市街化調整区域にある家は、売ることができないのですか。
売買そのものを禁じる条文はありません。都市計画法7条3項は市街化調整区域を「市街化を抑制すべき区域」と定めるにとどまり、所有権の移転を制限してはいません。効いてくるのは建築の側です。同法43条1項は、開発許可を受けた区域以外の市街化調整区域で建築物を新築し、改築し、または用途を変更することに知事の許可を求めています。買い手にとっての関心は、この許可が見込めるかどうかに集まります。当社が許可の見通しを述べることはしていません。
要旨
市街化区域か市街化調整区域かは、登記記録には書かれていません。磐田市は市街化調整区域が市の面積の約8割を占めると公表しています。売却で先に確かめるのは価格ではなく、その土地でどの建築が認められるかです。
キーワード社会と地域/都市計画法/磐田市
磐田市で家を売ろうとするとき、登記事項証明書をどれだけ読んでも分からないことがあります。その土地が市街化区域にあるのか、市街化調整区域にあるのか。登記記録は所在と地番と地目と地積を記録しますが、都市計画の区分までは記録しません。ところが売却の場面では、この区分が買い手の幅に効いてきます。建て替えに許可の要らない土地と、許可の要る土地とでは、買おうとする人の数が変わるからです。
この線は、土地そのものの性質から出てくるものではありません。都市計画として決められた区域の境であり、決めた主体と、決めた時期があります。同じ静岡県の中でも線のある区域とない区域が隣り合っており、隣の市で通用した話が磐田市では通用しないことがあります。
本稿は、磐田市の土地に引かれているこの線が都市計画法のどの条文から来ているのかを確かめ、期限のある売却で売り出す前に確かめておく項目を、条文と公表資料の範囲で並べます。売れる土地と売れない土地を判定するのが目的ではありません。判定の手前で、何を調べておけば話が途中で止まらずに済むのかを整理します1。
まず、線があること自体を確かめます。静岡県が定める磐田都市計画区域の整備、開発及び保全の方針は、区域区分の決定の有無について「本都市計画に区域区分を定める。」と書いています。定めるとした根拠も併記されており、工業都市としての集積性が高く市街化圧力が強いと判断されること、無秩序な市街地の拡散を抑制する必要があることが挙げられています。磐田都市計画区域の該当市町は磐田市です。
「定める」という書き方には意味があります。都市計画法7条1項は、区域区分を定めることが「できる」と書いたうえで、ただし書で一定の都市計画区域については定めるものとしています。原則は任意で、例外として義務づけられる区域がある、という組み立てです。線があるかないかは、その土地が都会か田舎かで決まるのではなく、都市計画区域ごとの判断の結果として決まります。都市計画区域の範囲と市町の境界が一致するとも限りません2。
市の側の資料も見ます。磐田市は、市街化調整区域が市の全体面積の約8割を占めると公表しています。つまり磐田市で相談を受ける土地は、確率の話ではなく面積の話として、調整区域にある可能性を先に考えておくほうが実際に即しています。もっとも、人が住んでいる土地は市街地に偏りますから、面積の割合をそのまま件数の割合と読むことはできません。
開発行為の許可についても、磐田市が区分ごとの扱いを公表しています。市街化区域(用途地域内)では1,000平方メートル以上の開発行為に許可が要り、市街化調整区域では原則としてすべての開発行為に許可が要り、都市計画区域外では1ヘクタール以上に許可が要る、という並びです。同じ市の中で、規模の物差しが三通りあることになります。
面積の同じ土地でも、どこにあるかで手続が変わります。区分を先に確かめる値打ちは、まずここにあります。
もうひとつ、線には引かれた時期があります。都市計画法34条13号は、区域区分に関する都市計画が決定され、あるいは変更されて市街化調整区域が拡張された際に、自己の居住または業務のための建築物を建てる目的で土地の権利を有していた者が、決定または変更の日から六月以内に届け出た場合について、その目的に従った開発行為を認める余地を残しています。線が引かれた日に何を持っていたかが問われる書き方です。
区域区分は土地に貼られた恒久的な札ではなく、ある時点で決められた区域の境だということです。売主の記憶にある「昔は建てられたはずだ」という話と、いま市の記録に残っている扱いが食い違うとき、その差は多くの場合この時間の側にあります。
条文にさかのぼります。区域区分そのものは、都市計画法7条が置いています。
