主債務者が免責を受ければ、保証人の債務も消えますか。
破産法253条2項は、免責許可の決定は、破産債権者が破産者の保証人その他破産者と共に債務を負担する者に対して有する権利、および破産者以外の者が破産債権者のために供した担保に影響を及ぼさないと定めています。民法457条2項は、保証人が主たる債務者の主張しうる抗弁をもって債権者に対抗できるとしていますが、免責については破産法が正面から別を定めている形です。個別の判断は弁護士にご確認ください。
要旨
破産法253条1項は、免責許可の決定が確定したときは破産者が破産債権について責任を免れると定めます。同条2項は、その決定が保証人に対する債権者の権利に影響を及ぼさないと定めます。免責は保証人には及びません。
キーワード倒産と再建/保証
住宅ローンの契約書に、家族の名前が書かれていることがあります。連帯保証人の欄に親の署名がある。あるいは、独立した子が保証人になっている。契約のときは形式的な手続に見えたその署名が、主債務者について破産手続が始まったときに、はっきりとした意味を持ちはじめます。
破産法253条1項は、免責許可の決定が確定したときは、破産者は破産債権についてその責任を免れると定めます。ところが同条2項は、その決定が保証人に対する債権者の権利に影響を及ぼさないと書いています。免責は、保証人には及びません。本稿は、この結論がどの条文の組み合わせから出てくるのかを確かめます。誰かの落ち度を述べるためではなく、条文がそう書かれているという事実を、書かれているとおりに置くためです1。
まず、保証という制度の形を確かめます。民法446条1項は、保証人は主たる債務者がその債務を履行しないときにその履行をする責任を負うと定めます。同条2項により、保証契約は書面でしなければ効力を生じません。署名を求められるのは、この形式の要求があるためです。
保証債務の広さは447条1項が定めます。保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含します。元本だけではありません。滞納が続いた後に生じた遅延損害金も、この「従たるもの」に含まれます。
他方で、保証人の負担には上限が置かれています。
保証人の負担が債務の目的又は態様において主たる債務より重いときは、これを主たる債務の限度に減縮する。
2 主たる債務の目的又は態様が保証契約の締結後に加重されたときであっても、保証人の負担は加重されない。
1項は、保証債務が主債務より重くならないことを定めます。2項は、契約の後に主債務が加重されても保証人の負担は増えないとします。保証債務は主債務に付き従い、それを超えない。この性質は、457条にも現れています。主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予および更新は保証人に対しても効力を生じ(同条1項)、保証人は主たる債務者が主張することができる抗弁をもって債権者に対抗することができます(同条2項)。
ここまで読むと、主債務者が免責を受ければ保証人も同じ扱いを受けるように思えます。ところが、その道は条文で明示的に塞がれています。
免責の効力を定めるのが破産法253条です。
免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。
2 免責許可の決定は、破産債権者が破産者の保証人その他破産者と共に債務を負担する者に対して有する権利及び破産者以外の者が破産債権者のために供した担保に影響を及ぼさない。
1項の書き方をまず見てください。「その責任を免れる」とあります。債権が消滅すると書かれているのではなく、責任を免れると書かれている。そのうえで但書が七つの請求権を除外しています。租税等の請求権、悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権、故意または重大な過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権などです2。
そして2項です。免責許可の決定は、債権者が保証人その他共に債務を負担する者に対して有する権利に影響を及ぼさない。民法457条2項が保証人に認める抗弁の援用は、この場面では働きません。免責が保証人に及ばないことを、破産法が正面から書いているからです。あわせて2項後段は、破産者以外の者が債権者のために供した担保にも影響を及ぼさないとしています。親の土地に抵当権が設定されている場合、その抵当権も残ります。
次に、時間の順で追います。起点は民法137条です。同条1号は、債務者が破産手続開始の決定を受けたときは期限の利益を主張することができないと定めます。主債務は、分割払いの状態ではなくなります。そこから保証人への請求は、残額の全体を対象とする形になります。
このとき、通知についての規定があります。民法458条の3第1項は、主たる債務者が期限の利益を喪失したときは、債権者は保証人に対し、その喪失を知った時から二箇月以内にその旨を通知しなければならないと定めます。同条2項は、その期間内に通知をしなかったときは、債権者は、喪失の時から通知を現にするまでに生じた遅延損害金に係る保証債務の履行を請求することができないとします。二箇月という期間と、その効果が条文に書かれています。ただし同条3項により、保証人が法人である場合には適用されません。
保証人が請求に応じて弁済すると、求償権が生じます。委託を受けた保証人であれば民法459条1項が根拠になり、弁済をした者は債権者に代位します(同法499条)。ただし、その求償権の相手は破産手続の中にいます。破産法104条3項は、破産者に対して将来行うことがある求償権を有する者はその全額について破産手続に参加することができるとし、ただし債権者が破産手続に参加したときはこの限りでないとしています。求償権は破産債権として扱われ、免責の対象に入りうる位置にあります3。
生活の側に置き直すと、次のことが言えます。主債務者について手続が終わっても、保証人になった家族の側では、そこから話が始まる場合があります。保証人自身の返済能力、保証人が住んでいる家、保証人の年齢と収入。これらは主債務者の手続とは別の問題として立ちます。そして保証人の側にも、条文の上ではいくつかの制度が並んでいます。どのような並びがあるかは任意売却以外の選択肢にまとめました。
制度がこう組み立てられているのは、保証という制度が、主債務者が払えなくなった場合に備えるためのものだからです。主債務者が払えなくなったまさにその場面で保証人の債務も消えるとすれば、保証を求めた意味がなくなります。253条2項は、その筋を条文にしたものです。誰かが判断を誤ったからこうなる、という規定ではありません。よくある問いはよくあるご質問に、段階ごとの見取り図は今どこにいるかに置いています。
注
参考文献
この記事のよくある質問
破産法253条2項は、免責許可の決定は、破産債権者が破産者の保証人その他破産者と共に債務を負担する者に対して有する権利、および破産者以外の者が破産債権者のために供した担保に影響を及ぼさないと定めています。民法457条2項は、保証人が主たる債務者の主張しうる抗弁をもって債権者に対抗できるとしていますが、免責については破産法が正面から別を定めている形です。個別の判断は弁護士にご確認ください。
民法137条1号は、債務者が破産手続開始の決定を受けたときは期限の利益を主張することができないと定めています。主債務が分割払いの状態でなくなるため、保証人に対する請求も残額の全体を対象とする形になります。もっとも、実際に請求が届く時期や書面の内容は債権者により異なります。手元の通知に書かれた日付と、そこに示された金額の内訳を確かめることが出発点になります。
民法458条の3第1項は、主たる債務者が期限の利益を喪失したときは、債権者は保証人に対し、その利益の喪失を知った時から二箇月以内にその旨を通知しなければならないと定めています。同条2項は、その期間内に通知をしなかったときは、債権者は、喪失の時から通知を現にするまでに生じた遅延損害金に係る保証債務の履行を請求することができないとします。ただし同条3項により、保証人が法人である場合には適用されません。
委託を受けた保証人は民法459条1項により求償権を取得し、弁済をした者は債権者に代位します(同法499条)。ただし主債務者が破産手続の中にいる場合、その求償権は破産債権として扱われる位置にあります。破産法104条3項は、将来行うことがある求償権を有する者はその全額について破産手続に参加することができるとし、債権者が参加したときはこの限りでないとしています。回収の見込みについて当社は判断を述べません。
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