作成し、その写しを執行裁判所に備え置いて一般の閲覧に供し、または最高裁判所規則で定める措置を講じなければならないと定めます。家の情報は、書面として外に置かれます。

第二に、人が来ます。執行裁判所は、執行官に対し、不動産の形状、占有関係その他の現況について調査を命じなければなりません。

民事執行法57条(現況調査)

執行裁判所は、執行官に対し、不動産の形状、占有関係その他の現況について調査を命じなければならない。

2 執行官は、前項の調査をするに際し、不動産に立ち入り、又は債務者若しくはその不動産を占有する第三者に対し、質問をし、若しくは文書の提示を求めることができる。

2項が「債務者若しくはその不動産を占有する第三者に対し」と書いていることに注意が要ります。差押えを受けたのはAの持分でも、調査が向かうのは家そのものです。現に住んでいるのが滞納していない兄弟であっても、質問を受ける立場に置かれうるということです。同条4項は、執行官が市町村に対し、その不動産に課される固定資産税に関して保有する図面その他の資料の写しの交付を請求できるとし、5項は、電気、ガスまたは水道水の供給その他これらに類する継続的給付を行う公益事業を営む法人に対し、必要な事項の報告を求めることができるとしています。

1 不動産に立ち入る(57条2項) 2 債務者や占有する第三者に質問する 3 市町村に固定資産税の資料を求める 4 電気・ガス・水道の事業者に照会する
図6 現況調査で執行官が行いうること。出典:民事執行法57条1項から5項。実際にどこまで行われるかは事案によるため、条文上の権限の所在だけを示す。

第三に、売却の話が難しくなります。任意売却で家の全部を売るには共有者の全員が売主として関わることになりますが、そこに差押えの登記がある持分が混じっています。売却の条件は、共有者どうしだけでなく、差押えをした債権者との関係でも決まることになります。段階ごとの整理は今どこにいるかに、競売との違いは任意売却と競売は、何が違うかに置きました。

共有者は兄弟だけ 持分に抵当権・差押え 民執法46条1項 売却 買受人が共有者に 抵当権は消滅する 民執法59条1項
図7 持分の売却の前と後。出典:民事執行法46条1項・59条1項。消滅しない権利もあるため、この図は主な変化だけを示す。

買受人が入ってきたあとの関係についても、条文はいくつか手当てを置いています。83条1項は、執行裁判所が、代金を納付した買受人の申立てにより、債務者または不動産の占有者に対し、不動産を買受人に引き渡すべき旨を命ずることができるとしつつ、事件の記録上買受人に対抗することができる権原により占有していると認められる者に対しては、この限りでないとします。申立ては、代金を納付した日から六月を経過したときはできません(同条2項)。ただし書があること自体は書けますが、誰がこれに当たるかは法律の判断です。

また、持分は消えません。民法255条は、共有者の一人がその持分を放棄したとき、または死亡して相続人がないときは、その持分は他の共有者に帰属すると定めます。持分は宙に浮くことなく、他の共有者のもとへ移ります。裏返せば、放棄によって責任から自由になるという単純な話ではありません5

持分が売却される 買受人が共有者に 民法249条1項 分割の請求もある 民法256条1項 家の使われ方が変わる局面が生じる
図8 持分の売却後に生じる関係。出典:民法249条1項・256条1項、民事執行法59条1項。実際に何が起きるかは買受人の行動によるため、条文上の可能性を示すにとどまる。

なお、執行の目的物について所有権その他目的物の譲渡または引渡しを妨げる権利を有する第三者は、債権者に対し、その強制執行の不許を求めるために第三者異議の訴えを提起することができます(38条1項)。条文にこうした道があること自体は書けますが、どの場面でこれが使えるかは法律の判断であり、本稿は立ち入りません6

