返済ノート

磐田市の線引きと、売れる土地・売れない土地|都市計画法7条・29条・34条

要旨

市街化区域か市街化調整区域かは、登記記録には書かれていません。磐田市は市街化調整区域が市の面積の約8割を占めると公表しています。売却で先に確かめるのは価格ではなく、その土地でどの建築が認められるかです。

キーワード社会と地域/都市計画法/磐田市

磐田市で家を売ろうとするとき、登記事項証明書をどれだけ読んでも分からないことがあります。その土地が市街化区域にあるのか、市街化調整区域にあるのか。登記記録は所在と地番と地目と地積を記録しますが、都市計画の区分までは記録しません。ところが売却の場面では、この区分が買い手の幅に効いてきます。建て替えに許可の要らない土地と、許可の要る土地とでは、買おうとする人の数が変わるからです。

この線は、土地そのものの性質から出てくるものではありません。都市計画として決められた区域の境であり、決めた主体と、決めた時期があります。同じ静岡県の中でも線のある区域とない区域が隣り合っており、隣の市で通用した話が磐田市では通用しないことがあります。

本稿は、磐田市の土地に引かれているこの線が都市計画法のどの条文から来ているのかを確かめ、期限のある売却で売り出す前に確かめておく項目を、条文と公表資料の範囲で並べます。売れる土地と売れない土地を判定するのが目的ではありません。判定の手前で、何を調べておけば話が途中で止まらずに済むのかを整理します1

市街化区域 都計法7条2項 用途地域が定まる 一定規模未満は不要 都計法29条1項1号 市街化調整区域 都計法7条3項 市街化を抑制する 建築に許可が要る 都計法34条・43条
図1 区域区分の二つの側。出典:都市計画法7条2項・3項、29条1項1号、34条、43条。個々の土地がどちらに当たるかを示す図ではなく、条文上の枠組みだけを示すもの。

1. 磐田市の土地に線が引かれているという事実

まず、線があること自体を確かめます。静岡県が定める磐田都市計画区域の整備、開発及び保全の方針は、区域区分の決定の有無について「本都市計画に区域区分を定める。」と書いています。定めるとした根拠も併記されており、工業都市としての集積性が高く市街化圧力が強いと判断されること、無秩序な市街地の拡散を抑制する必要があることが挙げられています。磐田都市計画区域の該当市町は磐田市です。

「定める」という書き方には意味があります。都市計画法7条1項は、区域区分を定めることが「できる」と書いたうえで、ただし書で一定の都市計画区域については定めるものとしています。原則は任意で、例外として義務づけられる区域がある、という組み立てです。線があるかないかは、その土地が都会か田舎かで決まるのではなく、都市計画区域ごとの判断の結果として決まります。都市計画区域の範囲と市町の境界が一致するとも限りません2

市の側の資料も見ます。磐田市は、市街化調整区域が市の全体面積の約8割を占めると公表しています。つまり磐田市で相談を受ける土地は、確率の話ではなく面積の話として、調整区域にある可能性を先に考えておくほうが実際に即しています。もっとも、人が住んでいる土地は市街地に偏りますから、面積の割合をそのまま件数の割合と読むことはできません。

磐田市の土地 市街化区域 用途地域の中 市街化調整区域 市の面積の約8割 登記記録には書かれていない
図2 区分の所在。出典:都市計画法7条、磐田市「市街化調整区域での住宅建築」。約8割は面積の割合であり、土地の件数や取引の件数の割合を表すものではない。

開発行為の許可についても、磐田市が区分ごとの扱いを公表しています。市街化区域(用途地域内)では1,000平方メートル以上の開発行為に許可が要り、市街化調整区域では原則としてすべての開発行為に許可が要り、都市計画区域外では1ヘクタール以上に許可が要る、という並びです。同じ市の中で、規模の物差しが三通りあることになります。

面積の同じ土地でも、どこにあるかで手続が変わります。区分を先に確かめる値打ちは、まずここにあります。

1 市街化区域(用途地域内)は1,000平方メートル以上 2 市街化調整区域は原則としてすべて 3 都市計画区域外は1ヘクタール以上 同じ市の中で物差しが三通りある
図3 許可が要る規模の三区分。出典:磐田市「開発許可制度」。数値は市の公表によるもので、個別の開発行為について要否を判定する図ではない。

