返済ノート

共有の家は誰が決めるか|民法が引いた保存・管理・変更の三本の線

要旨

民法は共有物についての行為を三つに分けています。保存行為は単独でできる(252条5項)。管理は持分の価格の過半数で決する(同条1項)。変更には他の共有者の同意が要る(251条1項)。頭数の多数決ではありません。そして家の全部を売るには、共有者の全員が売主として関わります。

キーワード家族と家/共有

磐田や袋井で相続のご相談を伺っていると、実家が兄弟の共有になったままになっている、という話にしばしば行き当たります。名義を分ける意図はなかった。遺産分割の話し合いが終わらないうちに、登記だけが相続人全員の名で入った。結果として一つの土地と建物に、複数の所有者が並んでいます。

そのうちの一人が住宅ローンの返済に詰まり、家を売って清算したいと考えたとき、最初に立ちはだかるのがこの状態です。「あなた一人では決められません」と言われる。本稿は、共有という状態を民法がどのように組み立てているのかを条文にさかのぼって確かめます。誰が何を決められるのかは、家族の力関係ではなく、行為の種類と持分の割合で切り分けられています1

順に、三つを見ます。共有がどこから来て、その割合がどの書面に現れるか。民法が行為をどう三つに分け、過半数によっても越えられない線をどこに引いているか。そして、共有者の一人が動かないときに条文がどんな経路を用意し、どこには用意していないか。

保存行為 単独でできる 民法252条5項 管理 持分の価格の過半数 民法252条1項 変更 全員の同意が要る 民法251条1項 一人でできる 全員がそろう
図1 共有物についての行為の三区分。出典:民法251条1項・252条1項・5項。どの行為がどの区分に当たるかは事案により判断されるため、区分の存在だけを示す。

1. 共有という状態は、どのように生まれるか

共有は、当事者が望んで作るとは限りません。民法は、相続人が数人あるときは相続財産はその共有に属すると定めています(898条1項)。共有に関する規定を適用するときの各相続人の共有持分は、900条から902条までにより算定した相続分によります(同条2項)。遺産分割が終わるまでの間、実家は自動的に共有物になっているということです。話し合いを始める前から、すでにその状態にあります。

共有者が持っているのは、家の一部分ではありません。民法249条1項は、各共有者は共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができると定めます。台所は長男、風呂は次男、という分け方ではない。全部について、割合で使う。この抽象的な書き方が、共有をめぐる問題の出発点になります。

共同相続人A 相続分による持分 共同相続人B 相続分による持分 実家(1個の物) 民法898条1項 決めるのは共有者 全部について使う 全部について使う
図2 相続によって生じる共有の形。出典:民法249条1項、898条1項・2項。矢印は権利の及ぶ範囲を示すもので、持分の割合を表すものではない。

249条には2項と3項が置かれています。共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う(2項)。共有者は、善良な管理者の注意をもって共有物の使用をしなければならない(3項)。実家に住み続けている兄弟と、家を出た兄弟との間に、条文の上では対価の関係が置かれています。2項が「別段の合意がある場合を除き」と書いている点にも目を留める値打ちがあります。合意があればそちらが先に立つ、という順序です。

では、その割合はどこから来るのか。民法250条は、各共有者の持分は相等しいものと推定すると定めます。ここも「推定する」です。等しいと決めているのではなく、別の割合が明らかにならない限りそう扱う、という書き方になっています。相続によって生じた共有には898条2項があるため、250条の推定に戻る場面は限られます。

1 登記名義人が何人書かれているか 2 持分が何分の何と書かれているか 3 相続による移転の登記がされているか 4 ほかに登記された権利がないか
図3 登記事項証明書で確かめる項目。出典:不動産登記法59条4号・76条の2第1項。記載の意味の評価は法律の判断であり、確かめる箇所だけを示す。

その割合が手元のどの書面に現れるかも、条文に書かれています。不動産登記法59条は権利に関する登記の登記事項を列挙し、その4号に、登記名義人が二人以上であるときは当該権利の登記名義人ごとの持分を挙げています。持分は、登記事項証明書に分数として並びます。家族の記憶ではなく、この数字が話の出発点になります。

もっとも、登記がされていなければ書面には何も現れません。不動産登記法76条の2第1項は、所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならないと定めます。遺産の分割があったときは、相続分を超えて所有権を取得した者が、分割の日から三年以内に申請します(同条2項)2

