返済ノート

遅延損害金はどう決まるか|民法419条1項と404条の変動制を条文で読む

要旨

遅延損害金は利息ではなく、債務不履行による損害の賠償です。起点は確定期限の到来で、督促の有無を問いません。額は遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定まり、約定利率がこれを超えるときは約定利率によります。法定利率は年三パーセントを起点とする変動制です。

キーワード債権総論/遅延損害金

滞納が続くと、届く書面に見慣れない費目が加わります。元金、利息、そして遅延損害金。相談の場でこの内訳を拝見していると、遅延損害金の欄だけが別の速さで増えていることに気づかれる方が多くいます。なぜ利息とは別に立つのか。どの割合で計算されているのか。書面には結果の数字しか載っていないため、根拠を確かめようがありません。

本稿は、遅延損害金という費目がどこから生まれ、その率が何で決まるのかを民法412条・419条・404条にさかのぼって確かめ、率の上限を利息制限法と消費者契約法の条文で見ます。本稿は、いま何パーセントが適用されるかを示しません。その理由も、条文の構造から説明します1

順に、三つを見ます。この費目がいつ生まれるのか。率がどの条文の組み合わせで決まり、なぜ一般論では答えられないのか。そして、上限を置いている条文と、そもそも遅延損害金が何に対してかかるのか。

弁済期の到来 民法412条1項 遅滞の責任 その最初の時点 法定利率 民法419条1項 約定が上回る 419条1項但書 起点 決まり方
図1 率が決まるまでの順序。出典:民法412条1項・419条1項。各段階の間隔は事案により異なる。

1. 遅延損害金という費目が生まれる時点

遅延損害金は、利息の一種ではありません。債務不履行による損害の賠償です。利息が期限内に元本を使わせることの対価であるのに対し、遅延損害金は期限を過ぎたことに対する賠償として立てられています。名前が似ているために混同されがちですが、生まれる根拠が違います。

その起点を定めているのが民法412条です。同条は、履行期の種類によって遅滞の始まる時を三つに書き分けています。

民法412条(履行期と履行遅滞)

債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。

2 債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う。

3 債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。

三つを並べると、条文の狙いが見えます。2項と3項では、いずれも債権者からの請求か、債務者が知ったことが要件に入っています。1項には、それがありません。確定期限であれば、期限が来たという事実だけで遅滞の責任が生じます。

確定期限 期限の到来から 不確定期限 請求か了知の早い方 期限の定めなし 請求を受けた時から 412条1項 412条3項
図2 遅滞が始まる時の三通り。出典:民法412条1項2項3項。三つの間に時間の前後関係はない。

住宅ローンの毎月の返済日は、契約で定められた確定期限です。したがって1項が働きます。その日を過ぎれば、督促を受けたかどうかにかかわらず遅滞の責任が生じる。債権者からの請求を待つ構造にはなっていません。引落しの不能に気づくのが遅れても、条文の側の起点は動きません。

金銭債務には、さらに二つの特則が置かれています。債権者は損害の証明をすることを要しません(民法419条2項)。そして債務者は不可抗力をもって抗弁とすることができません(同条3項)。金銭は調達できるという前提が条文に組み込まれているためです。払えなかった事情が本人の責めに帰することができないものであっても、遅延損害金は生じます。この点は、相談の場でもっとも受け入れがたいと言われる箇所です。

利息 期限内の対価 約定の利率による 元本に対してつく 民法404条1項 遅延損害金 遅滞後の賠償 損害の証明は不要 不可抗力は抗弁不可 民法419条2項・3項
図3 二つの費目の性質の違い。出典:民法404条1項・419条2項3項。個別の契約の定めまでは網羅していない。

もっとも、利息と遅延損害金は完全に切り離されているわけでもありません。民法405条は、利息の支払が一年分以上延滞した場合において、債権者が催告をしても債務者がその利息を支払わないときは、債権者はこれを元本に組み入れることができるとしています。組み入れられれば、その部分は元本として扱われます2

ここで語そのものを見ておきます。412条は「遅滞の責任を負う」と書き、419条1項は「損害賠償の額」と書いています。民法に「遅延損害金」という語は出てきません。契約書や請求書に並ぶこの費目名は、条文の用語ではなく実務の呼び名です。呼び名が違っても中身は419条1項の損害賠償ですから、名称の違いによって扱いが変わるわけではありません。

