返済ノート

住居確保給付金は何を賄う制度か|要件と期間が置かれている場所を条文で追う

要旨

生活困窮者住居確保給付金が賄うのは家賃相当額であり、住宅ローンの返済ではありません。要件と額と期間は法律本文になく、施行規則に置かれています。ただし条文は住宅の所有権を失った者を対象に含めており、接続する場所は売却の後にあります。

キーワード倒産と再建/住居確保給付金

住宅ローンの返済が止まったとき、相談の場でよく出るのが「何か使える制度はありませんか」という問いです。生活保護までは考えていない、けれど今のままでは持たない。その中間にある方が思い浮かべるのが、生活困窮者自立支援法の枠組みです。この法律の名は、報道や自治体の広報で見かけたことがあるかもしれません。

本稿は、この法律が何を置いたのかを条文から確かめ、そのうち住まいに直接関わる生活困窮者住居確保給付金について、要件と額と期間がどこにどう書かれているかを整理します1。先に書けば、この給付金は家賃相当額を賄う制度として設計されており、住宅ローンの返済に充てるものとしては書かれていません。

都道府県等が行うもの 行うものとする 5条・6条 努めるものとする 7条1項 自立相談支援事業と住居確保給付金は前者
図1 語尾の違いによる二つの層。出典:生活困窮者自立支援法5条1項・6条1項・7条1項。実際にどの事業が置かれているかは自治体により異なるため、この図は条文上の区分を示すにとどまる。

1. 生活困窮者自立支援法が置いた枠組み

まず、この法律がいう生活困窮者が誰を指すのかを確かめます。3条1項は、就労の状況、心身の状況、地域社会との関係性その他の事情により、現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある者と定義しています。「おそれのある」という書き方に注意してください。すでに最低限度の生活を割っている段階ではなく、その手前を対象に含める書き方です。

2条1項は基本理念として、支援が生活困窮者の尊厳の保持を図りつつ、就労の状況、心身の状況、地域社会からの孤立の状況その他の状況に応じて、包括的かつ早期に行われなければならないと定めます。早期という語が条文に入っていることは、この制度の位置を示しています。

事業には二つの層があります。5条1項は、都道府県等が生活困窮者自立相談支援事業を行うものとすると定め、6条1項は住居確保給付金を支給するものとすると定めます。これに対し7条1項は、就労準備支援事業、家計改善支援事業、居住支援事業のうち必要があると認めるものを行うように努めるものとする、という語尾です。相談の窓口と給付金は前者、それ以外は後者という構えになっています2

窓口は市や町にあります。4条1項は、市および福祉事務所を設置する町村が、自立相談支援事業と住居確保給付金の支給を適切に行う責務を有すると定めます。福祉事務所を設置していない町村も、相談に応じ、情報の提供および助言、都道府県との連絡調整、事業の利用の勧奨その他必要な援助を行う事業を行うことができます(11条1項)。

2. 住居確保給付金の要件・額・期間はどこに書かれているか

給付金の定義は法律にあります。

生活困窮者自立支援法3条3項(定義)

この法律において「生活困窮者住居確保給付金」とは、生活困窮者のうち次に掲げるものに対し支給する給付金をいう。

一 離職又はこれに準ずるものとして厚生労働省令で定める事由により経済的に困窮し、居住する住宅の所有権若しくは使用及び収益を目的とする権利を失い、又は現に賃借して居住する住宅の家賃を支払うことが困難となった者であって、就職を容易にするため住居を確保する必要があると認められるもの

二 収入が著しく減少したと認められるものとして厚生労働省令で定める事由により経済的に困窮し、居住する住宅の所有権若しくは使用及び収益を目的とする権利を失い、又は現に賃借して居住する住宅の家賃を支払うことが困難となった者であって、家計を改善するため新たな住居を確保する必要があると認められるもの(前号に掲げる者を除く。)

読み取れることが二つあります。第一に、対象には住宅の所有権を失った者が明示的に含まれているということ。賃借人だけの制度ではありません。第二に、それでも支給されるのは家賃または新たな住居の確保に要する費用であって、失う前の住宅ローンではないということです。

要件と額と期間は、法律ではなく厚生労働省令に置かれています(6条2項)。生活困窮者自立支援法施行規則がその省令です。同規則10条は、対象となる生活困窮者を五つの号すべてに該当する者としています。うち数字が出てくるのは第三号と第四号です。

