返済ノート

土地と建物の両方に抵当権があるとき|共同抵当と民法392条の配当

要旨

同じ債権のために複数の不動産に抵当権があると、共同抵当になります。民法392条は、代価を同時に配当するときは各不動産の価額で負担を按分し、一方だけを配当するときは抵当権者が全部の弁済を受けられるかわりに、次順位者が他方へ代位できるとしています。

キーワード担保物権/共同抵当

登記事項証明書を取り寄せると、権利部の乙区に抵当権の登記があり、その末尾に「共同担保目録」の記号と番号が添えられていることがあります。目録をたどると、土地と建物が並び、場合によってはもう一筆の土地が続いています。一つの借入れのために、複数の不動産が担保に入っている状態です。

日本の法律は、土地と建物を別個の不動産として扱います。民法370条は、抵当権の効力が「抵当地の上に存する建物を除き」目的不動産に付加して一体となっている物に及ぶと定めています。土地に設定した抵当権は、その上の建物には及びません。だから戸建てを買うために借りるときは、土地に一つ、建物に一つ、抵当権が設定されるのが通例です。担保されている債権は一つ、抵当権は二つ。この形を共同抵当といいます1

順に、三つのことを見ます。この状態が登記簿の上にどう現れ、どの担保に規定が働くのか。同時に配当するときと一方だけを配当するときで、民法392条が何を分けているのか。そして、売る話が始まったとき、条文が手元のどの紙に影を落とすのか。

土地 一筆の不動産 建物 別の不動産 同一の債権者 一つの債権を担保 登記は別々 抵当権 抵当権
図1 共同抵当の形。出典:民法370条・392条、不動産登記法83条1項4号。抵当権の順位や登記の前後を表すものではない。

1. 一つの債権に、複数の不動産がぶら下がる形

共同抵当は、特別な名前のついた契約ではありません。民法392条1項の言い方を借りれば、債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する、という状態を指す呼び名です。契約書に「共同抵当」と書かれていなくても、この状態であれば392条が働きます。

状態は登記簿の上に現れます。不動産登記法83条1項4号は、二以上の不動産に関する権利を目的とするときは、当該二以上の不動産を登記事項とすると定めます。同条2項は、これを明らかにするため登記官が共同担保目録を作成することができるとしています2。目録の記号と番号は乙区の登記に添えられますから、証明書を一通取れば、どの不動産が同じ債権に結びついているかを確かめられます。

83条1項4号は「二以上の不動産に関する権利」と書くだけで、不動産の種類を限っていません。磐田市や袋井市の戸建てでは、ご両親の代に土地を分けた際、通路にあたる一筆が親名義のまま残り、同じ債権の担保になっている場合もあります。

債権者の側から見ると、共同抵当は引き当ての幅です。一方の価額が下がっても、他方から回収できる余地が残ります。債務者の側から見ると、二つの不動産が一つの借入れに縛られ、片方だけを切り離して処分することが難しくなります。

単独の抵当 不動産は一つ 代価はその一つだけ 配当の按分は起きない 共同担保目録は付かない 共同抵当 不動産は二つ以上 同時配当か異時配当か 次順位者の代位がある 民法392条・393条
図2 二つの形の違い。出典:民法392条・393条、不動産登記法83条2項。有利不利ではなく、検討する項目が増えることを示している。

条文の文言を細かく見ます。392条1項は「その各不動産の価額に応じて」と書き、2項は「ある不動産の代価のみを配当すべきとき」と書きます。価額と代価。同じ条文の中で語が使い分けられています。代価は現に売れた値段を指す語として読めますが、1項の価額が何をもって定まるのかを、392条は書いていません。競売であれば、執行裁判所が評価人の評価に基づいて売却基準価額を定めます(民事執行法60条1項)。それが392条1項の価額と同じものかどうかは、条文の文言だけから決まりません。条文はここに答えを置いていない、と読むほかありません。

  • 共同抵当かどうかは共同担保目録に出ている
  • 392条1項は「価額」、2項は「代価」と書き分ける
  • 価額の定め方は、この条文に書かれていない

もうひとつ、392条が働かない場合を民法が名指ししています。住宅ローンでは抵当権が使われるのが通例ですが、事業用の借入れや後から起こした借入れの担保として、根抵当権が登記されていることがあります。

民法398条の16(共同根抵当)・398条の18(累積根抵当)

第三百九十八条の十六 第三百九十二条及び第三百九十三条の規定は、根抵当権については、その設定と同時に同一の債権の担保として数個の不動産につき根抵当権が設定された旨の登記をした場合に限り、適用する。

