返済ノート

個人再生の住宅資金特別条項|民事再生法196条から203条までの要件

要旨

住宅資金特別条項は、民事再生法196条の定義に当たる債権について、198条が定めることができる場合を限り、199条が変更の内容を型ごとに定める仕組みです。199条2項2号には十年・七十歳という数字が置かれています。

キーワード倒産と再建/住宅資金特別条項

「家を残したまま整理できる制度がある」という話を、どこかで見聞きして相談に来られる方があります。多くの場合、制度の名前までは覚えておられません。民事再生法の第十章に置かれているその条項は、条文の上では住宅資金特別条項と呼ばれます。第十章の表題は「住宅資金貸付債権に関する特則」です。

本稿は、この特則が何を対象とし、条文が何を要件として並べているのかを読みます。この制度が使えるかどうか、認可されるかどうかを述べる文章ではありません。申立ては再生債務者が行うもので、その代理は弁護士の仕事です。当社は宅地建物取引業者であり、申立ての代理をしません1。ここで扱うのは、条文に書かれている輪郭だけです。

読む順は三つです。196条の定義が何を「住宅」と呼び、何を呼んでいないか。198条と199条が、どんな要件を重ねているか。そして、認可の決定が確定した後に条文が何を続けているか。

住宅資金貸付債権 民事再生法196条3号 分割払の定めがある 住宅に抵当権がある 住宅資金特別条項の対象 その他の再生債権 住宅ローン以外の債権 再生計画の一般の条項 特別条項の対象外 区分は条文の定義による
図1 条文が置いている二つの区分。出典:民事再生法196条3号・4号、199条1項。ある債権がどちらに当たるかは条文の定義への当てはめであり、この図は区分の存在を示すにとどまる。

1. 条文が「住宅」と呼んでいるもの

この特則は、定義から始まります。民事再生法196条が、五つの語を定めています。ここを外すと、以下の条文はすべて空振りになります。

民事再生法196条(定義)

一 住宅 個人である再生債務者が所有し、自己の居住の用に供する建物であって、その床面積の二分の一以上に相当する部分が専ら自己の居住の用に供されるものをいう。ただし、当該建物が二以上ある場合には、これらの建物のうち、再生債務者が主として居住の用に供する一の建物に限る。

三 住宅資金貸付債権 住宅の建設若しくは購入に必要な資金(住宅の用に供する土地又は借地権の取得に必要な資金を含む。)又は住宅の改良に必要な資金の貸付けに係る分割払の定めのある再生債権であって、当該債権又は当該債権に係る債務の保証人(保証を業とする者に限る。以下「保証会社」という。)の主たる債務者に対する求償権を担保するための抵当権が住宅に設定されているものをいう。

一号を分解すると、条件は四つです。個人である再生債務者が所有していること。自己の居住の用に供する建物であること。床面積の二分の一以上が専ら自己の居住の用に供されていること。そして建物が二以上あるときは、主として居住の用に供する一の建物に限られること2。店舗や賃貸部分を含む建物について、この二分の一の線が問題になります。

1 個人である再生債務者が所有する 2 自己の居住の用に供する建物である 3 床面積の二分の一以上が居住の用 4 二以上あるときは主たる一の建物
図2 196条1号が並べている条件。出典:民事再生法196条1号。並びは条文の記載順であり、個別の建物がこれに当たるかどうかを示す図ではない。

この定義の射程も、柱書に書かれています。196条は「この章、第十二章及び第十三章において」と始まります。第十二章は簡易再生および同意再生に関する特則、第十三章は小規模個人再生および給与所得者等再生に関する特則です。定義は第十章の中だけで働くのではありません3。

二号は敷地を定義します。「住宅の用に供されている土地又は当該土地に設定されている地上権」。並んでいるのは土地と地上権の二つで、賃借権はこの号に書かれていません。三号の括弧書きには「借地権の取得に必要な資金」という語が出てくるので、借地という言葉が特則の中にまったく現れないわけではありません。資金の使途としては現れ、敷地の定義には現れないという書き分けです。

三号は債権の側の定義です。資金の使途が建設・購入・改良に限られ、土地や借地権の取得資金がそこに含まれる旨が括弧書きで示されています。分割払の定めがあること、そしてその債権または保証会社の求償権を担保する抵当権が住宅に設定されていることが要件に入っています。四号は住宅資金特別条項そのものを、五号は住宅資金貸付契約を定義します。語の対応は用語集に置きました。