人を替えると、同じ費目が別の意味を持ちます。保証人がいる場合、遅延損害金は保証債務の範囲に入ってきます。ただし民法458条の3は、主たる債務者が期限の利益を喪失したときは、債権者は保証人に対し、喪失を知った時から二箇月以内にその旨を通知しなければならないとし、2項で、期間内に通知しなかったときは、喪失した時から通知を現にするまでに生じた遅延損害金に係る保証債務の履行を請求することができないとしています。3項により、この保護は保証人が個人である場合に限られます。

あわせて458条の2は、委託を受けた保証人の請求があったときは、債権者は、損害賠償その他その債務に従たる全てのものについての不履行の有無と残額に関する情報を提供しなければならないとしています。保証人の側から数字を尋ねる根拠が、条文に置かれているということです。

書面の側から見ておきます。請求書や残高のお知らせに並ぶ費目は、たいてい元金・利息・遅延損害金の三つです。この三つが、いま見た条文にそれぞれ対応しています。どの数字がどの条文から来ているのかを分けるところまでは、書面を見れば追えます。追えないのは、その数字が正しいかどうかです。

2. 民法419条1項と404条の組み合わせ

率の決まり方は、二つの条文の組み合わせで書かれています。まず419条1項を読みます。

民法419条(金銭債務の特則)

金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。

2 前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。

3 第一項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。

原則は法定利率です。ただし約定利率がこれを超えるときは約定利率による。二段構えになっています。そして基準になる時点は、遅滞の責任を負った最初の時点と指定されています。「最初の」という語が置かれているのは、遅滞が続くあいだ何度も基準時を取り直すのではない、という意味です。いったん定まった率は、その後に法定利率が変わっても動きません3

では法定利率はどう決まるのか。404条が定めています。

民法404条(法定利率)

利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。

2 法定利率は、年三パーセントとする。

3 前項の規定にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、三年を一期とし、一期ごとに、次項の規定により変動するものとする。

2項が数字を置き、3項がそれを変動制にしています。三年を一期とし、一期ごとに変動する。変動の幅は、直近変動期における基準割合と当期における基準割合との差によって決まり、一パーセント未満の端数は切り捨てられます(同条4項)。基準割合そのものは、各期の初日の属する年の六年前の年の一月から前々年の十二月までの各月における短期貸付けの平均利率をもとに、法務大臣が告示します(同条5項)。

ここが、本稿が具体的な数字を書かない理由です。適用される法定利率は、遅滞の責任を負った最初の時点がどの期に属するかによって決まります。その期の利率は告示によるものですから、書面に書かれた率の当否を確かめるには、その期の告示を一次情報で当たる必要があります。当社が手元の書面を拝見するときも、同じ手順を踏みます。

404条1項の書き出しにも目を留めてください。「別段の意思表示がないときは」とあります。約定があればそれによる、という前提が条文の側に置かれている。419条1項ただし書と同じ構えです。条文は、まず契約を見よと言っているに等しいことになります。

遅滞の責任を負う 約定利率による 法定利率を超える場合 法定利率による 超えない場合 民法419条1項ただし書
図4 適用される率の分かれ方。出典:民法419条1項。率の高低ではなく、比較の結果どちらによるかという構造だけを示す。

契約に置かれる定めには、隣の条文があります。民法420条です。

民法420条(賠償額の予定)

当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。

2 賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない。

3 違約金は、賠償額の予定と推定する。

3項の語を覚えておいてください。違約金は、賠償額の予定と推定する。推定である以上、反対の証明があれば覆ります。後で見るとおり、利息制限法は同じ関係について別の語を使っています。

もうひとつ、払ったお金がどこへ充てられるかも条文にあります。民法489条1項は、元本のほか利息および費用を支払うべき場合において、全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、これを順次に費用、利息および元本に充当しなければならないとしています。先に費用と利息が埋まり、元本に届くのはその後です。払っているのに元本の欄が動かないように見えるとき、多くはこの順序によります。

充当には、指定という仕組みも置かれています。民法488条1項は、同種の給付を目的とする数個の債務があり、提供した給付が全部を消滅させるのに足りないときは、弁済をする者が給付の時にどの債務に充てるかを指定することができるとしています。2項は、指定がないときに受領する者が指定できるとし、ただし弁済をする者が直ちに異議を述べたときはこの限りでないとします。もっとも489条1項が働く場面では、費用・利息・元本の順序が先に立ちます。指定できるのは、その枠の中です。