第三百九十八条の十八 数個の不動産につき根抵当権を有する者は、第三百九十八条の十六の場合を除き、各不動産の代価について、各極度額に至るまで優先権を行使することができる。

398条の16は、392条と393条を根抵当権に適用するのは「その設定と同時に……登記をした場合に限り」としています。設定と同時の登記が要る。398条の18は、その場合を除き、根抵当権者は各不動産の代価について各極度額に至るまで優先権を行使できるとします。按分も代位もなく、それぞれの不動産から極度額まで取れる形です。見た目は同じ「複数の不動産に担保が付いている」状態でも、392条が働くかどうかで配当の考え方が変わります3

抵当権 民法392条・393条 同一の債権であればよい 按分と代位が働く 共同担保目録で確かめる 根抵当権 民法398条の16 設定と同時の登記が要る ないときは累積になる 同法398条の18
図3 規定が働く範囲。出典:民法392条・393条・398条の16・398条の18。担保の種類で適用が分かれることだけを示している。

早い段階で確かめる理由は、売る話が始まったときに、誰と何を合意するかが変わるからです。抹消してもらう相手が一人なのか複数なのか。ご自身が今どの段階にいるかは今どこにいるかに整理しました。

2. 民法392条が分けている二つの配当

同時配当 価額に応じて負担を按分する。
異時配当 全部の弁済を受け、代位が起きる。
付記登記 代位は登記簿の上に残せる。

民法は、共同抵当の配当を二つの場面に分けて書いています。全部の代価を同時に配当する場合と、一方の代価だけを配当する場合です。

民法392条(共同抵当における代価の配当)

債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、同時にその代価を配当すべきときは、その各不動産の価額に応じて、その債権の負担を按分する。

2 債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、ある不動産の代価のみを配当すべきときは、抵当権者は、その代価から債権の全部の弁済を受けることができる。この場合において、次順位の抵当権者は、その弁済を受ける抵当権者が前項の規定に従い他の不動産の代価から弁済を受けるべき金額を限度として、その抵当権者に代位して抵当権を行使することができる。

1項が同時配当です。代価をまとめて配当するときは、債権の負担をそれぞれの価額に応じて按分します。三千万円の債権について、土地が二千万円、建物が一千万円で売れたのであれば、土地が二千万円分、建物が一千万円分の負担を負う、という割り付けです。受け取る総額は変わりません。変わるのは、どちらの代価からいくら取ったことにするかです。

同時に代価を配当するとき 土地が負担する分 建物が負担する分 価額に応じて按分する(民法392条1項) ※ 帯の長さは説明のための図式で、実際の価額の比を表すものではない
図4 同時配当の割り付け。出典:民法392条1項。按分の基準となる価額は手続の中で定まる。比率を示す図ではない。

2項が異時配当です。土地だけが先に売れた、というように一方の代価だけを配当するときは、共同抵当権者はその代価から債権の全部の弁済を受けられます。按分を待たされることはありません。そのかわり、後段が置かれています。その不動産の次順位の抵当権者は、共同抵当権者が1項に従って他の不動産の代価から弁済を受けるべきであった金額を限度として、共同抵当権者に代位して抵当権を行使することができます。

一方の代価のみを配当するとき 共同抵当権者が全部の弁済を受ける 次順位者 次順位者は他方の不動産に代位できる(民法392条2項後段) ※ 帯の長さは順序を示すもので、金額の割合を表すものではない
図5 異時配当と代位。出典:民法392条2項。代位できる金額には限度があり、その大きさを表す図ではない。

先に売れた不動産の後順位者は、その分だけ他方へ移っていける、という仕組みです。共同抵当権者がどちらから回収するかを選べることで後順位者が一方的に不利益を受けないよう、条文が調整を置いています4。代位には登記の受け皿もあります。民法393条は、代位によって抵当権を行使する者は、その抵当権の登記に代位を付記することができると定めます。

1項と2項を分けているのは、不動産の数ではありません。配当の時期です。抵当権を設定した時点では、どちらの条文が働くかは決まっていません。二つがまとめて売れれば1項、片方が先に売れれば2項。同じ共同抵当が、売れ方によって別の規定の下に置かれます。共同担保目録を見ただけでは配当の姿が見えないのは、このためです。