相続の開始 三年 十年 民法898条1項 不登法76条の2 民法262条の2
図4 相続の開始を起点に別々の条文が置いた期間。出典:民法898条1項・262条の2第3項、不動産登記法76条の2第1項。目盛りの間隔は年数の比率ではない。

2. 民法が引いている三本の線

では、共有物について何かを決めるとき、誰の賛成が要るのか。民法は行為を三つに分け、それぞれ別の要件を置いています。

民法251条(共有物の変更)

各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。

民法252条(共有物の管理)

共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。

3 前二項の規定による決定が、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。

5 各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。

読み分けると、こうなります。保存行為は各共有者が単独でできます(252条5項)。管理に関する事項は、持分の価格に従いその過半数で決します(同条1項)。そして形状または効用の著しい変更を伴う変更には、他の共有者の同意が要ります(251条1項)。頭数の多数決ではなく、持分の価格の過半数である点に注意が要ります。三人兄弟でも、一人が2分の1を持っていれば、残る二人が手を結んでも過半数には届きません。

  • 保存行為は単独でできる
  • 管理は持分の価格の過半数
  • 著しい変更には全員の同意
  • 使用する共有者には承諾の線
持分の価格 共有者A 共有者B 共有者C 2分の1は過半数ではない 変更には全員 ※ 割合は事案により異なる。図は決め方の違いを示すもの。
図5 持分の価格と決め方の関係。出典:民法251条1項・252条1項。帯の長さは説明のための図式であり、実際の持分の割合ではない。

251条1項には括弧書きが入っています。変更のうち「その形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」は、この条文の対象から除かれる。除かれたものは252条1項の管理に関する事項の側に落ち、持分の価格の過半数で決せられます。条文は、変更という語を二つに割っているということです。もっとも、何をもって「著しい」とするかの基準を、民法はどこにも置いていません。

251条1項がいう変更 著しい変更を伴わないもの 管理に関する事項へ 持分の価格の過半数で決する(252条1項)
図6 括弧書きによる除外の形。出典:民法251条1項・252条1項。箱の大きさは件数や重要度を表すものではない。

賃貸借にも線が引かれています。252条4項は、前三項の規定によって共有物に設定できる賃借権その他の使用および収益を目的とする権利について、種類ごとに期間の上限を定めます。樹木の栽植または伐採を目的とする山林の賃借権等は十年、それ以外の土地の賃借権等は五年、建物の賃借権等は三年、動産の賃借権等は六箇月です(同項1号から4号)。この期間を超えるものは、管理の枠から出ます。空いた実家を人に貸す話が出たとき、契約の期間によって必要な同意の範囲が変わります。

山林 十年 土地 五年 建物 三年 動産 六箇月 左ほど期間が長い 右ほど短い
図7 管理として設定できる賃借権等の期間。出典:民法252条4項1号から4号。段差の高さは年数の比率を表すものではない。

そして、過半数で決められることの上に、もう一本の線があります。252条3項です。1項・2項による決定が、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。数の上では通る決定であっても、使用している共有者の承諾という別の要件が重なる場合があるという書き方です。実家に住み続けている共有者がいる場面では、この項が効いてきます。ただし何が「特別の影響」に当たるかも、条文は定義していません。

共有者は、共有物の管理者を選任することもできます。選任と解任は252条1項の括弧書きにより管理に関する事項に含まれ、過半数で決します。管理者は管理に関する行為をすることができますが、全員の同意を得なければ変更を加えることはできません(252条の2第1項ただし書)。共有者が管理に関する事項を決したときは管理者はこれに従って職務を行わなければならず(同条3項)、違反して行った行為は共有者に対して効力を生じません。ただし共有者は、これをもって善意の第三者に対抗することができません(同条4項)3

共有者 過半数で決する 第三者 善意なら対抗されず 共有物の管理者 民法252条の2 違反行為の効力 決定に従う 管理に関する行為
図8 管理者を置いた場合の関係。出典:民法252条の2第1項・3項・4項。矢印は条文上の関係の向きであり、管理者が置かれる場面の多寡ではない。

持分が人手に渡ったあとの規定も一つあります。民法254条は、共有者の一人が共有物について他の共有者に対して有する債権は、その特定承継人に対しても行使することができると定めます。管理の費用を立て替えた共有者がいる場合、その債権は持分を譲り受けた者にも向けられうる。持分を買う側は、割合とともに、前の共有者に向けられていた債権の相手方の地位も引き受けます。

