配当要求の終期までに、債務者は何かをしなければなりませんか。
配当要求の終期は、債権者が配当を受けるために手続をする期限であって、債務者に対して何かを求める期日ではありません。民事執行法49条1項は、裁判所書記官が物件明細書の作成までの手続に要する期間を考慮して終期を定めなければならないと規定しています。ただし、この日付から売却までの順序が逆算されていきますので、日程の外枠を知る手がかりにはなります。
要旨
配当要求の終期は、売却代金を分ける相手を区切るための日付です。物件明細書の作成までの期間を考慮して裁判所書記官が定め、開始決定とあわせて公告されます。債務者が何かをする期日ではありませんが、ここから売却までの順序が動きはじめます。
キーワード民事執行/配当要求
開始決定が届いたあと、しばらく郵便が止まることがあります。手続が止まったのかと思われるのですが、そうではありません。その間に裁判所書記官が、期日をひとつ定めています。配当要求の終期という日付です。債務者に対して「この日までに何かをしなさい」と求める期日ではないため、書面の中でも目立ちません。
それでもこの日付を知っておく意味は二つあります。売却代金を分ける相手が、この日で区切られること。そしてもうひとつ、開始決定がされた事実が、この日付とともに公告されることです。本稿は、民事執行法49条から52条までを読みながら、この二つを確かめます。担保不動産競売については、これらの規定が188条により準用されます1。
民事執行法49条1項は、開始決定に係る差押えの効力が生じた場合に、裁判所書記官が配当要求の終期を定めなければならないと規定します。定め方にも条件が付いていて、物件明細書の作成までの手続に要する期間を考慮して定めるとされています。日数が法律に書かれているわけではなく、その事件で必要な作業から逆算されるということです。
同項には括弧書きも置かれています。「その開始決定前に強制競売又は競売の開始決定がある場合を除く」。すでに別の開始決定があって終期が定まっているなら、二つ目の終期は作らないという趣旨の書き方です。もっとも、後の開始決定が終期後の申立てに係るものであるときは、47条3項により新たに終期を定めなければなりません2。除いておいて、別の条文で戻す。条文はこうした往復をよくします。
なぜ締切が要るのか。答えは87条1項にあります。
売却代金の配当等を受けるべき債権者は、次に掲げる者とする。
一 差押債権者(配当要求の終期までに強制競売又は一般の先取特権の実行としての競売の申立てをした差押債権者に限る。)
二 配当要求の終期までに配当要求をした債権者
三 差押え(最初の強制競売の開始決定に係る差押えをいう。次号において同じ。)の登記前に登記された仮差押えの債権者
ここに二つのものさしが並んでいます。1号と2号は、終期までに手を挙げたかどうかで決まります。3号と、抵当権などを挙げる4号は、差押えの登記より前に登記されていたかどうかで決まります。前者は日付の問題、後者は登記の先後の問題です3。抵当権者は登記があるので手を挙げる必要がなく、判決を持っている債権者は登記がないので手を挙げる必要がある。そう並べると、条文の作りが見えてきます。
1号の括弧書きも読んでおきます。「配当要求の終期までに強制競売又は一般の先取特権の実行としての競売の申立てをした差押債権者に限る」。差押債権者であっても、終期の後に申し立てた者はこの号から外れます。手続を動かした側だから当然に入る、という書き方ではありません。日付は、申立てをした債権者にも同じように効いています。
87条2項は、さらに条件を重ねています。1項4号の債権者の権利が仮差押えの登記後に登記されたものである場合には、その債権者は、仮差押債権者が本案の訴訟において敗訴し、または仮差押えがその効力を失ったときに限り、配当等を受けることができる。登記があれば足りるとは書かれていません。誰の登記より前か後かで、条文は扱いを変えています。
4号の文言そのものも見ておきます。差押えの登記前に登記(民事保全法53条2項に規定する仮処分による仮登記を含む)がされた先取特権、質権または抵当権で売却により消滅するものを有する債権者。そしてその先取特権からは、1号または2号に掲げる債権者が有する一般の先取特権が除かれています。同じ債権者を二つの号で重ねて数えないための書き方です。条文は、範囲を広げる括弧と狭める括弧を、一つの号の中で使い分けています。