代位が認められている相手の書き方も見ておきます。2項後段が名指ししているのは「次順位の抵当権者」です。条文はこの語しか使っていません。先に売れた不動産に、抵当権ではなく差押えの登記だけがある債権者や、登記のない一般の債権者が同じ立場に立てるとは書かれていません。条文が名指しした者と、名指しされていない者があります。誰がどちらに当たるかの当てはめは法律の判断であり、当社はここに立ち入りません。

では、二つの不動産の代価から回収してなお足りないとき、残りはどこへ向かうのか。民法はこれを別の条文で受けています。

民法394条(抵当不動産以外の財産からの弁済)

抵当権者は、抵当不動産の代価から弁済を受けない債権の部分についてのみ、他の財産から弁済を受けることができる。

2 前項の規定は、抵当不動産の代価に先立って他の財産の代価を配当すべき場合には、適用しない。この場合において、他の各債権者は、抵当権者に同項の規定による弁済を受けさせるため、抵当権者に配当すべき金額の供託を請求することができる。

1項は、抵当権者が他の財産から弁済を受けられるのは「抵当不動産の代価から弁済を受けない債権の部分についてのみ」だと書きます。順序が定められている、ということです。共同抵当であれば、まず二つの不動産の代価を見る。そのうえで足りない部分が、債務者の他の財産に向かいます。売った後に残債が残るのは、この順序のいちばん外側の話です。

優先する額にも枠があります。民法375条1項は、抵当権者が利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、満期となった最後の二年分についてのみ抵当権を行使することができるとします。2項は、債務不履行によって生じた損害の賠償についても最後の二年分に同じ扱いを及ぼし、定期金と通算して二年分を超えられないとします。遅延損害金が積み上がっても、抵当権として優先する部分にはこの枠がかかる。枠を超えた部分が消えるわけではありません。優先の外に置かれるだけです5

抵当権として優先する範囲 元本 最後の二年分 枠の外 民法375条1項・2項 ※ 帯の長さは金額の割合を表すものではない
図6 優先する部分の枠。出典:民法375条1項・2項。枠の外の債務が消えることを示す図ではない。

3. 売る話が始まったときに、この条文がどこに効くか

ここまでは競売による配当を念頭に読んできました。任意売却の場面では、配当そのものではなく、その手前の合意づくりにこの条文が影を落とします。競売と任意売却で何が違うかは任意売却と競売は、何が違うかにまとめています。

第一に、抹消に応じてもらう相手の数です。二つの不動産に同じ債権者しか登記されていなければ、話す相手は一人です。ところが、一方の不動産にだけ後順位の抵当権や差押えの登記があると、その者の同意も要ります。配分の話に、392条2項の代位が背景として入ってきます。後順位者は、自分が代位で他方から回収できたはずの立場を持っているからです。

共同抵当のまま売る 両方をまとめて 配分案は一つで足りる 一方だけを売る 他方の抵当権は残る いずれも登記した債権者の同意が要る
図7 売り方による違い。出典:民法392条・393条。望ましさではなく、別の合意が要ることを示している。

第二に、一方だけを売る話が出たときです。共同抵当が付いたままでは買主が現れにくく、抵当権を外すには債権者の同意が要ります。外した後の担保は他方だけになりますから、債権者にとっては引き当てが減ります。同意が得られるかどうかは事案によります。

第三に、配分案の作り方です。当社が債権者に提示するのは、売却代価から諸費用と各債権者への配分をどう割り付けるかという案です。共同抵当では、392条1項の按分という物差しが話し合いの背景に置かれます。もっとも、任意売却は競売の配当手続そのものではありません。任意売却で何が決まり何が決まらないかは任意売却とは何かにまとめました。

配当表 民事執行法85条 作るのは裁判所書記官 配当期日に呼出しがある 順位と額は法律による 配分案 任意売却の場面 作るのは媒介する業者 債権者に示して協議する 合意がなければ動かない
図8 同じ「配る」でも別の紙。出典:民法392条1項、民事執行法85条1項・3項・5項。どちらが有利かを示す図ではない。

第四に、その紙を誰が作るかです。競売で配当まで進んだ場合、順位と額を定めるのは執行裁判所であり、それに基づいて裁判所書記官が配当期日に配当表を作成します(民事執行法85条1項・5項)。配当期日には債権者と債務者が呼び出されます(同条3項)。共同抵当の按分は、ここで具体的な数字になります。配分案にはこの呼出しがなく、受けるかどうかを決めるのは債権者です。作る者も、届く先も違います6