再生手続の申立て 197条1項 中止命令 抵当権の実行手続 再生計画案の提出 200条1項 決議 201条1項 認可・不認可 202条 先 後
図3 条文が並べている段階の順序。出典:民事再生法197条1項、200条1項、201条1項、202条。各段階の間隔は事案により異なり、期間の長短を表すものではない。

197条1項は、住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可の見込みがあると認めるときに、裁判所が再生債務者の申立てにより、相当の期間を定めて抵当権の実行手続の中止を命ずることができると定めます。ここでいう抵当権の実行手続は、民事執行法180条以下の担保権の実行としての競売です。同条3項は、認可の決定が確定する前でも、再生債務者の申立てにより住宅資金貸付債権の一部の弁済を許可することができるとしています。

3項には条件が書き込まれています。再生手続開始後に一部を弁済しなければ、契約の定めにより期限の利益を喪失することとなる場合に限られる、という書き方です。どちらの規定も「認可の見込みがあると認めるとき」を入口に置いており、その見込みを判断するのは裁判所です。当社が見込みを述べる立場にはありません。なお、住宅資金特別条項を定めた再生計画案は再生債務者のみが提出することができます(200条1項)。

2. 198条と199条が重ねている要件

定義に当たったとして、次に198条が「定めることができる場合」を限ります。

民事再生法198条1項(住宅資金特別条項を定めることができる場合等)

住宅資金貸付債権(民法第四百九十九条の規定により住宅資金貸付債権を有する者に代位した再生債権者(弁済をするについて正当な利益を有していた者に限る。)が当該代位により有するものを除く。)については、再生計画において、住宅資金特別条項を定めることができる。ただし、住宅の上に第五十三条第一項に規定する担保権(第百九十六条第三号に規定する抵当権を除く。)が存するとき、又は住宅以外の不動産にも同号に規定する抵当権が設定されている場合において当該不動産の上に同項に規定する担保権で当該抵当権に後れるものが存するときは、この限りでない。

本文の括弧書きが、まず一つ外します。民法499条により代位した再生債権者(弁済をするについて正当な利益を有していた者に限る)が代位により有するもの。保証会社が代位弁済した後の債権は、この括弧書きに読み込まれる位置にあります。ただし2項が、そこに期間の窓を置いています。保証会社が保証債務の全部を履行した日から六月を経過する日までの間に再生手続開始の申立てがされたときは、204条1項本文により住宅資金貸付債権を有することとなる者の権利について特別条項を定めることができる、という書き方です4。

但書は二つの場合を外します。住宅の上に53条1項の担保権(196条3号の抵当権を除く)が存するとき。そして住宅以外の不動産にも同号の抵当権が設定されている場合において、その不動産の上に、その抵当権に後れる53条1項の担保権が存するとき。53条1項の担保権とは、特別の先取特権・質権・抵当権・商法または会社法の規定による留置権です。住宅に別の担保が付いているかどうかが、条文の上で分かれ目に置かれています。3項は、対象となる債権者が数人あるときは全員を対象として定めなければならないとします。

本文が対象とする 198条1項本文 住宅資金貸付債権 代位した者の分は除く 2項に六月の窓がある 但書が外す場合 198条1項ただし書 住宅の上に他の担保権 他の不動産に後れる担保 53条1項の担保権
図4 198条1項の本文と但書。出典:民事再生法198条1項・2項、53条1項。ある事案がどちらに当たるかの判断は法律の判断であり、この図は条文の構造を示すにとどまる。

199条は、条項の中身を定めます。1項は原則型です。1号は、認可の決定の確定時までに弁済期が到来する元本と、それに対する確定後の住宅約定利息、および確定時までに生ずる利息と不履行による損害賠償について、その全額を一般弁済期間内に支払うと定めます。一般弁済期間とは、再生計画(住宅資金特別条項を除く)で定める弁済期間であり、それが五年を超える場合には認可の決定の確定から五年と条文が書いています。

2号は、確定時までに弁済期が到来しない元本と、それに対する確定後の住宅約定利息について、債務の不履行がない場合についての弁済の時期および額に関する約定に従って支払うと定めます。滞納がなかったとしたらどう払っていたか、という約定のほうを基準にする、という組み立てです。

認可の決定の確定 約定最終弁済期 10年を超えない 202条1項 199条2項 199条2項2号 前 後
図5 199条2項が置いている期限の限度。出典:民事再生法199条2項2号。同号は、変更後の最終の弁済期における再生債務者の年齢が七十歳を超えないことも要件としており、この図は年齢の要件を表していない。

