返済ノート

袋井市の非線引き都市計画|市街化調整区域がない区域で、何が土地を規律しているか

要旨

袋井市に市街化調整区域はありません。中遠広域都市計画では区域区分が定められていないためです。代わりに効くのは用途地域の内外、地区計画の有無、立地適正化計画の誘導区域との関係です。

キーワード社会と地域/都市計画法/袋井市

袋井市の土地について相談を受けるとき、最初に確かめることがあります。袋井市に市街化調整区域はありません。隣の磐田市には市街化区域と市街化調整区域の区分があるため、同じ感覚で袋井市の土地を考えると、話の組み立てから狂います。この取り違えは、売主の側にも買主の側にも起こります。

本稿は、袋井市を含む都市計画区域に区域区分が置かれていないことを公表資料で確かめ、では線引きの代わりに何が土地の使い方を決めているのかを、都市計画法の条文にさかのぼって整理します。区域区分がないことは、規制がないことを意味しません。効いている条文が別のところにある、というだけです1。

順に、三つのことを見ます。区域区分が置かれていないという事実と、条文がその判断をどう扱っているか。線引きの無い区域で実際に働いている規定が、8条・12条の4・29条・33条・41条・58条の2のどこに散らばっているか。そして、その散らばりが売却の日程のどこに現れるか。

都市計画区域 区域区分を定める 磐田都市計画区域 定めない 中遠広域都市計画区域 同じ県の隣り合う区域でも扱いが違う
図1 区域区分の有無で分かれる二つの型。出典:都市計画法7条1項、静岡県の各都市計画区域マスタープラン。区域の広さや優劣を表すものではない。

1. 中遠広域都市計画区域に区域区分がないという事実

先に、都市計画区域という枠が誰の手で決まるのかを確かめておきます。都市計画法5条1項は、一体の都市として総合的に整備し、開発し、及び保全する必要がある区域を都道府県が都市計画区域として指定するものとし、必要があるときは当該市町村の区域外にわたり指定することができるとしています。市町の境界と都市計画区域の境界が一致しないことを、条文のほうが先に予定しているわけです。

静岡県が定める中遠広域都市計画の都市計画区域の整備、開発及び保全の方針は、区域区分の決定の有無について「本都市計画に区域区分を定めない。」と書いています。同じ資料は、本区域が「袋井市及び森町の1市1町で構成されている」とも書いています。市の境で切れず、隣の森町まで含んだひとつの区域として扱われている、ということです。

定めないとした根拠も併記されています。区域全体の市街化圧力が高いとはいえないこと。現行の用途地域内で市街地開発事業や工業地の整備が計画的に実施されていることから、低密度な市街地が形成される可能性は低いこと。市街地周辺部の平坦地はそのほとんどが農業振興地域における農用地区域に指定され、土地利用に対する規制が図られていること。丘陵地が市街地に近接しており、都市的土地利用の拡大には地形上の制約があること。以上から区域区分制度の導入は行わない、という書き方です。

注目したいのは、抑制の役割を別の制度が担っているという説明の立て方です。農用地区域があり、地形の制約があるから、線を引かなくても市街地は散らばりにくい。裏返せば、袋井市で土地の使い方を確かめるには、都市計画法の中だけを見ていては足りません。

条文の側も、線を引くことを原則とはしていません。7条1項は本文で「定めることができる」と書き、ただし書で「次に掲げる都市計画区域については、区域区分を定めるものとする」として、四つの類型を挙げています2。

1 首都圏の既成市街地・近郊整備地帯 2 近畿圏の既成都市区域・近郊整備区域 3 中部圏の都市整備区域 4 大都市に係るものとして政令で定める区域
図2 区域区分を定めるものとされる区域の列挙。出典:都市計画法7条1項ただし書各号。各類型の面積や重要度を表すものではない。

四つを並べて読むと、条文が線引きを求めているのは大都市圏だと分かります。中遠広域都市計画区域で線が引かれていないのは、例外的な扱いを受けているからではなく、条文の原則どおりの姿だということになります。

同じ資料は、地区ごとの方針も書き分けています。袋井市北部の上山梨地区や東部の上石野地区などについては、地区計画制度の適正な運用により良好な戸建て住宅を中心とした住宅地を配置するとし、田原地区や岡崎地区などの集落地域については、地区計画制度を活用して自然環境と調和した土地利用を図るとしています。線を一本引いて内と外を分けるのではなく、地区ごとに描いていく組み立てです。