都市計画区域について無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るため必要があるときは、都市計画に、市街化区域と市街化調整区域との区分(以下「区域区分」という。)を定めることができる。ただし、次に掲げる都市計画区域については、区域区分を定めるものとする。(各号略)
2 市街化区域は、すでに市街地を形成している区域及びおおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域とする。
3 市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域とする。
3項の書き方に注目してください。市街化調整区域は「市街化を抑制すべき区域」であって、建築を禁止する区域とは書かれていません。抑制という言葉が、許可という仕組みにつながります。2項も同じ角度から読めます。市街化区域は「おおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」を含むとされており、線は、いまの街並みを写した線ではありません。
次に29条です。開発行為の許可を求める条文で、ただし書に十一の号が並びます。
都市計画区域又は準都市計画区域内において開発行為をしようとする者は、あらかじめ(中略)都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、次に掲げる開発行為については、この限りでない。
一 市街化区域、区域区分が定められていない都市計画区域又は準都市計画区域内において行う開発行為で、その規模が、それぞれの区域の区分に応じて政令で定める規模未満であるもの
二 市街化調整区域、区域区分が定められていない都市計画区域又は準都市計画区域内において行う開発行為で、農業、林業若しくは漁業の用に供する政令で定める建築物又はこれらの業務を営む者の居住の用に供する建築物の建築の用に供する目的で行うもの
1号が挙げているのは、市街化区域、区域区分が定められていない都市計画区域、準都市計画区域の三つです。市街化調整区域はここに入っていません。これが、磐田市の公表する「市街化調整区域では原則としてすべての開発行為に許可が要る」という扱いの、条文の側の根拠になります。
除外されているものを見ると、条文の狙いが読めます。2号は、農林漁業の用に供する政令で定める建築物と、これらの業務を営む者の居住の用に供する建築物のための開発行為を、市街化調整区域でも許可の対象から外しています。市街化を抑制すべき区域であっても、そこで営まれている農林漁業まで止める趣旨ではない、ということです3。
そして34条が、市街化調整区域に固有の基準を重ねます。ここは条文の構えを丁寧に見ておく値打ちがあります。33条は、申請に係る開発行為が各号の基準に適合し、その申請の手続が法令に違反していないと認めるときは、都道府県知事は開発許可を「しなければならない」と書いています。要件を満たせば許可する、という書き方です。ところが34条は、その33条に定める要件に該当するほか、各号のいずれかに該当すると認める場合でなければ、開発許可を「してはならない」と書きます。
つまり市街化調整区域では、関門が二つあります。第一は33条の基準で、道路や排水施設の配置、災害の防止、申請者の資力と信用といった、どの区域でも問われる項目です。第二が34条各号で、「そもそもこの区域に建ててよい類型か」を問います。前者を満たしても後者に当たらなければ、許可は出ません。
34条各号のうち、11号と12号は都道府県の条例に、14号は開発審査会の議に委ねられており、どこまでが認められるかは条文だけでは閉じていません4。11号は、市街化区域に隣接または近接し、市街化区域と一体的な日常生活圏を構成していると認められる地域のうち、おおむね五十以上の建築物が連たんしている地域で、条例で指定する区域を対象としています。「おおむね五十以上」という数だけが条文にあり、どこがそれに当たるかは条例の側にあります。
売却の場で実際に効いてくるのは、開発行為を伴わない建築を規律する43条のほうです。
何人も、市街化調整区域のうち開発許可を受けた開発区域以外の区域内においては、都道府県知事の許可を受けなければ、第二十九条第一項第二号若しくは第三号に規定する建築物以外の建築物を新築し、又は第一種特定工作物を新設してはならず、また、建築物を改築し、又はその用途を変更して(中略)建築物としてはならない。(ただし書略)
更地に家を建てる話だけでなく、建っている家を建て替える話がここに入ります。買い手が最初に気にするのは、多くの場合そちらです。同条2項は、この許可の基準を33条および34条に規定する開発許可の基準の例に準じて政令で定めるとしており、開発行為を伴わない建築にも同じ物差しが持ち込まれます。