2項は、1項の条項を定めた再生計画の認可の見込みがない場合に用意された型です。弁済期を約定最終弁済期から後の日に定めることができるとしたうえで、要件を三つ並べます。そのうち2号が数字を持っています。変更後の最終の弁済期が約定最終弁済期から十年を超えないこと。かつ、変更後の最終の弁済期における再生債務者の年齢が七十歳を超えないこと。3号は、弁済期の間隔と各弁済期の弁済額について、契約に一定の基準があるときは、その基準におおむね沿うことを求めています。

3項は、2項の条項でも認可の見込みがない場合の型です。一般弁済期間の範囲内で定める元本猶予期間中は、元本の一部とその期間中の住宅約定利息のみを支払うものとすることができます。条文は1項・2項・3項をこの順に並べ、前の型の見込みがないことを次の型の入口に置いています。4項は、権利の変更を受ける者の同意がある場合に、十年を超える猶予その他の変更を認めます。5項は、この条項によって権利の変更を受ける者について、いくつかの規定の適用を外しています5。

3. 認可の決定が確定した後に続くもの

決議の場面から見ます。201条1項は、住宅資金特別条項によって権利の変更を受けることとされている者および保証会社は、住宅資金貸付債権や保証に基づく求償権については議決権を有しないと定めます。2項は、裁判所がその者の意見を聴かなければならないとしています。議決には加わらないが、意見は聴かれる。条文はこの二つを別々に置いています。

202条1項は、可決された場合には次項の場合を除いて認可の決定をする、と定めます。2項が不認可の事由を四つ挙げ、そのうち2号は再生計画が遂行可能であると認めることができないとき、3号は再生債務者が住宅の所有権または住宅の用に供されている土地を住宅の所有のために使用する権利を失うこととなると見込まれるときです。条文は、家を保てないと見込まれる場合を不認可の側に置いています。4号は、決議が不正の方法によって成立するに至ったときです。

特別条項を定めた計画 認可の決定 202条1項 不認可の決定 202条2項各号 どちらになるかを決めるのは裁判所
図6 可決の後に条文が置いている二つの出口。出典:民事再生法202条1項・2項各号。どちらに進むかを予測する図ではなく、二つの出口があることを示すもの。

書面で切ることもできます。202条3項は、権利の変更を受けることとされている者が、再生債権の届出をしていない場合であっても認可すべきかどうかについて意見を述べることができるとします。4項は、認可または不認可の決定があったときに、届出をしていない者に対しても主文および理由の要旨を記載した書面を送達しなければならないと定めます。届出をしていない相手にも書面が届く、という設計です。

認可の決定が確定した後の効果も、条文に書かれています。

民事再生法203条2項(住宅資金特別条項を定めた再生計画の効力等)

住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可の決定が確定したときは、住宅資金特別条項によって変更された後の権利については、住宅資金特別条項において、期限の利益の喪失についての定めその他の住宅資金貸付契約における定めと同一の定めがされたものとみなす。ただし、第百九十九条第四項の同意を得て別段の定めをすることを妨げない。

約定が消えるのではありません。期限の利益の喪失についての定めが、変更後の権利にそのまま乗り移るという書き方です。返済が続くことを前提にした制度である、ということが条文から読み取れます。ただし書は、199条4項の同意を得て別段の定めをすることを妨げないとしています。

前 住宅資金貸付契約 約定の弁済期 期限の利益の定め 認可の確定 後 変更後の権利 199条の型による 同一の定めとみなす
図7 203条2項が置いている前後の関係。出典:民事再生法203条2項、199条各項。金額や期間の長短を表すものではなく、定めが引き継がれることのみを示す。

203条1項は、住宅および敷地の抵当権と、権利の変更を受けた者が再生債務者の保証人その他共に債務を負担する者に対して有する権利について、177条2項の規定を適用しないと定めます。ただし再生債務者が連帯債務者の一人であるときは、特別条項による期限の猶予は他の連帯債務者に対しても効力を有します。同じ一つの条項が、保証人と連帯債務者とで違う働き方をするということです。

204条1項本文は、保証会社が保証債務を履行していたときは、その履行はなかったものとみなすと定めます。ただし書は、保証会社が取得した権利に基づき再生債権者としてした行為に影響を及ぼさないとしています。206条1項は、認可の後の再生計画の取消しの申立てについて、189条3項とは別の要件を定めています6。