第三号は収入の要件で、申請日の属する月における世帯収入額が、基準額と、賃借する住宅の一月当たりの家賃の額とを合算した額以下であることを求めます。家賃の額が住宅扶助基準に基づく額を超える場合は、住宅扶助基準に基づく額で頭打ちになります。ここでいう基準額とは、地方税法の規定による市町村民税(所得割を除く)が課されていない者の収入の額を12で除して得た額です3

収入の要件 規則10条3号イ 世帯収入額が 基準額+家賃額以下 家賃額は住宅扶助基準まで 資産の要件 規則10条4号 世帯の金融資産が 基準額の6倍以下 100万円を超えない
図2 二つの数値要件。出典:生活困窮者自立支援法施行規則10条3号・4号。基準額は市町村や年度により異なるため、具体的な金額はこの図に含めていない。

第四号は資産の要件です。申請日における本人および同一世帯の者が所有する金融資産の合計額が、基準額に六を乗じて得た額以下であること。ただしその額が100万円を超える場合は100万円とされます。上限が二重に置かれている書き方です。

額は規則11条1項1号にあります。世帯収入額が基準額以下の場合は家賃の額そのまま、基準額を超える場合は、基準額と家賃の額を合算した額から世帯収入額を差し引いた額。いずれも住宅扶助基準に基づく額を超えるときは、そこで頭打ちになります。100円未満の端数は100円に切り上げます(同条2項)。

期間は規則12条1項です。要件に該当する場合は3月間支給し、支給期間中も要件に該当し、引き続き支給することがその者の就職の促進に必要と認められるときは、3月ごとに9月までの範囲内で都道府県等が定める期間とすることができます。上限は9月です。疾病または負傷により求職活動の要件を満たさなくなった後の再開についても、合算して9月を超えない範囲とされています(同条2項)。

3月間の支給 3月ごとに延長 9月まで 規則12条1項 同項ただし書 都道府県等が定める
図3 支給期間の枠。出典:生活困窮者自立支援法施行規則12条1項。目盛りの間隔は月数の比率ではなく、延長が認められるかどうかは都道府県等の判断による。

3. 住まいを手放したあと、この制度がどこで接続するか

ここまでを踏まえると、住宅ローンを返している段階でこの給付金が直接効く場面は限られます。支給されるのは家賃相当額だからです。それでも条文を読む値打ちがあるのは、接続する場所が売却の後にあるからです。

3条3項1号は、居住する住宅の所有権を失った者を対象に含めています。売却や競売で家を出た後、賃貸住宅に移る局面は、条文の文言の上ではこの制度の射程に入り得ます。実際に該当するかどうかは規則10条の五つの号すべてを満たすかによりますが、少なくとも「持ち家だったから対象外」という条文にはなっていません。段階ごとに何が動くかは今どこにいるかに整理しました。

もうひとつ、規則11条1項2号が定める給付があります。3条3項2号に当たる場合、すなわち収入が著しく減少したことにより新たな住居を確保する必要が認められる場合に、新たな住居の確保に要する費用が支給されます。上限は、新たに確保する住居が所在する市町村における住宅扶助基準に基づく額に三を乗じて得た額です。一月ごとの支給ではなく、確保の際に支給される形です。

受け取り方にも定めがあります。規則17条は、受給者が居住する、または居住しようとする住宅の賃貸人が、受給者に代わって給付金を受領し、その有する賃料に係る債権の弁済に充てるものとしています。現金が本人の手元を通らない仕組みです。

受給者 住居確保給付金 都道府県等 市等が支給する 賃貸人 代理受領 申請と決定 給付金の支払 賃料に充てる
図4 代理受領の流れ。出典:生活困窮者自立支援法施行規則17条本文。クレジットカードによる支払など、規則が例外として挙げる場合はこの図に含めていない。

不支給と再支給の制限も条文にあります。正当な理由がなく就労支援に関する都道府県等の指示に従わない場合、家賃相当額の支給は行われません(規則15条1項)。期間の定めのない労働契約または期間の定めが6月以上の労働契約により就職し、収入額が基準額と家賃の額を合算した額を超えたときも同様です(同条2項)。また一度支給を受けた者への再支給は、規則16条が挙げる場合を除いて行われません。