もうひとつ、線には引かれた時期があります。都市計画法34条13号は、区域区分に関する都市計画が決定され、あるいは変更されて市街化調整区域が拡張された際に、自己の居住または業務のための建築物を建てる目的で土地の権利を有していた者が、決定または変更の日から六月以内に届け出た場合について、その目的に従った開発行為を認める余地を残しています。線が引かれた日に何を持っていたかが問われる書き方です。

区域区分は土地に貼られた恒久的な札ではなく、ある時点で決められた区域の境だということです。売主の記憶にある「昔は建てられたはずだ」という話と、いま市の記録に残っている扱いが食い違うとき、その差は多くの場合この時間の側にあります。

2. 都市計画法が区域区分に与えている意味

条文にさかのぼります。区域区分そのものは、都市計画法7条が置いています。

都市計画法7条(区域区分)

都市計画区域について無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るため必要があるときは、都市計画に、市街化区域と市街化調整区域との区分(以下「区域区分」という。)を定めることができる。ただし、次に掲げる都市計画区域については、区域区分を定めるものとする。(各号略)

2 市街化区域は、すでに市街地を形成している区域及びおおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域とする。

3 市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域とする。

3項の書き方に注目してください。市街化調整区域は「市街化を抑制すべき区域」であって、建築を禁止する区域とは書かれていません。抑制という言葉が、許可という仕組みにつながります。2項も同じ角度から読めます。市街化区域は「おおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」を含むとされており、線は、いまの街並みを写した線ではありません。

次に29条です。開発行為の許可を求める条文で、ただし書に十一の号が並びます。

都市計画法29条1項(開発行為の許可)

都市計画区域又は準都市計画区域内において開発行為をしようとする者は、あらかじめ(中略)都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、次に掲げる開発行為については、この限りでない。

一 市街化区域、区域区分が定められていない都市計画区域又は準都市計画区域内において行う開発行為で、その規模が、それぞれの区域の区分に応じて政令で定める規模未満であるもの

二 市街化調整区域、区域区分が定められていない都市計画区域又は準都市計画区域内において行う開発行為で、農業、林業若しくは漁業の用に供する政令で定める建築物又はこれらの業務を営む者の居住の用に供する建築物の建築の用に供する目的で行うもの

1号が挙げているのは、市街化区域、区域区分が定められていない都市計画区域、準都市計画区域の三つです。市街化調整区域はここに入っていません。これが、磐田市の公表する「市街化調整区域では原則としてすべての開発行為に許可が要る」という扱いの、条文の側の根拠になります。

除外されているものを見ると、条文の狙いが読めます。2号は、農林漁業の用に供する政令で定める建築物と、これらの業務を営む者の居住の用に供する建築物のための開発行為を、市街化調整区域でも許可の対象から外しています。市街化を抑制すべき区域であっても、そこで営まれている農林漁業まで止める趣旨ではない、ということです3

1 政令で定める規模未満の開発行為(1号) 2 農林漁業用の建築物のための開発行為(2号) 3 公益上必要な建築物のための開発行為(3号) 4 市街化調整区域は1号に入っていない
図4 許可の対象から外されているもの。出典:都市計画法29条1項1号から3号。号の並びを示すもので、個別の開発行為が該当するかどうかを示す図ではない。

そして34条が、市街化調整区域に固有の基準を重ねます。ここは条文の構えを丁寧に見ておく値打ちがあります。33条は、申請に係る開発行為が各号の基準に適合し、その申請の手続が法令に違反していないと認めるときは、都道府県知事は開発許可を「しなければならない」と書いています。要件を満たせば許可する、という書き方です。ところが34条は、その33条に定める要件に該当するほか、各号のいずれかに該当すると認める場合でなければ、開発許可を「してはならない」と書きます。

つまり市街化調整区域では、関門が二つあります。第一は33条の基準で、道路や排水施設の配置、災害の防止、申請者の資力と信用といった、どの区域でも問われる項目です。第二が34条各号で、「そもそもこの区域に建ててよい類型か」を問います。前者を満たしても後者に当たらなければ、許可は出ません。

申請 開発許可を求める 第一の関門 33条の基準 第二の関門 34条各号 許可 両方に通れば どこでも問われる 調整区域だけ
図5 二つの関門の重なり方。出典:都市計画法33条1項、34条本文。審査の日数や難易を表すものではなく、条文の並び方だけを示すもの。

34条各号のうち、11号と12号は都道府県の条例に、14号は開発審査会の議に委ねられており、どこまでが認められるかは条文だけでは閉じていません4。11号は、市街化区域に隣接または近接し、市街化区域と一体的な日常生活圏を構成していると認められる地域のうち、おおむね五十以上の建築物が連たんしている地域で、条例で指定する区域を対象としています。「おおむね五十以上」という数だけが条文にあり、どこがそれに当たるかは条例の側にあります。

