保証人と連帯保証人では、払う金額が変わるのですか。
保証債務の範囲そのものは変わりません。民法447条1項は、保証債務が主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含すると定めており、これは連帯かどうかで区別されていません。変わるのは、請求されたときに主張できることです。連帯保証人は催告の抗弁と検索の抗弁を持たず(同法454条)、保証人が複数いても頭数で分ける利益がありません(456条・427条)。結果として、一人に全額の請求が向かう場面が生じます。
要旨
連帯保証と保証の違いは、債権者から請求されたときに言い返せることの有無です。連帯保証人は、まず本人に催告せよという抗弁と、先に本人の財産へ執行せよという抗弁を持たず(民法454条)、頭数で分ける利益もありません。保証債務の範囲自体は447条1項が定め、連帯かどうかで変わりません。
キーワード債権総論/連帯保証/催告の抗弁
住宅ローンの契約書を広げると、署名欄のどこかに「連帯保証人」と印字されていることがあります。「保証人」ではなく「連帯保証人」。二文字が足されているだけですが、民法の上では、この二文字が保証人の立場をかなり違うものにします。相談の場で契約書を拝見していると、署名した当のご本人が、その差を説明された記憶がないとおっしゃることがあります。
本稿は、保証と連帯保証が民法上どこで分かれるのかを、条文にさかのぼって確かめます。結論を先に書けば、分かれ目は責任の重さそのものではなく、債権者から請求されたときに何を言い返せるかにあります。連帯保証人は、保証人に用意されている二つの抗弁を持たず、頭数で分ける利益も持ちません1。
順に三つを見ます。保証という契約が誰と誰の間で結ばれ、どの範囲まで及ぶのか。452条から456条までが用意している主張を、454条がどう外しているのか。そして、家の中に並ぶ複数の立場を、条文がどう書き分けているのか。
まず、保証そのものの定義を確かめます。条文はこう書かれています。
保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
2 保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。
3 保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。
1項が定めているのは、履行の順序です。主たる債務者が払わないときに、という条件が付いています。2項は方式です。口頭の約束では効力を生じません。3項は電磁的記録を書面と同じに扱います。民法が方式を要求している契約は多くありません。ここで書面が要求されているのは、保証が、自分が受け取るものなしに他人の債務を負う契約だからだと説明されています2。
その保証契約が誰と誰の間で結ばれるかも、押さえておく値打ちがあります。保証契約の当事者は、債権者と保証人です。主たる債務者は当事者ではありません。だから、主たる債務者が知らない間に保証契約が結ばれることも、条文の形の上ではありえます。委託があったかどうかは、求償の場面で効いてくる別の話です。
保証債務の中身は、主たる債務に付いてきます。保証債務は「主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのもの」を包含します(447条1項)。元本だけではありません。同条2項により、保証人は自分の保証債務についてだけ、違約金や損害賠償の額を約定することもできます。
他方で、上向きには枠があります。保証人の負担が目的または態様において主たる債務より重いときは、主たる債務の限度に減縮されます(448条1項)。そして、保証契約の締結後に主たる債務が加重されても、保証人の負担は加重されません(同条2項)。署名した時点の主たる債務が、天井として残るということです。主たる債務に寄り添って動くが、主たる債務を超えては動かない。これが保証債務の基本の形です。
誰が保証人になれるかにも、条文は一応の要件を置いています。債務者が保証人を立てる義務を負う場合には、その保証人は行為能力者であり、弁済をする資力を有する者でなければなりません(450条1項)。資力の要件を欠くに至ったときは、債権者は要件を備える者に代えることを請求できます(同条2項)。もっとも、この二つの項は債権者が保証人を指名した場合には適用されません(同条3項)。つまり450条は、保証人になろうとする人を守る規定ではなく、担保の質を保つための規定です。保証人を立てられないときは、他の担保を供して代えることもできます(451条)。
ここまでは、連帯であるかどうかにかかわらず共通です。差が出るのは、債権者が保証人に「払ってください」と言ってきた場面です。
連帯でない保証人には、二つの抗弁が用意されています。条文はこう書かれています。
債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない。
民法453条(検索の抗弁)債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。
催告の抗弁は「先に本人に言ってください」、検索の抗弁は「本人に財産があるので先にそちらへ」という主張です。二つには順序があります。453条が「前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても」と書いているとおり、検索の抗弁は催告の後の場面を想定しています。しかも証明の負担は保証人の側です。資力があることと、執行が容易であることの両方を示さなければなりません。
452条にはただし書もあります。主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、またはその行方が知れないときは、催告の抗弁を使えません。本人に言えと求めても意味がない場面を、条文の側で外しているということです。抗弁が働いたにもかかわらず債権者が催告や執行を怠り、そのために主たる債務者から全部の弁済を得られなかったときは、保証人は、直ちに催告または執行をすれば弁済を得ることができた限度で義務を免れます(455条)。
そして454条です。「保証人は、主たる債務者と連帯して債務を負担したときは、前二条の権利を有しない」。前二条とは452条と453条、つまり右の二つの抗弁です。連帯保証を積極的に定義するのではなく、保証の一般形から抗弁を差し引く形で書かれています3。
もう一つ、頭数の話があります。