  • 「住宅」は196条1号の定義で決まる
  • 198条1項但書が対象から外す場合がある
  • 認可後も約定と同一の定めが乗り移る
先に申し上げること 当社は、この条項をご案内する立場にありません。申立ての代理をせず、要件に当てはまるかどうかの判断も、認可の見込みも述べません。198条1項但書に当たるか、199条各項のどの型になるか、202条2項各号の事由があるかは、いずれも法律の判断です。ご相談の内容がこの領域に入った時点で、判断を述べずに提携する弁護士・司法書士におつなぎしています。当社の役割の範囲は私たちの立場に書いています。
小括 住宅資金特別条項は、民事再生法196条の定義に当たる債権について、198条が定めることができる場合を限り、199条が変更の内容を型ごとに定める仕組みです。199条1項の五年、2項2号の十年・七十歳、198条2項の六月のように、条文が数字を置いている箇所もあります。認可の後は、203条2項により期限の利益の喪失についての定めが変更後の権利に乗り移ります。本稿は条文の並びを追ったにとどまり、どの手続が適するか、要件に当たるか、認可されるかを述べるものではありません。段階ごとの整理は今どこにいるか、手の並びは任意売却以外の選択肢をご覧ください。

注

  1. 弁護士法72条は、報酬を得る目的で法律事件に関して法律事務を取り扱うことを、弁護士でない者に禁じている。民事再生法200条1項は、住宅資金特別条項を定めた再生計画案は再生債務者のみが提出することができると定めており、当社が関与する場面ではない。↩
  2. 196条1号の但書は、建物が二以上ある場合に、再生債務者が主として居住の用に供する一の建物に限ると定める。同号の本文は「個人である再生債務者が所有し」とのみ書いており、所有の形態について、これ以上の限定を条文の側では置いていない。↩
  3. 民事再生法196条の柱書は「この章、第十二章及び第十三章において」と定める。第十二章は簡易再生および同意再生に関する特則、第十三章は小規模個人再生および給与所得者等再生に関する特則である。同じ定義が三つの章にわたって働く。↩
  4. 204条1項本文は、住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可の決定が確定した場合に、保証会社が保証債務を履行していたときはその履行はなかったものとみなすと定める。198条2項が六月という期間を置いているのは、この規定と対応している。↩
  5. 199条5項は、住宅資金特別条項によって権利の変更を受ける者と他の再生債権者との間について155条1項を、住宅資金特別条項について同条3項を、権利の変更を受ける者について160条および165条2項を適用しないと定める。一般の再生債権と同じ扱いから外す規定である。↩
  6. 206条1項は、189条1項2号を理由とする再生計画取消しの申立てについて、同条3項にかかわらず、再生計画の定めによって認められた権利(住宅資金特別条項によって変更された後のものを除く)の全部について裁判所が評価した額の十分の一以上に当たる権利を有する再生債権者に限ると定める。↩

参考文献

一次情報:https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000225

条文でいう「住宅」とは何を指しますか。

民事再生法196条1号は、個人である再生債務者が所有し、自己の居住の用に供する建物であって、その床面積の二分の一以上に相当する部分が専ら自己の居住の用に供されるものをいう、と定めています。但書は、当該建物が二以上ある場合には、これらの建物のうち再生債務者が主として居住の用に供する一の建物に限るとしています。所有していること、居住の用に供していること、二分の一以上という床面積の線が、いずれも条文に書かれた要件です。当てはめは弁護士が行います。

住宅ローンであれば、どれでも対象になりますか。

民事再生法196条3号は、住宅の建設・購入に必要な資金(土地または借地権の取得に必要な資金を含む)もしくは改良に必要な資金の貸付けに係る分割払の定めのある再生債権であって、その債権または保証会社の求償権を担保するための抵当権が住宅に設定されているものを住宅資金貸付債権と定義します。さらに198条1項但書は、住宅の上に53条1項の担保権が存するときなどを除いています。条文の側で範囲が限られている、ということです。

弁済の期間はどこまで延ばせると書かれていますか。

民事再生法199条1項による計画の認可の見込みがない場合について、2項が弁済期を約定最終弁済期から後の日に定める型を用意しています。その2号は、変更後の最終の弁済期が約定最終弁済期から十年を超えないこと、かつ変更後の最終の弁済期における再生債務者の年齢が七十歳を超えないことを要件としています。2項の見込みもない場合の型として3項が元本猶予期間を、4項が権利の変更を受ける者の同意がある場合を定めています。

当社にこの条項の手続を頼めますか。

できません。民事再生法200条1項は、住宅資金特別条項を定めた再生計画案は再生債務者のみが提出することができると定めています。申立てや再生計画案の作成を代理することは弁護士の仕事であり、当社は宅地建物取引業者として売買の媒介と売却条件の調整を行う立場です。要件に当たるかどうか、認可の見込みがあるかどうかも申し上げません。ご相談がこの領域に入った時点で、判断を述べずに提携する弁護士・司法書士におつなぎしています。

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