返済ノート

主債務者が破産したとき、保証人はどうなるか|破産法253条2項・民法448条

要旨

破産法253条1項は、免責許可の決定が確定したときは破産者が破産債権について責任を免れると定めます。同条2項は、その決定が保証人に対する債権者の権利に影響を及ぼさないと定めます。免責は保証人には及びません。

キーワード倒産と再建/保証

住宅ローンの契約書に、家族の名前が書かれていることがあります。連帯保証人の欄に親の署名がある。あるいは、独立した子が保証人になっている。契約のときは形式的な手続に見えたその署名が、主債務者について破産手続が始まったときに、はっきりとした意味を持ちはじめます。

破産法253条1項は、免責許可の決定が確定したときは、破産者は破産債権についてその責任を免れると定めます。ところが同条2項は、その決定が保証人に対する債権者の権利に影響を及ぼさないと書いています。免責は、保証人には及びません。本稿は、この結論がどの条文の組み合わせから出てくるのかを確かめます。誰かの落ち度を述べるためではなく、条文がそう書かれているという事実を、書かれているとおりに置くためです1

主債務者 免責許可の決定 債権者 金融機関・保証会社 保証人 家族であることが多い 責任を免れる 請求は残る 求償権
図1 免責許可の決定が確定した後の三者の位置。出典:破産法253条1項2項、民法459条1項・499条。矢印は権利の向きを示すもので、金額や時間の前後を表すものではない。

1. 保証債務が主債務とどうつながっているか

まず、保証という制度の形を確かめます。民法446条1項は、保証人は主たる債務者がその債務を履行しないときにその履行をする責任を負うと定めます。同条2項により、保証契約は書面でしなければ効力を生じません。署名を求められるのは、この形式の要求があるためです。

保証債務の広さは447条1項が定めます。保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含します。元本だけではありません。滞納が続いた後に生じた遅延損害金も、この「従たるもの」に含まれます。

保証債務の範囲 主たる債務の元本 利息 遅延損害金 民法447条1項 従たるものも含む ※ 区分を示す図であり、金額の割合を表すものではない。
図2 保証債務が包含する範囲。出典:民法447条1項。帯の幅は説明のための区切りであり、実際の元本と利息の比率を示すものではない。

他方で、保証人の負担には上限が置かれています。

民法448条(保証人の負担と主たる債務の目的又は態様)

保証人の負担が債務の目的又は態様において主たる債務より重いときは、これを主たる債務の限度に減縮する。

2 主たる債務の目的又は態様が保証契約の締結後に加重されたときであっても、保証人の負担は加重されない。

1項は、保証債務が主債務より重くならないことを定めます。2項は、契約の後に主債務が加重されても保証人の負担は増えないとします。保証債務は主債務に付き従い、それを超えない。この性質は、457条にも現れています。主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予および更新は保証人に対しても効力を生じ(同条1項)、保証人は主たる債務者が主張することができる抗弁をもって債権者に対抗することができます(同条2項)。

ここまで読むと、主債務者が免責を受ければ保証人も同じ扱いを受けるように思えます。ところが、その道は条文で明示的に塞がれています。

2. 破産法253条2項が置いている線

免責の効力を定めるのが破産法253条です。

破産法253条(免責許可の決定の効力等)

免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。

2 免責許可の決定は、破産債権者が破産者の保証人その他破産者と共に債務を負担する者に対して有する権利及び破産者以外の者が破産債権者のために供した担保に影響を及ぼさない。

1項の書き方をまず見てください。「その責任を免れる」とあります。債権が消滅すると書かれているのではなく、責任を免れると書かれている。そのうえで但書が七つの請求権を除外しています。租税等の請求権、悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権、故意または重大な過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権などです2

そして2項です。免責許可の決定は、債権者が保証人その他共に債務を負担する者に対して有する権利に影響を及ぼさない。民法457条2項が保証人に認める抗弁の援用は、この場面では働きません。免責が保証人に及ばないことを、破産法が正面から書いているからです。あわせて2項後段は、破産者以外の者が債権者のために供した担保にも影響を及ぼさないとしています。親の土地に抵当権が設定されている場合、その抵当権も残ります。

