条文でいう「住宅」とは何を指しますか。
民事再生法196条1号は、個人である再生債務者が所有し、自己の居住の用に供する建物であって、その床面積の二分の一以上に相当する部分が専ら自己の居住の用に供されるものをいう、と定めています。但書は、当該建物が二以上ある場合には、これらの建物のうち再生債務者が主として居住の用に供する一の建物に限るとしています。所有していること、居住の用に供していること、二分の一以上という床面積の線が、いずれも条文に書かれた要件です。当てはめは弁護士が行います。
要旨
住宅資金特別条項は、民事再生法196条の定義に当たる債権について、198条が定めることができる場合を限り、199条が変更の内容を型ごとに定める仕組みです。199条2項2号には十年・七十歳という数字が置かれています。
キーワード倒産と再建/住宅資金特別条項
「家を残したまま整理できる制度がある」という話を、どこかで見聞きして相談に来られる方があります。多くの場合、制度の名前までは覚えておられません。民事再生法の第十章に置かれているその条項は、条文の上では住宅資金特別条項と呼ばれます。第十章の表題は「住宅資金貸付債権に関する特則」です。
本稿は、この特則が何を対象とし、条文が何を要件として並べているのかを読みます。この制度が使えるかどうか、認可されるかどうかを述べる文章ではありません。申立ては再生債務者が行うもので、その代理は弁護士の仕事です。当社は宅地建物取引業者であり、申立ての代理をしません1。ここで扱うのは、条文に書かれている輪郭だけです。
この特則は、定義から始まります。民事再生法196条が、五つの語を定めています。ここを外すと、以下の条文はすべて空振りになります。
一 住宅 個人である再生債務者が所有し、自己の居住の用に供する建物であって、その床面積の二分の一以上に相当する部分が専ら自己の居住の用に供されるものをいう。ただし、当該建物が二以上ある場合には、これらの建物のうち、再生債務者が主として居住の用に供する一の建物に限る。
三 住宅資金貸付債権 住宅の建設若しくは購入に必要な資金(住宅の用に供する土地又は借地権の取得に必要な資金を含む。)又は住宅の改良に必要な資金の貸付けに係る分割払の定めのある再生債権であって、当該債権又は当該債権に係る債務の保証人(保証を業とする者に限る。以下「保証会社」という。)の主たる債務者に対する求償権を担保するための抵当権が住宅に設定されているものをいう。
一号を分解すると、条件は四つです。個人である再生債務者が所有していること。自己の居住の用に供する建物であること。床面積の二分の一以上が専ら自己の居住の用に供されていること。そして建物が二以上あるときは、主として居住の用に供する一の建物に限られること2。店舗や賃貸部分を含む建物について、この二分の一の線が問題になります。
三号は債権の側の定義です。資金の使途が建設・購入・改良に限られ、土地や借地権の取得資金がそこに含まれる旨が括弧書きで示されています。分割払の定めがあること、そしてその債権または保証会社の求償権を担保する抵当権が住宅に設定されていることが要件に入っています。二号は住宅の敷地を、四号は住宅資金特別条項そのものを定義します。語の対応は用語集に置きました。
197条1項は、住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可の見込みがあると認めるときに、裁判所が再生債務者の申立てにより、相当の期間を定めて抵当権の実行手続の中止を命ずることができると定めます。同条3項は、認可の決定が確定する前でも、再生債務者の申立てにより住宅資金貸付債権の一部の弁済を許可することができるとしています。どちらも裁判所の判断であり、当社が見込みを述べる立場にはありません。
定義に当たったとして、次に198条が「定めることができる場合」を限ります。1項本文は、住宅資金貸付債権については再生計画において住宅資金特別条項を定めることができるとしたうえで、括弧書きで、民法499条により代位した再生債権者(弁済をするについて正当な利益を有していた者に限る)が代位により有するものを除いています。
そして1項但書が二つの場合を外します。住宅の上に53条1項の担保権(196条3号の抵当権を除く)が存するとき。そして住宅以外の不動産にも同号の抵当権が設定されている場合において、その不動産の上に、その抵当権に後れる53条1項の担保権が存するとき。住宅に別の担保が付いているかどうかが、条文の上で分かれ目に置かれています。