  • 賄うのは家賃相当額。ローンの返済ではない
  • 3月から始まり、上限は9月
  • 窓口は市・町。要件は省令に置かれている
先に申し上げること この給付金を受けられるかどうかを、当社が判定することはできません。支給を決めるのは生活困窮者自立支援法4条にいう市等または都道府県であり、要件の当てはめは窓口の仕事です。当社は宅地建物取引業者ですので、申請の代行も、見通しの提示もしません。制度の利用については、お住まいの市や町の自立相談支援の窓口にお尋ねください4
小括 生活困窮者自立支援法は、最低限度の生活を維持できなくなるおそれのある段階を対象に含め、相談の窓口と住居確保給付金を必須の事業として置いています。給付金が賄うのは家賃相当額であり、住宅ローンの返済ではありません。ただし3条3項1号は住宅の所有権を失った者を対象に含めており、接続する場所は売却の後にあります。要件と額と期間は法律ではなく施行規則に置かれているため、条文だけを読んでも全体は見えません。ほかにどのような手が並んでいるかは任意売却以外の選択肢を、当社の役割と限界は私たちの立場をご覧ください。

  1. 本稿でいう規則は、生活困窮者自立支援法施行規則(平成二十七年厚生労働省令第十六号)を指す。同法6条2項が、給付金の額および支給期間その他必要な事項を厚生労働省令に委ねている。
  2. 生活困窮者自立支援法7条4項は、就労準備支援事業または家計改善支援事業を行うに当たり、これらの事業と自立相談支援事業を一体的に行う体制を確保するものとしている。努力義務とされた事業についても、実施する場合の体制は条文で方向づけられている。
  3. 同規則4条1号イは「基準額」の語をこの意味で定義しており、以降の条文はこれを引いている。あわせて同号イは、昭和三十八年四月一日厚生省告示第百五十八号による住宅扶助基準に基づく額を「住宅扶助基準に基づく額」と定義している。生活保護の基準が、生活保護以外の制度の要件を測る目盛りとしても使われている。
  4. 弁護士法72条は、報酬を得る目的で法律事件に関して法律事務を取り扱うことを弁護士でない者に禁じている。当社は宅地建物取引業者として売買の媒介と売却条件の調整を行い、法律の判断を要する事項は提携する弁護士・司法書士におつなぎしている。

参考文献

一次情報:https://laws.e-gov.go.jp/law/425AC0000000105

住居確保給付金を、住宅ローンの返済に充てられますか。

生活困窮者自立支援法施行規則11条1項1号が定める支給額は、賃借する住宅の一月当たりの家賃の額を基礎に算定されます。同法3条3項も「家賃を支払うことが困難となった者」や「新たな住居を確保する必要があると認められるもの」を対象として書いており、住宅ローンの返済を賄う制度としては規定されていません。制度の利用については、お住まいの市や町の窓口にご確認ください。

支給される期間は、どれくらいですか。

施行規則12条1項は、要件に該当する場合に3月間の支給を行うと定めています。支給期間中も要件に該当し、引き続き支給することがその者の就職の促進に必要と認められるときは、3月ごとに9月までの範囲内で都道府県等が定める期間とすることができます。上限は9月です。疾病または負傷により求職活動の要件を満たさなくなった後に再び支給する場合も、合算して9月を超えない範囲とされています(同条2項)。

収入や資産の要件は、いくらですか。

金額そのものは市町村や年度により異なります。施行規則10条3号は、申請日の属する月の世帯収入額が、基準額と家賃の額(住宅扶助基準に基づく額が上限)を合算した額以下であることを求めます。基準額とは、地方税法による市町村民税(所得割を除く)が課されていない者の収入の額を12で除して得た額です。同条4号は、世帯の金融資産の合計額が基準額に六を乗じて得た額以下で、かつ100万円を超えないことを求めています。

家を手放した後でも、この制度は使えますか。

生活困窮者自立支援法3条3項1号は、対象に「居住する住宅の所有権若しくは使用及び収益を目的とする権利を失い」た者を含めています。持ち家だったことを理由に一律で外す書き方にはなっていません。ただし実際に支給されるかは施行規則10条が挙げる五つの号すべてに該当するかによりますし、判断するのは同法4条にいう市等または都道府県です。当社は見通しを申し上げません。

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