住居確保給付金を、住宅ローンの返済に充てられますか。
生活困窮者自立支援法施行規則11条1項1号が定める支給額は、賃借する住宅の一月当たりの家賃の額を基礎に算定されます。同法3条3項も「家賃を支払うことが困難となった者」や「新たな住居を確保する必要があると認められるもの」を対象として書いており、住宅ローンの返済を賄う制度としては規定されていません。制度の利用については、お住まいの市や町の窓口にご確認ください。
要旨
生活困窮者住居確保給付金が賄うのは家賃相当額であり、住宅ローンの返済ではありません。要件と額と期間は法律本文になく、施行規則に置かれています。ただし条文は住宅の所有権を失った者を対象に含めており、接続する場所は売却の後にあります。
キーワード倒産と再建/住居確保給付金
住宅ローンの返済が止まったとき、相談の場でよく出るのが「何か使える制度はありませんか」という問いです。生活保護までは考えていない、けれど今のままでは持たない。その中間にある方が思い浮かべるのが、生活困窮者自立支援法の枠組みです。この法律の名は、報道や自治体の広報で見かけたことがあるかもしれません。
本稿は、この法律が何を置いたのかを条文から確かめ、そのうち住まいに直接関わる生活困窮者住居確保給付金について、要件と額と期間がどこにどう書かれているかを整理します1。先に書けば、この給付金は家賃相当額を賄う制度として設計されており、住宅ローンの返済に充てるものとしては書かれていません。
まず、この法律がいう生活困窮者が誰を指すのかを確かめます。3条1項は、就労の状況、心身の状況、地域社会との関係性その他の事情により、現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある者と定義しています。「おそれのある」という書き方に注意してください。すでに最低限度の生活を割っている段階ではなく、その手前を対象に含める書き方です。
2条1項は基本理念として、支援が生活困窮者の尊厳の保持を図りつつ、就労の状況、心身の状況、地域社会からの孤立の状況その他の状況に応じて、包括的かつ早期に行われなければならないと定めます。早期という語が条文に入っていることは、この制度の位置を示しています。
事業には二つの層があります。5条1項は、都道府県等が生活困窮者自立相談支援事業を行うものとすると定め、6条1項は住居確保給付金を支給するものとすると定めます。これに対し7条1項は、就労準備支援事業、家計改善支援事業、居住支援事業のうち必要があると認めるものを行うように努めるものとする、という語尾です。相談の窓口と給付金は前者、それ以外は後者という構えになっています2。
窓口は市や町にあります。4条1項は、市および福祉事務所を設置する町村が、自立相談支援事業と住居確保給付金の支給を適切に行う責務を有すると定めます。福祉事務所を設置していない町村も、相談に応じ、情報の提供および助言、都道府県との連絡調整、事業の利用の勧奨その他必要な援助を行う事業を行うことができます(11条1項)。
給付金の定義は法律にあります。
この法律において「生活困窮者住居確保給付金」とは、生活困窮者のうち次に掲げるものに対し支給する給付金をいう。
一 離職又はこれに準ずるものとして厚生労働省令で定める事由により経済的に困窮し、居住する住宅の所有権若しくは使用及び収益を目的とする権利を失い、又は現に賃借して居住する住宅の家賃を支払うことが困難となった者であって、就職を容易にするため住居を確保する必要があると認められるもの
二 収入が著しく減少したと認められるものとして厚生労働省令で定める事由により経済的に困窮し、居住する住宅の所有権若しくは使用及び収益を目的とする権利を失い、又は現に賃借して居住する住宅の家賃を支払うことが困難となった者であって、家計を改善するため新たな住居を確保する必要があると認められるもの(前号に掲げる者を除く。)
読み取れることが二つあります。第一に、対象には住宅の所有権を失った者が明示的に含まれているということ。賃借人だけの制度ではありません。第二に、それでも支給されるのは家賃または新たな住居の確保に要する費用であって、失う前の住宅ローンではないということです。
要件と額と期間は、法律ではなく厚生労働省令に置かれています(6条2項)。生活困窮者自立支援法施行規則がその省令です。同規則10条は、対象となる生活困窮者を五つの号すべてに該当する者としています。うち数字が出てくるのは第三号と第四号です。
第三号は収入の要件で、申請日の属する月における世帯収入額が、基準額と、賃借する住宅の一月当たりの家賃の額とを合算した額以下であることを求めます。家賃の額が住宅扶助基準に基づく額を超える場合は、住宅扶助基準に基づく額で頭打ちになります。ここでいう基準額とは、地方税法の規定による市町村民税(所得割を除く)が課されていない者の収入の額を12で除して得た額です3。