  • 共有持分は不動産とみなされる(民執法43条2項)
  • 差押えは他の共有者の持分に及ばない
  • 現況調査と物件明細書で、家は外から見える
  • 売却されると、共有者の顔ぶれが変わる
先に申し上げること 当社は、差押えを止める手続や、第三者異議の訴え・引渡命令の可否について判断を述べることをしていません。手続の代理も法律の判断も、弁護士・司法書士の領域です。また、持分に差押えの登記が入っている家について、当社が売却の結果をお約束することもできません。債権者との調整が調うかどうかは、当社の側だけで決まる事柄ではないからです。当社にできるのは、登記の記載を一緒に読み、どの段階にいるかを確かめ、その段階で並んでいる手を整理するところまでです7
小括 民事執行法43条2項は共有持分を不動産とみなし、持分だけを対象とする競売の手続を可能にしています。担保権の実行にも180条を通じて同じ扱いが及びますが、188条は81条を準用から外しています。差押えの効力は開始決定の送達時または登記時に生じ(46条1項)、その効力が及ぶのはその持分にとどまる一方、現況調査は家そのものに向かい(57条)、物件明細書は一般の閲覧に供されます(62条)。他方、剰余を生ずる見込みがなければ手続は取り消されます(63条)。本稿は条文の枠組みを追ったにとどまり、個別の事案で差押えを止められるか、売却が成り立つかを示すものではありません。ほかの手段の並びは任意売却以外の選択肢に書いています。

  1. 民事執行法43条2項は、不動産の共有持分のほか、登記された地上権および永小作権ならびにこれらの権利の共有持分も不動産とみなす。登記によって公示されうる権利であることが、この扱いの前提になっている。
  2. 188条が準用の対象とする「前章第二節第一款第二目」は、強制競売に関する一連の規定である。抵当権については、民法388条が、土地およびその上に存する建物が同一の所有者に属する場合の法定地上権を別に定めている。二つの条文の関係の評価には立ち入らない。
  3. 49条2項3号が催告の相手方に租税その他の公課を所管する官庁または公署を挙げているのは、公租公課が手続の中で把握されるようにするためである。催告を受けた者の届出義務は50条に定めがある。
  4. 63条2項ただし書は、差押債権者が期間内に1項各号のいずれにも該当しないことを証明したときなどを除外事由として挙げている。取消しが自動的に決まる仕組みではない。
  5. 民法255条が定めるのは持分の帰属であって、その持分に付いていた負担の帰趨ではない。放棄や相続人の不存在によって何が起こるかは、担保権や差押えとの関係を含めた法律の判断を要する。
  6. 民事執行法38条1項の第三者異議の訴えは、執行の目的物について所有権その他譲渡または引渡しを妨げる権利を有する第三者に与えられた訴えである。共有者であることそれ自体がこれに当たるかどうかは、本稿の扱う範囲を超える。
  7. 弁護士法72条は、報酬を得る目的で法律事件に関して法律事務を取り扱うことを弁護士でない者に禁じている。当社は宅地建物取引業者として売買の媒介と売却条件の調整を行い、法律の判断を要する事項は提携する弁護士・司法書士におつなぎしている。

参考文献

一次情報:https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004

共有の家で、一人の持分だけが差し押さえられることはありますか。

民事執行法43条2項は、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行については、不動産の共有持分を不動産とみなすと定めています。したがって持分だけを対象に手続を進めることができます。担保権の実行についても、同法180条が43条2項によって不動産とみなされるものを対象に含めています。実際にどの手続が進んでいるかは、届いた書面と登記の記載でご確認ください。

差押えの効力はいつから生じますか。

民事執行法46条1項は、差押えの効力は強制競売の開始決定が債務者に送達された時に生ずるとし、ただし差押えの登記がその開始決定の送達前にされたときは登記がされた時に生ずるとしています。開始決定がされたときは裁判所書記官が直ちに差押えの登記を嘱託し(48条1項)、登記官は登記事項証明書を執行裁判所に送付します(同条2項)。日付は書面と登記に記載されています。

差押えを受けていない共有者は、家に住み続けられますか。

民事執行法46条2項は、差押えは債務者が通常の用法に従って不動産を使用し、または収益することを妨げないと定めます。差押えを受けた共有者ですら使用が直ちに止まるわけではなく、他の共有者はそもそも差押えの当事者ではありません。また民法249条1項により、各共有者は共有物の全部についてその持分に応じた使用をすることができます。個別の事情による判断は法律の領域になります。

持分が売却されたら、家はどうなりますか。

その持分を買い受けた者が共有者になります。買受人は民法249条1項により共有物の全部について持分に応じた使用ができ、256条1項により、いつでも共有物の分割を請求することができます。また売却により、その不動産の上に存する抵当権などは消滅し(民事執行法59条1項)、差押債権者等に対抗できない権利の取得は効力を失います(同条2項)。何が起きるかは買受人の行動にもよります。

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