売却の場で実際に効いてくるのは、開発行為を伴わない建築を規律する43条のほうです。

都市計画法43条1項(開発許可を受けた土地以外の土地における建築等の制限)

何人も、市街化調整区域のうち開発許可を受けた開発区域以外の区域内においては、都道府県知事の許可を受けなければ、第二十九条第一項第二号若しくは第三号に規定する建築物以外の建築物を新築し、又は第一種特定工作物を新設してはならず、また、建築物を改築し、又はその用途を変更して(中略)建築物としてはならない。(ただし書略)

更地に家を建てる話だけでなく、建っている家を建て替える話がここに入ります。買い手が最初に気にするのは、多くの場合そちらです。同条2項は、この許可の基準を33条および34条に規定する開発許可の基準の例に準じて政令で定めるとしており、開発行為を伴わない建築にも同じ物差しが持ち込まれます。

1項の本文が「第二十九条第一項第二号若しくは第三号に規定する建築物以外の建築物」と書いていることにも注意が要ります。同じ除外が、開発許可の側と建築の側で揃えられているということです。

3. 売り出す前に、どこを確かめるか

では何を調べるのか。磐田市は、市街化調整区域で住宅の建築が例外的に認められる場合を、いくつかの類型に分けて公表しています。適法に確認された既存宅地、線引き前から宅地であった土地で50戸以上の既存集落の中にあるもの、農家住宅や分家住宅、旧豊岡村の野部・広瀬地区を指定大規模既存集落とする制度、JR豊田町駅東側地区における都市計画法34条11号の条例による制度です。適法に建築された建築物の建て替えも、認められる場合があるとされています。

並べて分かるのは、いずれも土地の側の事情ではなく、そこに至る経緯と、その人の立場で決まるということです。線引きの前から宅地だったか。誰が住むために建てるか。集落の中か外か。売主が知っている情報と、市の記録が合っているかどうかを、売り出す前に突き合わせる値打ちがあります。

人で切ると、この点はさらにはっきりします。同じ一筆の土地でも、農業を営む人が自分の住まいを建てる話と、第三者が住まいを建てる話とでは、当たりうる類型が違います。価格を決める前に確かめるべきなのは、この意味での買い手の条件です。

手元にどの書面として現れるかも見ておきます。開発許可を受けた土地であれば、都市計画法47条が開発登録簿への登録を定めており、同条5項は登録簿を常に公衆の閲覧に供するように保管し、請求があったときはその写しを交付しなければならないとしています。所有者でなくとも写しの交付を請求できる書面だということです5

開発許可を受けた区域には、もうひとつ制限が残ります。42条1項は、工事完了の公告があった後、当該開発許可に係る予定建築物等以外の建築物を新築してはならず、改築や用途の変更もできないと定めています。買主の用途で話の進み方が変わりうるということです。

区域区分 建築の可否 買い手の資金 市の窓口 同じ窓口 金融機関 先に 後に
図6 確かめる順序。出典:都市計画法29条・43条。所要日数を表すものではなく、後の項目が前の項目の答えに左右されることを示すもの。

順序が効くのは、後ろの項目が前の項目の答えに左右されるからです。建て替えの可否が分からないまま価格を決めると、買主が資金の相談を始めた段階で話が戻り、その戻りが日程を食います。市町ごとの論点は対応エリアに、段階ごとの残り時間の性質は今どこにいるかに整理しました。売り出しから引渡しまでの段取りは相談から引渡しまでにあります。

最後に、確かめても答えが出ない項目があることを書いておきます。34条11号・12号の条例の適用や、14号の開発審査会の議を経る類型は、事前の相談を重ねてはじめて見通しが立つものです。期限のある売却でいちばん高くつくのは、確かめないまま「たぶん建てられる」と伝えて、あとから覆ることです6