順序を戻して、終期が定まった直後に何が起きるかを読みます。
強制競売の開始決定に係る差押えの効力が生じた場合(その開始決定前に強制競売又は競売の開始決定がある場合を除く。)においては、裁判所書記官は、物件明細書の作成までの手続に要する期間を考慮して、配当要求の終期を定めなければならない。
2 裁判所書記官は、配当要求の終期を定めたときは、開始決定がされた旨及び配当要求の終期を公告し、かつ、次に掲げるものに対し、債権(利息その他の附帯の債権を含む。)の存否並びにその原因及び額を配当要求の終期までに執行裁判所に届け出るべき旨を催告しなければならない。
2項には二つの動作が入っています。公告と催告です。公告されるのは、開始決定がされた旨と、配当要求の終期。手続が始まっている事実が、この時点で外から見える形になります。差押えの登記に続く二つめの窓です。当社は、これを止める手立てを持っていません。先に申し上げておきます。
催告の相手は三つに分かれます。差押えの登記前に登記された仮差押債権者(1号)、売却により消滅する担保権をもつ債権者(2号)、そして租税その他の公課を所管する官庁または公署(3号)です。裁判所書記官の側から声をかけ、債権の存否と原因と額を終期までに届け出るよう求めます。
次の50条1項を、文言のとおりに読みます。「前条第二項の規定による催告を受けた同項第一号又は第二号に掲げる者は、配当要求の終期までに、その催告に係る事項について届出をしなければならない」。名宛人が1号と2号に絞られています。3号の官庁または公署は、催告の相手ではあっても、50条1項の届出義務の名宛人としては書かれていません。催告を受けることと、届け出る義務を負うことが、同じ範囲ではないということです。
では租税はどう手続に入るのか。国税徴収法82条1項が、滞納者の財産につき強制換価手続が行われた場合には、税務署長は執行機関に対し、滞納に係る国税につき交付要求書により交付要求をしなければならないと定めています。同条2項は、交付要求をしたときはその旨を滞納者に通知しなければならないとします4。民事執行法の配当要求とは別の法律に、別の名前の手続が置かれているということです。
届け出る中身も、条文が絞っています。50条1項は「その催告に係る事項について」と書き、その事項は49条2項が挙げる債権の存否・原因・額です。暮らしの事情や資力を申告させる規定ではありません。債権者の側が、自分の債権を数字で出す。それだけの定めです。
催告を受けた側の義務には、続きがあります。50条2項は、届け出た債権の元本の額に変更があったときも届け出るべきものとします。3項は、故意または過失により届出をせず、または不実の届出をしたときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずると規定しています5。届出が遅れれば手続の全体が滞るため、義務に実効性をもたせる仕組みが置かれています。
誰が配当要求をできるのかにも、条文は枠をはめています。51条1項が挙げるのは、執行力のある債務名義の正本を有する債権者、差押えの登記後に登記された仮差押債権者、そして181条1項各号に掲げる文書により一般の先取特権を有することを証明した債権者の三つです。債権があれば誰でも手を挙げられる、という作りにはなっていません。却下する裁判に対しては執行抗告ができます(同条2項)。
債務者の側から見ると、この時期に起きているのは自分の債務の全体像が、裁判所に集められる作業です。二番目の抵当権、税や社会保険料の滞納、判決を得ている債権者。ばらばらに届いていた通知の総和が、ひとつの事件の中で並びます。任意売却で配分案を作るときも、当社は同じ確認から始めます。誰が権利者で、いくら残っているのか。用語の整理は用語集に置きました。
終期は一度決めたら動かない日付ではありません。49条3項は、裁判所書記官が特に必要があると認めるときは終期を延期することができるとし、4項は延期後の終期を公告しなければならないとしています。延期されたことも、また外から見える形になります。公告は一度で終わる手続ではない、ということです。
さらに52条が、期日そのものを更新する仕組みを置いています。
配当要求の終期から、三月以内に売却許可決定がされないとき、又は三月以内にされた売却許可決定が取り消され、若しくは効力を失つたときは、配当要求の終期は、その終期から三月を経過した日に変更されたものとみなす。ただし、配当要求の終期から三月以内にされた売却許可決定が効力を失つた場合において、第六十七条の規定による次順位買受けの申出について売却許可決定がされたとき(その決定が取り消され、又は効力を失つたときを除く。)は、この限りでない。