用途地域の中 都計法8条1項1号 用途の制限がある 建ぺい率・容積率 都市計画に定める 用途地域の外 都計法8条・12条の4 特定用途制限地域 地区計画があるか 区域ごとに異なる
図3 用途地域の内外という分かれ方。出典:都市計画法8条1項1号・2号の2、12条の4第1項。袋井市内のどの範囲が用途地域かを示す図ではない。

2. 線引きの代わりに置かれている条文

ここからは条文を順に読みます。まず7条です。

都市計画法7条(区域区分)

都市計画区域について無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るため必要があるときは、都市計画に、市街化区域と市街化調整区域との区分(以下「区域区分」という。)を定めることができる。ただし、次に掲げる都市計画区域については、区域区分を定めるものとする。

2 市街化区域は、すでに市街地を形成している区域及びおおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域とする。

3 市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域とする。

2項と3項は、区域区分が定められた場合にそれぞれの区域が何であるかを述べた規定です。区域区分が置かれていなければ、この二つの定義が働く場面はありません。市街化を抑制すべき区域という枠が、そもそも存在しないということです。

では区域区分のない都市計画区域で何が働くのか。中心にあるのは地域地区です。

都市計画法8条(地域地区)

都市計画区域については、都市計画に、次に掲げる地域、地区又は街区を定めることができる。

一 第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域……近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域又は工業専用地域(以下「用途地域」と総称する。)

二の二 特定用途制限地域

1号の用途地域が、建築物の用途と規模の枠を決めます。2号の2の特定用途制限地域は、用途地域が定められていない土地の区域について、制限すべき特定の建築物等の用途の概要を都市計画に定める仕組みです(同条3項2号ニ)。線を引く代わりに、地域地区で描き分ける組み立てです。

この特定用途制限地域の定義には、読み落としやすい括弧が入っています。9条は、これを「用途地域が定められていない土地の区域(市街化調整区域を除く。)内において」定める地域とします。市街化調整区域が明文で除かれている。裏返せばこの地域地区は、区域区分のない都市計画区域と準都市計画区域のために置かれた道具だということになります。

もうひとつが地区計画等です。12条の4第1項は、都市計画区域について地区計画等を定めることができるとし、同条2項は種類・名称・位置・区域を都市計画に定めるものとしています。続く12条の5第1項は、地区計画を定められる土地の区域として、1号の「用途地域が定められている土地の区域」と並べて、2号で「用途地域が定められていない土地の区域」のうち一定のものを挙げています。ここでも、用途地域の外が空白として扱われていないことが分かります。

地区計画が定められると、その区域の中で何かをするときに手続が発生します。

都市計画法58条の2(建築等の届出等)

地区計画の区域(略)内において、土地の区画形質の変更、建築物の建築その他政令で定める行為を行おうとする者は、当該行為に着手する日の三十日前までに、国土交通省令で定めるところにより、行為の種類、場所、設計又は施行方法、着手予定日その他国土交通省令で定める事項を市町村長に届け出なければならない。

3 市町村長は、(略)その届出に係る行為が地区計画に適合しないと認めるときは、その届出をした者に対し、その届出に係る行為に関し設計の変更その他の必要な措置をとることを勧告することができる。

誰に出す書面かを見ます。宛先は市町村長で、知事ではありません。期限は着手日の三十日前です。袋井市も、地区計画の一覧を公表したうえで、該当地区内で一定の行為をする場合は着手の30日前までに届出が要ると案内しています3。3項の勧告は許可ではありませんが、設計の変更を求められれば日程は動きます。

都市計画区域 5条 区域区分 7条 地域地区 8条 地区計画等 12条の4 区域を決める 中を分ける
図4 条文の並び。出典:都市計画法5条・7条・8条・12条の4。中遠広域都市計画区域では7条の段階が置かれておらず、8条以降が働く。

開発行為の許可も見ておきます。29条1項1号は、市街化区域、区域区分が定められていない都市計画区域、準都市計画区域内で行う開発行為のうち、政令で定める規模未満のものを許可の対象から外しています。非線引きの都市計画区域は、この点で市街化区域と同じ側に置かれています。