1 市街化区域か市街化調整区域か 2 線引きの前から宅地であったか 3 いま建っている建築物が適法か 4 買主が誰かで結論が変わらないか
図7 売り出す前に確かめる項目。出典:都市計画法34条、磐田市「市街化調整区域での住宅建築」。並びは確認の順序であって、重要度の順ではない。
  • 区域区分の根拠は都市計画法7条にある
  • 区分は登記記録ではなく市の窓口で確かめる
  • 建て替えの可否は経緯と立場で決まる
先に申し上げること 当社が、ある土地について開発許可や建築許可が下りるかどうかを判定することはできません。34条各号への該当性の判断は行政の側にあり、条例や開発審査会の運用にも関わります。当社にできるのは、調べるべき項目を洗い出し、確かめた結果を売却の条件に反映させることまでです7
小括 磐田都市計画区域には区域区分が定められており、市街化調整区域は市の面積の約8割を占めます。都市計画法は7条で区分を置き、29条で開発行為に、43条で開発許可によらない建築に、それぞれ許可を要求しています。市街化調整区域では33条の基準と34条各号という二つの関門が重なり、34条の一部は条例と開発審査会に委ねられています。本稿は制度の枠組みを示したにとどまり、個別の土地の許可の見通しを述べるものではありません。当社の役割と限界は私たちの立場に書いています。

  1. 本稿でいう線引きは、都市計画法7条1項にいう区域区分の通称である。同項は区域区分を定めることが「できる」と書き、ただし書で一定の都市計画区域については定めるものとしている。条文にこの語はない。
  2. 都市計画区域は市町の区域とは別に指定されるもので、複数の市町にまたがる区域もある。区域区分の有無は都市計画区域ごとに決まるため、市町の名前だけでは判断できない。
  3. 29条1項2号にいう「政令で定める建築物」の範囲は、条文本体ではなく都市計画法施行令に置かれている。条文が自ら範囲を書かず政令に委ねている以上、該当するかどうかは条文の文言だけでは決まらない。
  4. 都市計画法34条11号・12号は、政令で定める基準に従い都道府県の条例で区域や用途を限って定めるものとされ、14号は都道府県知事が開発審査会の議を経て認める場合である。条文の文言だけでは結論が出ない部分が、条例と運用に置かれている。
  5. 開発登録簿は、開発許可をした都道府県知事が調製するものである(都市計画法47条1項)。開発許可を受けていない土地について作られるものではないから、記載がないことが、その土地で建築ができないことを意味するわけではない。
  6. 宅地建物取引業法35条1項2号は、都市計画法・建築基準法その他の法令に基づく制限で契約内容の別に応じて政令で定めるものに関する事項の概要を、重要事項として説明すべきものとしている。
  7. 弁護士法72条は、報酬を得る目的で法律事件に関して法律事務を取り扱うことを弁護士でない者に禁じている。当社は宅地建物取引業者として売買の媒介と条件の調整を行い、法律の判断を要する事項は提携する弁護士・司法書士におつなぎしている。

参考文献

一次情報:https://laws.e-gov.go.jp/law/343AC0000000100

市街化調整区域にある家は、売ることができないのですか。

売買そのものを禁じる条文はありません。都市計画法7条3項は市街化調整区域を「市街化を抑制すべき区域」と定めるにとどまり、所有権の移転を制限してはいません。効いてくるのは建築の側です。同法43条1項は、開発許可を受けた区域以外の市街化調整区域で建築物を新築し、改築し、または用途を変更することに知事の許可を求めています。買い手にとっての関心は、この許可が見込めるかどうかに集まります。当社が許可の見通しを述べることはしていません。

その土地が市街化区域かどうかは、どこで分かりますか。

登記事項証明書には書かれていません。登記記録が記録するのは所在・地番・地目・地積などであり、都市計画の区分は対象外です。磐田市は地図情報提供サービスを案内しており、窓口でも確かめられます。境界に近い土地では、地図だけで判断せず窓口で確認する扱いになっています。当社は売り出す前にこの確認を行っており、その費用をいただくことはしていません。

磐田市では、市街化調整区域でも家を建てられる場合があると聞きました。

磐田市は、例外的に建築が認められる類型をいくつか公表しています。適法に確認された既存宅地、線引き前から宅地であった土地で50戸以上の既存集落の中にあるもの、農家住宅や分家住宅、旧豊岡村の野部・広瀬地区を対象とする指定大規模既存集落の制度、JR豊田町駅東側地区の都市計画法34条11号条例などです。いずれも要件が細かく、該当するかどうかの判断は市の窓口にあります。

調整区域だと、買い手が住宅ローンを使えないのですか。

融資の可否は金融機関ごとの審査であり、都市計画法が定めているものではありません。当社が金融機関の判断を代弁することもしていません。実務上言えるのは、建て替えの可否がはっきりしない状態のまま話を進めると、買主が資金の相談を始めた段階で確認が差し戻され、日程が延びることがある、という段取りの話です。期限のある売却では、この差し戻しを先に潰しておく意味があります。

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