  • 後順位者がいると、合意する相手が増える
  • 根抵当権は、設定と同時の登記がなければ累積になる
  • 抵当不動産の代価を見た後に、他の財産へ向かう
先に申し上げること 共同抵当の一方だけを外してもらえるかどうかを、当社が見通しとして申し上げることはしていません。抹消に応じるかどうかは債権者の判断であり、392条2項の代位の範囲は法律の判断です。各不動産の価額がいくらになるかを当社が算定して示すこともしていません。当社は宅地建物取引業者として、証明書と目録から関係を整理し、配分案を作って債権者にお示しするところまでを担います。法律の判断を要する段階になれば、提携する弁護士・司法書士におつなぎします。ほかにどのような手が並んでいるかは任意売却以外の選択肢をご覧ください。
小括 共同抵当とは、同一の債権の担保として数個の不動産に抵当権がある状態を指します。民法392条は、同時に配当するときは各不動産の価額に応じて債権の負担を按分し(1項)、一方の代価だけを配当するときは共同抵当権者が全部の弁済を受けられるかわりに、次順位者が他方へ代位できるとしています(2項)。どちらが働くかは売れ方で決まり、設定の時点では定まりません。根抵当権については、設定と同時の登記がある場合に限って392条・393条が適用されます(398条の16)。本稿は条文の枠組みを追ったにとどまり、代位が及ぶ金額を計算するものではありません。当社の役割と限界は私たちの立場に書いています。

  1. 本稿でいう共同抵当は、民法392条1項の「同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合」を指す。同一の債権であることが要件であり、別々の借入れのために別々の不動産へ抵当権が設定されている場合は、この規定の場面ではない。
  2. 不動産登記法83条2項の共同担保目録は、登記官が作成することができるとされている。目録は登記事項証明書の交付を請求する際に、あわせて記載を求めることができる扱いになっている。手元の証明書に目録が付いていない場合は、法務局の窓口で確かめられたい。
  3. 民法398条の16は「その設定と同時に……登記をした場合に限り」と書く。設定と同時であることと、登記があることの二つが要件である。要件を満たすかどうかは登記の記録によって決まるため、本稿は個別の登記についての判断を含まない。
  4. 民法392条2項後段の代位は、次順位抵当権者が、共同抵当権者が同条1項に従い他の不動産の代価から弁済を受けるべき金額を限度とする。限度が置かれているのは、代位によって次順位者が同時配当の場合を超える利益を得ることにならないようにするためと読める。
  5. 民法375条は、抵当権として優先的に行使できる範囲を定めた規定であって、債務そのものの額を減らす規定ではない。1項但書は、それ以前の定期金についても満期後に特別の登記をしたときは、その登記の時から抵当権を行使することを妨げないとしている。
  6. 民事執行法85条1項は、配当の順位および額について配当期日にすべての債権者間で合意が成立した場合を但書で除いている。同条2項は、執行裁判所が順位と額を定める場合には民法・商法その他の法律の定めるところによらなければならないとする。

参考文献

一次情報:https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089

共同抵当かどうかは、どこを見れば分かりますか。

登記事項証明書の権利部乙区にある抵当権の登記をご覧ください。不動産登記法83条1項4号は、二以上の不動産に関する権利を目的とするときは当該二以上の不動産を登記事項とすると定めており、同条2項は、これを明らかにするため登記官が共同担保目録を作成することができるとしています。目録の記号と番号が登記に添えられていれば、同じ債権に結びついた不動産が並んで記載されています。目録が付いていない証明書をお持ちの場合は、法務局の窓口でお確かめください。

土地だけが先に売れたら、建物の抵当権はどうなりますか。

民法392条2項は、ある不動産の代価のみを配当すべきときは、共同抵当権者はその代価から債権の全部の弁済を受けることができると定めます。あわせて後段で、その不動産の次順位の抵当権者は、共同抵当権者が同条1項に従い他の不動産の代価から弁済を受けるべき金額を限度として、その抵当権者に代位して抵当権を行使することができるとしています。代位して抵当権を行使する者は、その登記に代位を付記することができます(同法393条)。

共同抵当のうち一方だけを売ることはできますか。

抵当権が付いたままでは買主が現れにくく、抵当権を外すには登記をした債権者の同意が要ります。外した後の担保は他方の不動産だけになりますから、債権者にとっては引き当てが減ることになります。同意が得られるかどうかは事案によりますので、当社が見通しを申し上げることはしていません。当社は登記事項証明書と共同担保目録から関係を整理し、配分案を作って債権者にお示しするところまでを担っています。

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