破産者について 破産法253条1項 責任を免れる 配当を除く破産債権 ただし但書の除外あり 保証人について 破産法253条2項 権利に影響しない 物上保証も同じ 担保にも影響しない
図3 免責の効果が及ぶ範囲。出典:破産法253条1項2項。除外される請求権の内容は同条1項各号にあり、この図には含めていない。

3. 保証人の側に、順に何が起きるか

次に、時間の順で追います。起点は民法137条です。同条1号は、債務者が破産手続開始の決定を受けたときは期限の利益を主張することができないと定めます。主債務は、分割払いの状態ではなくなります。そこから保証人への請求は、残額の全体を対象とする形になります。

このとき、通知についての規定があります。民法458条の3第1項は、主たる債務者が期限の利益を喪失したときは、債権者は保証人に対し、その喪失を知った時から二箇月以内にその旨を通知しなければならないと定めます。同条2項は、その期間内に通知をしなかったときは、債権者は、喪失の時から通知を現にするまでに生じた遅延損害金に係る保証債務の履行を請求することができないとします。二箇月という期間と、その効果が条文に書かれています。ただし同条3項により、保証人が法人である場合には適用されません。

保証人が請求に応じて弁済すると、求償権が生じます。委託を受けた保証人であれば民法459条1項が根拠になり、弁済をした者は債権者に代位します(同法499条)。ただし、その求償権の相手は破産手続の中にいます。破産法104条3項は、破産者に対して将来行うことがある求償権を有する者はその全額について破産手続に参加することができるとし、ただし債権者が破産手続に参加したときはこの限りでないとしています。求償権は破産債権として扱われ、免責の対象に入りうる位置にあります3

免責許可の決定 主債務者 責任を免れる 保証人 債務は残る 同じ決定が、二人に別々の結果をもたらす
図4 免責許可の決定から分かれる二つの結果。出典:破産法253条1項2項。それぞれの後にどれだけの負担が残るかは事案により、この図は方向のみを示す。

生活の側に置き直すと、次のことが言えます。主債務者について手続が終わっても、保証人になった家族の側では、そこから話が始まる場合があります。保証人自身の返済能力、保証人が住んでいる家、保証人の年齢と収入。これらは主債務者の手続とは別の問題として立ちます。そして保証人の側にも、条文の上ではいくつかの制度が並んでいます。どのような並びがあるかは任意売却以外の選択肢にまとめました。

制度がこう組み立てられているのは、保証という制度が、主債務者が払えなくなった場合に備えるためのものだからです。主債務者が払えなくなったまさにその場面で保証人の債務も消えるとすれば、保証を求めた意味がなくなります。253条2項は、その筋を条文にしたものです。誰かが判断を誤ったからこうなる、という規定ではありません。よくある問いはよくあるご質問に、段階ごとの見取り図は今どこにいるかに置いています。

  • 免責は保証人に及ばない(破産法253条2項)
  • 期限の利益喪失の通知は二箇月以内(民法458条の3)
  • 払った後の求償権も破産手続の中にある
先に申し上げること 保証債務がいくら残るのか、どの範囲まで請求されるのか、時効がどうなっているのかを、当社が判定することはできません。いずれも法律の判断であり、弁護士・司法書士の領域です。また当社は、保証人になった方に対して、払うことも払わないことも勧めません。当社にできるのは、不動産の売買に関わる部分について、条件と段取りを整理することまでです。保証債務の話が出た時点で、当社は判断を述べずに提携する弁護士・司法書士におつなぎしています4
小括 保証債務は主債務に付き従い、それより重くはなりません(民法448条)。しかし破産法253条2項は、免責許可の決定が保証人に対する債権者の権利に影響を及ぼさないと定めており、民法457条2項の抗弁によってこの結論を動かすことはできません。主債務者について手続が終わっても、保証人の債務は残り、弁済して得た求償権もまた破産手続の中に置かれます。本稿は条文の対応関係を追ったにとどまり、個別の事案で残る金額や、とりうる手を示すものではありません。当社の役割と限界は私たちの立場に書いています。