1項の本文が「第二十九条第一項第二号若しくは第三号に規定する建築物以外の建築物」と書いていることにも注意が要ります。同じ除外が、開発許可の側と建築の側で揃えられているということです。
では何を調べるのか。磐田市は、市街化調整区域で住宅の建築が例外的に認められる場合を、いくつかの類型に分けて公表しています。適法に確認された既存宅地、線引き前から宅地であった土地で50戸以上の既存集落の中にあるもの、農家住宅や分家住宅、旧豊岡村の野部・広瀬地区を指定大規模既存集落とする制度、JR豊田町駅東側地区における都市計画法34条11号の条例による制度です。適法に建築された建築物の建て替えも、認められる場合があるとされています。
並べて分かるのは、いずれも土地の側の事情ではなく、そこに至る経緯と、その人の立場で決まるということです。線引きの前から宅地だったか。誰が住むために建てるか。集落の中か外か。売主が知っている情報と、市の記録が合っているかどうかを、売り出す前に突き合わせる値打ちがあります。
人で切ると、この点はさらにはっきりします。同じ一筆の土地でも、農業を営む人が自分の住まいを建てる話と、第三者が住まいを建てる話とでは、当たりうる類型が違います。価格を決める前に確かめるべきなのは、この意味での買い手の条件です。
手元にどの書面として現れるかも見ておきます。開発許可を受けた土地であれば、都市計画法47条が開発登録簿への登録を定めており、同条5項は登録簿を常に公衆の閲覧に供するように保管し、請求があったときはその写しを交付しなければならないとしています。所有者でなくとも写しの交付を請求できる書面だということです5。
開発許可を受けた区域には、もうひとつ制限が残ります。42条1項は、工事完了の公告があった後、当該開発許可に係る予定建築物等以外の建築物を新築してはならず、改築や用途の変更もできないと定めています。買主の用途で話の進み方が変わりうるということです。
順序が効くのは、後ろの項目が前の項目の答えに左右されるからです。建て替えの可否が分からないまま価格を決めると、買主が資金の相談を始めた段階で話が戻り、その戻りが日程を食います。市町ごとの論点は対応エリアに、段階ごとの残り時間の性質は今どこにいるかに整理しました。売り出しから引渡しまでの段取りは相談から引渡しまでにあります。
最後に、確かめても答えが出ない項目があることを書いておきます。34条11号・12号の条例の適用や、14号の開発審査会の議を経る類型は、事前の相談を重ねてはじめて見通しが立つものです。期限のある売却でいちばん高くつくのは、確かめないまま「たぶん建てられる」と伝えて、あとから覆ることです6。
注
参考文献
この記事のよくある質問
売買そのものを禁じる条文はありません。都市計画法7条3項は市街化調整区域を「市街化を抑制すべき区域」と定めるにとどまり、所有権の移転を制限してはいません。効いてくるのは建築の側です。同法43条1項は、開発許可を受けた区域以外の市街化調整区域で建築物を新築し、改築し、または用途を変更することに知事の許可を求めています。買い手にとっての関心は、この許可が見込めるかどうかに集まります。当社が許可の見通しを述べることはしていません。
登記事項証明書には書かれていません。登記記録が記録するのは所在・地番・地目・地積などであり、都市計画の区分は対象外です。磐田市は地図情報提供サービスを案内しており、窓口でも確かめられます。境界に近い土地では、地図だけで判断せず窓口で確認する扱いになっています。当社は売り出す前にこの確認を行っており、その費用をいただくことはしていません。
磐田市は、例外的に建築が認められる類型をいくつか公表しています。適法に確認された既存宅地、線引き前から宅地であった土地で50戸以上の既存集落の中にあるもの、農家住宅や分家住宅、旧豊岡村の野部・広瀬地区を対象とする指定大規模既存集落の制度、JR豊田町駅東側地区の都市計画法34条11号条例などです。いずれも要件が細かく、該当するかどうかの判断は市の窓口にあります。
融資の可否は金融機関ごとの審査であり、都市計画法が定めているものではありません。当社が金融機関の判断を代弁することもしていません。実務上言えるのは、建て替えの可否がはっきりしない状態のまま話を進めると、買主が資金の相談を始めた段階で確認が差し戻され、日程が延びることがある、という段取りの話です。期限のある売却では、この差し戻しを先に潰しておく意味があります。
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