ただし、規模を超えて許可の対象になったときの基準を読むと、話は単純ではなくなります。33条1項1号は、予定建築物等の用途が用途の制限に適合していることを求め、イで用途地域等が定められている場合を、ロで定められていない場合を分けています。ロは、建築基準法48条14項などによる用途の制限を挙げています。用途地域の外にも、適合を見られる基準が置かれているということです4。

ここで、条文が袋井市に及ばない部分も並べておきます。34条は「前条の規定にかかわらず、市街化調整区域に係る開発行為については」と書き出し、各号のいずれかに該当すると認める場合でなければ知事は開発許可をしてはならないと定めます。43条は、市街化調整区域のうち開発許可を受けた区域以外の区域内で建築物を新築するには知事の許可を要するとします。いずれも主語が市街化調整区域です。磐田市の調整区域で真っ先に問題になる34条が、袋井市では出てこない。この差が、買い手の探し方の差になります。

逆に、用途地域の無い区域を名指しした規定もあります。41条1項は、用途地域の定められていない土地の区域における開発行為について開発許可をする場合に必要があると認めるときは、知事が建築物の建蔽率、高さ、壁面の位置その他の制限を定めることができるとし、2項は、その制限に違反して建築してはならないと定めます。用途地域が無くても、開発許可を経た土地には制限が付いていることがあるということです5。

都市計画区域(区域区分なし) 用途地域 地区計画の区域 用途地域の内にも外にも定めうる(12条の5第1項)
図5 区域の包含関係。出典:都市計画法8条1項1号・12条の5第1項。箱の大きさは面積や件数を表すものではない。

3. 売り出す前に、どこを確かめるか

以上を踏まえると、袋井市の土地で調べる順序は磐田市とは変わります。第一に用途地域の内か外か。第二に地区計画の区域に入っているか。第三に立地適正化計画の誘導区域との関係です。袋井市は、立地適正化計画で居住誘導区域と都市機能誘導区域を設定しており、誘導区域外で開発行為や建築行為を行う際に市への届出が必要となる場合があると案内しています。

用途地域 地区計画 誘導区域 内か外か あるか 内か外か 先に 後に
図6 確かめる順序。出典:都市計画法8条・12条の4、袋井市の公表資料。所要日数を表すものではなく、後の項目が前の項目の答えに左右されることを示すもの。

ここで気をつけたいのは、区域区分がないことを「制限が緩い」と読み替えないことです。用途地域の外に地区計画が定められていれば、そこには固有の制限があります。期限のある売却では、この確認を売り出しの前に済ませておくかどうかが、そのまま日数の差になります。市町ごとの論点は対応エリアに、段階ごとの残り時間の性質は今どこにいるかに整理しました。

この確認は、いずれ書面の形で表に出てきます。宅地建物取引業法35条1項は、契約が成立するまでの間に宅地建物取引士をして一定の事項を書面で説明させなければならないと定め、その2号に「都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限で契約内容の別に応じて政令で定めるものに関する事項の概要」を挙げています。用途地域も、地区計画も、最後は買主に説明される項目です。売主の側が先に確かめておけるのは、まさにこの範囲だということになります6。

売主 先に確かめられる側 買主 説明を受ける側 市・県の窓口 区域の別を答える 売買の合意 宅建業法35条 売り出す前に
図7 区域の確認が売買の当事者にどう現れるか。出典:宅地建物取引業法35条1項2号。どの窓口が何を管轄するかを示す図ではない。

時間で切ると、順序の意味がはっきりします。売り出してから区域の別が分かり、そこから三十日を数えはじめるのと、売り出す前に済ませておくのとでは、決済までの暦が一か月ぶん違ってきます。任意売却では、この一か月が債権者との調整の幅そのものになることがあります。ほかにどのような手が並んでいるかは任意売却以外の選択肢にまとめました。