数人の保証人がある場合には、それらの保証人が各別の行為により債務を負担したときであっても、第四百二十七条の規定を適用する。
民法427条(分割債権及び分割債務)数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。
読みどころは「各別の行為により債務を負担したときであっても」の部分です。三人が別々の日に、別々の書面で保証していても、頭数で割ります。これを分別の利益と呼びます。連帯保証には、これが働きません。三人の連帯保証人がいても、それぞれが全額について責任を負います。
反対に、主たる債務者の側で起きたことは、保証人にも及びます。主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予および更新は、保証人に対しても効力を生じます(457条1項)。保証人は、主たる債務者が主張できる抗弁をもって債権者に対抗でき(同条2項)、主たる債務者が相殺権・取消権・解除権を持つときは、その行使によって主たる債務者が債務を免れるべき限度で履行を拒めます(同条3項)。逆向きについては458条が438条・439条1項・440条・441条を準用しており、更改・相殺・混同を除けば、原則として他方に及びません4。
住宅ローンでは、保証会社が保証人に立つ一方で、配偶者や親族が別に署名していることがあります。収入を合算して借りた場合や、土地と建物の名義が分かれている場合です。ここで、似ているが別の三つの立場が同じ家の中に並ぶことになります。
収入を合算して借りた場合、合算した側が連帯保証人になっているのか、連帯債務者になっているのかは、契約の型によって異なります。前者なら債務は主たる債務者のもので、後者なら自分自身の債務です。求償の場面も分かれます。連帯保証人が払えば459条以下の求償になり、連帯債務者が払えば442条1項の負担部分に応じた求償になります。同じ「二人で借りた」という言い方の下に、条文の上では別の構造が入っているということです。
この区別は、売却の場面でそのまま効いてきます。連帯保証人であることと、その不動産の共有者であることは別です。共有名義の家を売るには共有者全員の関与が要りますが、連帯保証人であっても名義に入っていなければ、売買契約の売主にはなりません。逆に、名義に入っていなくても保証債務は残ります。売却の手続と債務の帰属は、別の線で走っています。ご自身がどの段階にいるかは今どこにいるかに整理しました。
保証人の側から状況を確かめる手立ても、条文に置かれています。委託を受けた保証人が請求したときは、債権者は、遅滞なく、主たる債務の元本や利息などの不履行の有無、残額、弁済期が到来している額に関する情報を提供しなければなりません(458条の2)。さらに、主たる債務者が期限の利益を失ったときは、債権者は、知った時から二箇月以内に保証人へ通知する義務を負います(458条の3第1項)。通知を怠れば、その間に生じた遅延損害金について保証債務の履行を請求できません(同条2項)5。
ここで、住宅ローンには及ばない規定にも触れておきます。民法は2017年の改正で、個人が保証人になる場面に二つの保護を置きました。ひとつは公正証書です。
事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、その契約の締結に先立ち、その締結の日前一箇月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。
もうひとつは、主たる債務者が保証を委託するときに、財産および収支の状況、他に負担している債務の有無や額、他に提供している担保の内容を、委託を受ける者へ伝える義務です(465条の10第1項)。伝えなかったり事実と異なることを伝えたりしたために誤認して保証した場合、債権者がそれを知り、または知ることができたときは、保証人は保証契約を取り消すことができます(同条2項)。
ただし、どちらも冒頭に「事業のために負担した」という限定が付いています。住宅ローンは事業のための借入れではありませんから、この二つは及びません。民法が用意した近年の保護は、家族が住まいのために署名する場面を対象から外しているということです。条文はここに手当てを置いていない。だから手がかりは、契約書の記載と、458条の2による情報の請求に戻ってきます。
用語の意味は用語集に、選べる手の並びは任意売却以外の選択肢にまとめています。
注
参考文献
この記事のよくある質問
保証債務の範囲そのものは変わりません。民法447条1項は、保証債務が主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含すると定めており、これは連帯かどうかで区別されていません。変わるのは、請求されたときに主張できることです。連帯保証人は催告の抗弁と検索の抗弁を持たず(同法454条)、保証人が複数いても頭数で分ける利益がありません(456条・427条)。結果として、一人に全額の請求が向かう場面が生じます。
民法452条は、債権者が保証人に債務の履行を請求したとき、保証人はまず主たる債務者に催告をすべき旨を請求できると定めています。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、または行方が知れないときは、この限りでないとされています。連帯保証人はこの権利を持ちません(同法454条)。手元の契約が連帯保証に当たるかどうかの判断は法律の判断ですので、弁護士・司法書士にご確認ください。
民法457条1項は、主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予および更新は、保証人に対しても効力を生ずると定めています。保証人の側では何も起きていなくても、時間の数え方が動くということです。逆向き、つまり連帯保証人について生じた事由が主たる債務者に及ぶかは458条が準用する規定によります。個別の時効の成否は法律の判断であり、当社は述べません。
名義に入っていない方は、その不動産の売買契約の売主にはなりません。共有名義であれば共有者全員の関与が要りますが、連帯保証人であることと共有者であることは別の線です。他方で、名義に入っていなくても保証債務そのものは残ります。売却の手続と債務の帰属は別に進むとお考えください。債務の側の扱いは法律の判断を要しますので、提携する弁護士・司法書士におつなぎします。
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