では、売却はどこに入るのか。251条1項が書いているのは「変更」であって「処分」ではありません。所有者が自由に処分できるのは自己の所有物であり(206条)、共有者が単独で処分できるのは自己の持分にとどまります。家の全部を売るには、共有者の全員が売主として関わることになります。持分だけを売ることは各共有者の自由ですが、それは家全体を売ったことにはなりません4。任意売却と競売の違いは任意売却と競売は、何が違うかに整理しました。

3. 相手が見つからないとき、決まらないとき

所在が不明 民法251条2項・252条2項1号。
返事がない 催告しても賛否を示さないとき。
費用を払わない 一年で償金による取得の道がある。

共有の問題が実務で重くなるのは、共有者の一人が動かない場合です。共有者が他の共有者を知ることができず、またはその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができます(251条2項)。管理についても同様の仕組みがあり、所在等が分からないときに加えて、相当の期間を定めて賛否を明らかにすべき旨を催告したのに期間内に賛否を明らかにしないときが挙げられています(252条2項2号)。返事をしないこと自体が、手続の入口として条文に書かれているということです。

上段:変更/下段:管理 左:所在不明/右:賛否不明 裁判の経路がある 民法251条2項 経路が置かれていない 催告の規定がない 裁判の経路がある 民法252条2項1号 裁判の経路がある 民法252条2項2号
図9 二つの条件の組み合わせ。出典:民法251条2項、252条2項1号・2号。個別の事案がどこに当たるかを示す図ではない。

四つの組み合わせのうち一つだけ、条文が経路を置いていない欄があります。変更について、催告しても賛否を明らかにしない共有者がいる場合です。251条2項が挙げるのは所在等が分からないときだけで、252条2項2号にあたる規定は変更の側に置かれていません。

催告そのものにも、条文は「相当の期間を定めて」としか書いていません。同じことは251条2項の「知ることができず」にも言えます。どこまで調べれば足りるのかを民法は定義していない。経路が用意されていることと、その入口が明確であることとは、別のことです。

不動産については、さらに二つの裁判が置かれました。262条の2第1項は、所在等不明共有者の持分を、請求をした共有者に取得させる裁判です。請求をした共有者が二人以上あるときは、持分の割合で按分してそれぞれ取得させます。262条の3第1項は、所在等不明共有者以外の共有者の全員が特定の者に対して持分の全部を譲渡することを停止条件として、所在等不明共有者の持分をその特定の者に譲渡する権限を付与する裁判です。前者では持分が共有者の側に集まり、後者では家の全部が一人の第三者に渡る場面が想定されています。

持分を取得させる 民法262条の2 請求した共有者へ 二人以上なら按分 時価相当額の支払 譲渡の権限を与える 民法262条の3 特定の者へ譲渡 全員の譲渡が条件 按分した額の支払
図10 二つの裁判の行き先の違い。出典:民法262条の2第1項・4項、262条の3第1項・3項。要件を満たすかどうかの判断は裁判所のものである。

どちらにも、時間と、先に動いている手続への配慮が書き込まれています。持分が相続財産に属し共同相続人間で遺産分割をすべき場合には、相続開始の時から十年を経過していないとこれらの裁判はできません(262条の2第3項・262条の3第2項)。さらに262条の2第2項は、その持分に係る不動産について258条1項の請求または遺産の分割の請求があり、かつ所在等不明共有者以外の共有者が異議がある旨の届出をしたときは、裁判をすることができないとします。

準用から外されているものにも目を向ける値打ちがあります。民法264条は共有の節の規定を、数人で所有権以外の財産権を有する場合について準用すると定めますが、括弧書きで262条の2と262条の3を対象から外しています5条文が何を準用から外したかは、制度の届く範囲をそのまま示しています。

最後に費用です。各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負います(253条1項)。固定資産税や修繕の費用は、住んでいる人だけが背負う建て付けにはなっていません。共有者が一年以内にこの義務を履行しないときは、他の共有者は相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができます(同条2項)6