  • 中遠広域都市計画区域に区域区分はない
  • 働いているのは8条と12条の4の側
  • 用途地域の外でも制限がないとは限らない
  • 地区計画の区域では着手の三十日前に届出
先に申し上げること 区域区分がないことは、その土地が売りやすいことを意味しません。用途地域の内外、地区計画の有無、誘導区域との関係、接する道路の扱いは、いずれも個別に確かめる項目です。当社が建築の可否や届出の要否を判定することはしておらず、確かめた結果を売却の条件に反映させるところまでが役割です7。
小括 中遠広域都市計画では区域区分が定められておらず、袋井市に市街化調整区域はありません。都市計画法7条1項が区域区分を任意の制度とし、定めるものとする区域を大都市圏に限っているためです。代わりに働くのは8条の地域地区、12条の4の地区計画等、そして58条の2の届出です。開発許可の面では29条1項1号が非線引きの区域を市街化区域と同じ側に置き、他方で34条と43条は主語が市街化調整区域であるため袋井市には及びません。本稿は制度の枠組みを示したにとどまり、個別の土地で何が建てられるかを述べるものではありません。当社の役割と限界は私たちの立場に書いています。

注

  1. 非線引きは、区域区分が定められていない都市計画区域を指す通称である。都市計画法の条文にこの語はなく、29条1項1号などでは「区域区分が定められていない都市計画区域」と書かれている。↩
  2. 7条1項ただし書の四つの類型は、いずれも首都圏・近畿圏・中部圏の整備に関する法律が定める区域か、大都市に係るものとして政令で定める区域である。条文はここで、線引きを求める範囲を、他の法律が指定した区域の名で示している。↩
  3. 袋井市は地区計画の一覧を公表し、該当地区内で行う一定の行為について着手の30日前までの届出を案内している。令和4年度からは電子申請でも届出ができるとされている。対象となる行為の範囲は地区ごとに異なる。↩
  4. 33条1項1号ロが引く建築基準法48条14項は、用途地域の指定のない区域内の建築物についての規定である。本稿はその内容に立ち入らず、用途地域の外にも参照される基準が置かれているという点だけを示す。↩
  5. 41条1項の制限は、開発許可をする場合に知事が必要と認めたときに定められるものであり、用途地域の外の土地すべてに一律に付くものではない。同条2項ただし書は、知事が支障がないと認めて許可したときの例外を置いている。↩
  6. 宅地建物取引業法35条1項が挙げる事項は2号のほかにも多岐にわたり、1号の登記された権利、3号の私道に関する負担などが並ぶ。土地の使い方に関わるものは2号に集約されている。↩
  7. 弁護士法72条は、報酬を得る目的で法律事件に関して法律事務を取り扱うことを弁護士でない者に禁じている。当社は宅地建物取引業者として売買の媒介と条件の調整を行い、法律の判断を要する事項は提携する弁護士・司法書士におつなぎしている。↩

参考文献

一次情報:https://laws.e-gov.go.jp/law/343AC0000000100

袋井市に市街化調整区域はないのですか。

ありません。静岡県が定める中遠広域都市計画の都市計画区域の整備、開発及び保全の方針は、区域区分の決定の有無について「本都市計画に区域区分を定めない。」と書いています。同じ資料は、この区域が袋井市及び森町の1市1町で構成されていることも記しています。都市計画法7条1項が区域区分を任意の制度としているため、定めない都市計画区域が存在します。磐田市とは前提が異なります。

区域区分がないなら、規制は緩いのですか。

緩いかどうかを一般化することはできません。区域区分がない都市計画区域でも、都市計画法8条の用途地域や特定用途制限地域、12条の4の地区計画等が定められます。袋井市は市内の地区計画を一覧で公表し、該当地区内で一定の行為をする場合は着手の30日前までの届出を案内しています。効いている条文の場所が違う、という理解のほうが実際に近いと考えています。

用途地域の外にある土地は、家を建て替えられますか。

当社が可否を判定することはしていません。条文の枠組みとして言えるのは、区域区分が定められていない都市計画区域では、都市計画法29条1項1号により政令で定める規模未満の開発行為が許可の対象から外れていること、そのうえで地区計画や特定用途制限地域が定められていればその制限が働くこと、そして建築基準法上の道路との関係が別に問題になることです。個別の判断は市の窓口にあります。

立地適正化計画の誘導区域は、売却に関係しますか。

袋井市は都市再生特別措置法にもとづく立地適正化計画を策定し、居住誘導区域と都市機能誘導区域を設定しています。市は、誘導区域外で開発行為や建築行為を行う際に市への届出が必要となる場合があると案内しています。届出が要るかどうかは日程に関わるため、売り出す前に確かめる項目のひとつになります。誘導区域の内外が価格を決めるという意味ではありません。

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