第四号は資産の要件です。申請日における本人および同一世帯の者が所有する金融資産の合計額が、基準額に六を乗じて得た額以下であること。ただしその額が100万円を超える場合は100万円とされます。上限が二重に置かれている書き方です。
額は規則11条1項1号にあります。世帯収入額が基準額以下の場合は家賃の額そのまま、基準額を超える場合は、基準額と家賃の額を合算した額から世帯収入額を差し引いた額。いずれも住宅扶助基準に基づく額を超えるときは、そこで頭打ちになります。100円未満の端数は100円に切り上げます(同条2項)。
期間は規則12条1項です。要件に該当する場合は3月間支給し、支給期間中も要件に該当し、引き続き支給することがその者の就職の促進に必要と認められるときは、3月ごとに9月までの範囲内で都道府県等が定める期間とすることができます。上限は9月です。疾病または負傷により求職活動の要件を満たさなくなった後の再開についても、合算して9月を超えない範囲とされています(同条2項)。
ここまでを踏まえると、住宅ローンを返している段階でこの給付金が直接効く場面は限られます。支給されるのは家賃相当額だからです。それでも条文を読む値打ちがあるのは、接続する場所が売却の後にあるからです。
3条3項1号は、居住する住宅の所有権を失った者を対象に含めています。売却や競売で家を出た後、賃貸住宅に移る局面は、条文の文言の上ではこの制度の射程に入り得ます。実際に該当するかどうかは規則10条の五つの号すべてを満たすかによりますが、少なくとも「持ち家だったから対象外」という条文にはなっていません。段階ごとに何が動くかは今どこにいるかに整理しました。
もうひとつ、規則11条1項2号が定める給付があります。3条3項2号に当たる場合、すなわち収入が著しく減少したことにより新たな住居を確保する必要が認められる場合に、新たな住居の確保に要する費用が支給されます。上限は、新たに確保する住居が所在する市町村における住宅扶助基準に基づく額に三を乗じて得た額です。一月ごとの支給ではなく、確保の際に支給される形です。
受け取り方にも定めがあります。規則17条は、受給者が居住する、または居住しようとする住宅の賃貸人が、受給者に代わって給付金を受領し、その有する賃料に係る債権の弁済に充てるものとしています。現金が本人の手元を通らない仕組みです。
不支給と再支給の制限も条文にあります。正当な理由がなく就労支援に関する都道府県等の指示に従わない場合、家賃相当額の支給は行われません(規則15条1項)。期間の定めのない労働契約または期間の定めが6月以上の労働契約により就職し、収入額が基準額と家賃の額を合算した額を超えたときも同様です(同条2項)。また一度支給を受けた者への再支給は、規則16条が挙げる場合を除いて行われません。
注
参考文献
この記事のよくある質問
生活困窮者自立支援法施行規則11条1項1号が定める支給額は、賃借する住宅の一月当たりの家賃の額を基礎に算定されます。同法3条3項も「家賃を支払うことが困難となった者」や「新たな住居を確保する必要があると認められるもの」を対象として書いており、住宅ローンの返済を賄う制度としては規定されていません。制度の利用については、お住まいの市や町の窓口にご確認ください。
施行規則12条1項は、要件に該当する場合に3月間の支給を行うと定めています。支給期間中も要件に該当し、引き続き支給することがその者の就職の促進に必要と認められるときは、3月ごとに9月までの範囲内で都道府県等が定める期間とすることができます。上限は9月です。疾病または負傷により求職活動の要件を満たさなくなった後に再び支給する場合も、合算して9月を超えない範囲とされています(同条2項)。
金額そのものは市町村や年度により異なります。施行規則10条3号は、申請日の属する月の世帯収入額が、基準額と家賃の額(住宅扶助基準に基づく額が上限)を合算した額以下であることを求めます。基準額とは、地方税法による市町村民税(所得割を除く)が課されていない者の収入の額を12で除して得た額です。同条4号は、世帯の金融資産の合計額が基準額に六を乗じて得た額以下で、かつ100万円を超えないことを求めています。
生活困窮者自立支援法3条3項1号は、対象に「居住する住宅の所有権若しくは使用及び収益を目的とする権利を失い」た者を含めています。持ち家だったことを理由に一律で外す書き方にはなっていません。ただし実際に支給されるかは施行規則10条が挙げる五つの号すべてに該当するかによりますし、判断するのは同法4条にいう市等または都道府県です。当社は見通しを申し上げません。
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