2項には期間が書かれています。保証会社が住宅資金貸付債権に係る保証債務を履行した場合、その全部を履行した日から六月を経過する日までの間に再生手続開始の申立てがされたときは、204条1項本文により住宅資金貸付債権を有することとなる者の権利について特別条項を定めることができる。3項は、対象となる債権者が数人あるときは全員を対象として定めなければならないとします3。
199条は、条項の中身を定めます。1項は原則型で、認可の決定の確定時までに弁済期が到来する元本などは一般弁済期間内に支払い、確定時までに弁済期が到来しない元本と確定後の約定利息は、債務の不履行がない場合についての弁済の時期および額に関する約定に従って支払う、という組み立てです。1項による計画の認可の見込みがない場合に2項が、2項の見込みもない場合に3項が用意されています。
2項は、弁済期を約定最終弁済期から後の日に定める型です。要件が三つ並び、そのうち2号が数字を持っています。変更後の最終の弁済期が約定最終弁済期から十年を超えないこと。かつ、変更後の最終の弁済期における再生債務者の年齢が七十歳を超えないこと。3項は、一般弁済期間の範囲内で定める元本猶予期間中は元本の一部と約定利息のみを支払うものとすることができる型です。4項は、権利の変更を受ける者の同意がある場合の例外を置いています。
202条1項は、可決された場合には次項の場合を除いて認可の決定をする、と定めます。2項が不認可の事由を四つ挙げ、そのうち2号は再生計画が遂行可能であると認めることができないとき、3号は再生債務者が住宅の所有権または住宅の用に供されている土地を住宅の所有のために使用する権利を失うこととなると見込まれるときです。条文は、家を保てないと見込まれる場合を不認可の側に置いています。
認可の決定が確定した後の効果も、条文に書かれています。203条2項は、特別条項によって変更された後の権利については、特別条項において期限の利益の喪失についての定めその他の住宅資金貸付契約における定めと同一の定めがされたものとみなすとしています。約定が消えるのではなく、変更後の権利にそのまま乗り移るという書き方です。返済が続くことを前提にした制度である、ということが条文から読み取れます。
203条1項は、住宅および敷地の抵当権と、権利の変更を受けた者が再生債務者の保証人その他共に債務を負担する者に対して有する権利について、177条2項の規定を適用しないと定めます。ただし再生債務者が連帯債務者の一人であるときは、特別条項による期限の猶予は他の連帯債務者に対しても効力を有します。204条1項は、保証会社が保証債務を履行していたときは、その履行はなかったものとみなすと定めています。
注
参考文献
この記事のよくある質問
民事再生法196条1号は、個人である再生債務者が所有し、自己の居住の用に供する建物であって、その床面積の二分の一以上に相当する部分が専ら自己の居住の用に供されるものをいう、と定めています。但書は、当該建物が二以上ある場合には、これらの建物のうち再生債務者が主として居住の用に供する一の建物に限るとしています。所有していること、居住の用に供していること、二分の一以上という床面積の線が、いずれも条文に書かれた要件です。当てはめは弁護士が行います。
民事再生法196条3号は、住宅の建設・購入に必要な資金(土地または借地権の取得に必要な資金を含む)もしくは改良に必要な資金の貸付けに係る分割払の定めのある再生債権であって、その債権または保証会社の求償権を担保するための抵当権が住宅に設定されているものを住宅資金貸付債権と定義します。さらに198条1項但書は、住宅の上に53条1項の担保権が存するときなどを除いています。条文の側で範囲が限られている、ということです。
民事再生法199条1項による計画の認可の見込みがない場合について、2項が弁済期を約定最終弁済期から後の日に定める型を用意しています。その2号は、変更後の最終の弁済期が約定最終弁済期から十年を超えないこと、かつ変更後の最終の弁済期における再生債務者の年齢が七十歳を超えないことを要件としています。2項の見込みもない場合の型として3項が元本猶予期間を、4項が権利の変更を受ける者の同意がある場合を定めています。
できません。民事再生法200条1項は、住宅資金特別条項を定めた再生計画案は再生債務者のみが提出することができると定めています。申立てや再生計画案の作成を代理することは弁護士の仕事であり、当社は宅地建物取引業者として売買の媒介と売却条件の調整を行う立場です。要件に当たるかどうか、認可の見込みがあるかどうかも申し上げません。ご相談がこの領域に入った時点で、判断を述べずに提携する弁護士・司法書士におつなぎしています。
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