本文は、三月という区切りを二度使っています。三月以内に売却許可決定がされないとき、または三月以内にされた売却許可決定が取り消されるか効力を失ったとき。そのいずれかに当たれば、終期はその終期から三月を経過した日に変更されたものとみなされます。入札を実施しても買受けの申出がなければ、この規定によって終期が先に送られます。手続が思ったより長く続くことがあるのは、条文にこうした更新が組み込まれているためです。
ただし書も見ておきます。売却許可決定が効力を失った場合でも、67条の規定による次順位買受けの申出について売却許可決定がされたときは、みなし変更は生じません6。買う人が続けて現れたなら、終期を動かす必要がないという筋です。条文は、原則と例外を三月という同じ物差しの上に並べています。
終期という日付は、配当の場面の外でも基準として使われています。55条1項は、売却のための保全処分を申し立てられる差押債権者から「配当要求の終期後に強制競売又は競売の申立てをした差押債権者」を括弧書きで除いています。64条の2第1項も、内覧の実施を申し立てられる差押債権者について同じ括弧書きを置いています。終期の後に手続へ入った債権者は、これらの申立てをする側には並ばない書き方です。
終期を定める処分と延期する処分は、裁判所の裁判ではなく裁判所書記官の処分です。49条5項は、これらの処分に対しては執行裁判所に異議を申し立てることができるとし、6項は10条6項前段と9項の規定を準用しています。誰の処分かによって、不服の申立て方も書き分けられていますが、申し立てるかどうかの判断とその代理は弁護士・司法書士の仕事です。
読者にとっての実際の意味は、期日そのものより、そこから逆算される日程のほうにあります。終期は物件明細書の作成を見込んで定められ、物件明細書は売却の実施につながります。つまり終期が定まった時点で、売却までのおおよその順序が動きはじめています。任意売却を並べて考えるのであれば、この順序と、債権者との協議に要する時間とを見比べることになります。競売との違いは任意売却と競売は、何が違うかに、費用の話は費用と手取りに整理しました。
注
参考文献
この記事のよくある質問
配当要求の終期は、債権者が配当を受けるために手続をする期限であって、債務者に対して何かを求める期日ではありません。民事執行法49条1項は、裁判所書記官が物件明細書の作成までの手続に要する期間を考慮して終期を定めなければならないと規定しています。ただし、この日付から売却までの順序が逆算されていきますので、日程の外枠を知る手がかりにはなります。
民事執行法49条2項は、裁判所書記官が配当要求の終期を定めたときは、開始決定がされた旨および配当要求の終期を公告しなければならないと定めています。差押えの登記に続いて、手続の存在が外から見える形になります。あわせて、差押えの登記前に登記された仮差押債権者、売却により消滅する担保権をもつ債権者、租税その他の公課を所管する官庁または公署に対して、債権を届け出るべき旨の催告がされます。当社はこれを止める手立てを持っていません。不利な情報ですので、先にお伝えしています。
民事執行法51条1項が挙げているのは三つです。執行力のある債務名義の正本を有する債権者、強制競売の開始決定に係る差押えの登記後に登記された仮差押債権者、そして181条1項各号に掲げる文書により一般の先取特権を有することを証明した債権者です。債権があれば誰でも手を挙げられるという作りにはなっていません。なお、差押えの登記前に登記された担保権者などは、49条2項により裁判所書記官から催告を受ける側に置かれています。
終期は動くことがあります。民事執行法49条3項は、裁判所書記官が特に必要があると認めるときは終期を延期することができるとし、4項は延期後の終期を公告しなければならないとしています。さらに52条は、終期から三月以内に売却許可決定がされないときなどは、終期はその終期から三月を経過した日に変更されたものとみなすと定めています。入札を実施しても買受けの申出がない場合などに、期日が先へ送られる仕組みです。
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