  • 決め方は頭数ではなく持分の価格
  • 持分は登記事項証明書に書いてある
  • 全部を売るには全員が売主になる
  • 相続がからむと三年と十年の区切りが出る
先に申し上げること 当社は、共有者の間の話し合いを代理することをしていません。誰の同意が必要かという評価も、何が「著しい変更」や「特別の影響」に当たるかの判断も、所在等不明共有者に関する裁判の申立ても、弁護士・司法書士の領域です。当社にできるのは、登記事項証明書で持分の状況を一緒に確かめ、売却の場合に誰が売主として関わるかを整理するところまでです7。ほかの手は任意売却以外の選択肢をご覧ください。
小括 民法は共有物についての行為を保存・管理・変更に分け、単独・持分の価格の過半数・全員の同意という三つの要件を置き、そのうえで252条3項が、使用する共有者の承諾という線を過半数の上に重ねています。他方、「著しい変更」「特別の影響」「相当の期間」といった語に条文は定義を置かず、変更について賛否を示さない共有者がいる場合の経路も置いていません。本稿は条文の枠組みと、答えの置かれていない箇所を示したにとどまり、個別の行為がどの区分に当たるかを示すものではありません。当社の役割と限界は私たちの立場に、段階ごとの整理は今どこにいるかに書いています。

  1. 本稿でいう共有は、民法第二編第三章第三節の共有をいう。同法264条は所有権以外の財産権を数人で有する場合にも同節の規定を準用しており、枠組みは所有権に限られない。ただし本文で見るとおり、その準用には除外がある。
  2. 不動産登記法76条の3第1項は、76条の2第1項の義務を負う者が、相続が開始した旨および自らが相続人である旨を登記官に申し出ることができるとし、期間内に申出をした者はその義務を履行したものとみなす(同条2項)。
  3. 252条の2第4項は、内部の決定に外の第三者を巻き込まないための調整として置かれている。第三者が善意であったかどうかの認定は法律上の判断を要する。
  4. 251条1項が対象としているのは「変更」であり、処分行為について明文の規定は置かれていない。もっとも206条が所有者の処分権を自己の所有物に限っている以上、共有者が単独で処分できる範囲は自己の持分にとどまる。
  5. 262条の2第5項は同条の規定を、不動産の使用または収益をする権利(所有権を除く)が数人の共有に属する場合について準用する。262条の3第4項にも同様の規定がある。
  6. 253条2項の償金による持分の取得は、費用を負担しない共有者がいる場合の調整として置かれている。ただし要件の充足や償金の額は法律上の判断を要する事項であり、本稿はその判断に立ち入らない。
  7. 弁護士法72条は、報酬を得る目的で法律事件に関して法律事務を取り扱うことを弁護士でない者に禁じている。当社は宅地建物取引業者として売買の媒介と売却条件の調整を行い、法律の判断を要する事項は提携する弁護士・司法書士におつなぎしている。

参考文献

一次情報:https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089

兄弟の一人が反対していても、実家を売ることはできますか。

民法251条1項は、各共有者は他の共有者の同意を得なければ共有物に変更を加えることができないと定めます。また所有者が処分できるのは自己の所有物であり(206条)、共有者が単独で処分できるのは自己の持分にとどまります。したがって家の全部を売る場面では、共有者の全員が売主として関わることになります。個別の事案で何ができるかは法律の判断になりますので、当社が結論を申し上げることはしていません。

共有者の多数決で決められる事柄はありますか。

民法252条1項は、共有物の管理に関する事項は各共有者の持分の価格に従いその過半数で決すると定めています。注意が要るのは、頭数の多数決ではなく持分の価格による点です。三人の共有者がいても、一人が2分の1を持っていれば残る二人だけでは過半数に届きません。また同条4項は、管理として設定できる賃借権等の期間を種類ごとに定めており、建物の賃借権等は三年とされています。

共有者の一人と連絡が取れません。条文に何か書かれていますか。

民法251条2項は、共有者が他の共有者を知ることができず、またはその所在を知ることができないときに、裁判所が、その他の共有者以外の共有者の同意を得て変更を加えることができる旨の裁判をすることができると定めます。管理についても252条2項に同様の仕組みがあります。不動産については262条の2・262条の3も置かれています。いずれも裁判所への申立てを要する手続で、当社が代理することはしていません。

実家に住んでいない共有者は、何も請求できないのですか。

民法249条1項は、各共有者は共有物の全部についてその持分に応じた使用をすることができると定めます。そのうえで同条2項は、共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負うとしています。また253条1項により、管理の費用その他の負担は各共有者が持分に応じて負います。実際の金額や請求の可否は法律の判断を要します。

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