  1. 本稿は主債務者について破産手続が開始した場合を扱う。保証人自身について破産手続開始の決定があった場合には、破産法105条により、債権者は破産手続開始の時において有する債権の全額について保証人の破産手続に参加することができる。
  2. 破産法253条1項の但書は七号まで置かれており、租税等の請求権、不法行為に基づく一定の損害賠償請求権、夫婦間の協力扶助の義務や子の監護に関する義務などに係る請求権、雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権、破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権、罰金等の請求権が並ぶ。
  3. 破産法104条2項は、他の全部の履行をする義務を負う者が破産手続開始後に弁済等をしたときであっても、債権の全額が消滅した場合を除き、債権者は開始時に有する債権の全額について権利を行使することができるとする。同条4項は、求償権を有する者が代位して権利を行使できるのは債権の全額が消滅した場合に限るとしている。同条5項により、これらは物上保証人にも準用される。
  4. 弁護士法72条は、報酬を得る目的で法律事件に関して法律事務を取り扱うことを弁護士でない者に禁じている。当社は宅地建物取引業者として売買の媒介と売却条件の整理を行い、法律の判断を要する事項は提携する弁護士・司法書士におつなぎしている。

参考文献

一次情報:https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000075

主債務者が免責を受ければ、保証人の債務も消えますか。

破産法253条2項は、免責許可の決定は、破産債権者が破産者の保証人その他破産者と共に債務を負担する者に対して有する権利、および破産者以外の者が破産債権者のために供した担保に影響を及ぼさないと定めています。民法457条2項は、保証人が主たる債務者の主張しうる抗弁をもって債権者に対抗できるとしていますが、免責については破産法が正面から別を定めている形です。個別の判断は弁護士にご確認ください。

主債務者の破産で、保証人への請求はいつから始まりますか。

民法137条1号は、債務者が破産手続開始の決定を受けたときは期限の利益を主張することができないと定めています。主債務が分割払いの状態でなくなるため、保証人に対する請求も残額の全体を対象とする形になります。もっとも、実際に請求が届く時期や書面の内容は債権者により異なります。手元の通知に書かれた日付と、そこに示された金額の内訳を確かめることが出発点になります。

期限の利益を失ったことは、保証人に知らされますか。

民法458条の3第1項は、主たる債務者が期限の利益を喪失したときは、債権者は保証人に対し、その利益の喪失を知った時から二箇月以内にその旨を通知しなければならないと定めています。同条2項は、その期間内に通知をしなかったときは、債権者は、喪失の時から通知を現にするまでに生じた遅延損害金に係る保証債務の履行を請求することができないとします。ただし同条3項により、保証人が法人である場合には適用されません。

保証人が払ったら、主債務者に返してもらえますか。

委託を受けた保証人は民法459条1項により求償権を取得し、弁済をした者は債権者に代位します(同法499条)。ただし主債務者が破産手続の中にいる場合、その求償権は破産債権として扱われる位置にあります。破産法104条3項は、将来行うことがある求償権を有する者はその全額について破産手続に参加することができるとし、債権者が参加したときはこの限りでないとしています。回収の見込みについて当社は判断を述べません。

この記事で解決しないことは、お電話で。

いまどの段階にいるかは 今どこにいるか、 当社のできないことは 私たちの立場 に書いてあります。

お電話でのご相談0538-31-3308受付 9:00–17:00(土日祝を除く)

時間外も、できるかぎりお受けします。出られなかったときは、フォームかLINEにご用件を残してください。翌営業日にこちらからご連絡します。

LINEでのご相談はこちら(富士ヶ丘サービス共通の窓口です)

富士ヶ丘サービス株式会社/宅地建物取引士 大石浩之(静岡県知事 第027186号)。 記事の内容は執筆時点の法令・公表資料にもとづきます。 個別の事案の見通しを示すものではありません。

電話で相談無料相談時間外もできるかぎり出ます