3. 上限と、かかる範囲

約定利率によるとすれば、契約で好きな率を定めてよいのか。枠をはめているのが利息制限法です。同法4条1項は、消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定は、その割合が同法1条の率の一・四六倍を超えるときは超過部分を無効とします。1条の率は元本の額で三段階に分かれ、元本が百万円以上なら年一割五分です。

利息制限法7条(賠償額の予定の特則)

第四条第一項の規定にかかわらず、営業的金銭消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定は、その賠償額の元本に対する割合が年二割を超えるときは、その超過部分について、無効とする。

営業的金銭消費貸借とは、債権者が業として行う金銭を目的とする消費貸借をいうと定義されています(同法5条1号)。どちらの条が働くかは、その貸付けがこの定義に当たるかどうかによります。いずれも超過部分を無効とする形であって、契約そのものを無効にする規定ではありません。

ここで、先ほどの語に戻ります。利息制限法4条2項は、同項の適用については違約金を賠償額の予定とみなすとしています。民法420条3項の「推定する」と語が違う。推定は反対の証明で覆りますが、みなす場合は覆りません。同じ「違約金」に、二つの条文が別の強さを与えていることになります。7条2項は、この4条2項を7条1項の賠償額の予定にも準用します。

上限を置く条文は、もうひとつあります。住宅ローンは、個人が事業のためでなく借りる限り、事業者と消費者の間の契約に当たります(消費者契約法2条1項3項)。同法9条1項2号は、支払期日までに支払わない場合の損害賠償の額を予定し、または違約金を定める条項について、支払期日の翌日から支払の日までの日数に応じ、支払期日に支払うべき額から既に支払われた額を控除した額に年十四・六パーセントを乗じた額を超える部分を無効とします4

1 民法420条 予定すること自体はできる 2 利息制限法4条・7条 超過部分を無効 3 消費者契約法9条 超える部分を無効
図5 枠をはめている条文。出典:民法420条、利息制限法4条・7条、消費者契約法9条1項2号。どの条が働くかを示す図ではない。

同条2項には、読者の側から使える定めがあります。事業者は、こうした条項に基づいて支払を請求する場合において、消費者から説明を求められたときは、算定の根拠の概要を説明するよう努めなければならない。努力義務ではありますが、説明を求めること自体に条文の根拠があります。

次に、かかる範囲です。遅延損害金は、遅滞に陥っている部分について生じます。分割返済が続いているあいだ、遅滞しているのは滞納した回分だけです。ところが期限の利益を失うと、残債務の全額について履行期が到来します。この転換点については今どこにいるかで段階ごとに整理しました5

債務の全体 弁済期到来分 まだ来ていない分 喪失前はここだけ 喪失後は全体 ※ 帯の長さは金額の比を表すものではない。
図6 対象になる範囲の変化。出典:民法412条1項・419条1項。帯の長さは元本や滞納額の割合を表すものではない。

担保の側にも、枠があります。民法375条1項は、抵当権者が利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、その満期となった最後の二年分についてのみ抵当権を行使できるとし、2項が、債務の不履行による損害の賠償にも同じ扱いを及ぼしたうえで、利息その他の定期金と通算して二年分を超えることができないとします。

この条文が効くのは、競売の配当のように抵当権として優先弁済を受ける場面です。二年分を超える遅延損害金が消えるわけではありません。債権としては残り、抵当権では回収できない部分になる、という切り分けです。1項ただし書は、それ以前の定期金についても満期後に特別の登記をしたときは登記の時から行使を妨げないとしています。

債権として 請求できる額 期間の区切りはない 残債として残る 民法419条1項 抵当権として 優先弁済を受ける額 最後の二年分まで 利息と通算する 民法375条1項・2項
図7 二つの範囲の違い。出典:民法375条1項2項・419条1項。金額や配当の結果を示す図ではない。
  • 起点は確定期限の到来(民法412条1項)
  • 約定利率が法定利率を超えれば約定利率(419条1項但書)
  • 充当は費用・利息・元本の順(489条1項)
  • 不可抗力は抗弁にならない(419条3項)
先に申し上げること 書面に記載された遅延損害金の額が正しいかどうかを、当社が判定することはできません。適用される法定利率がどの期のものか、上限を超える部分があるかは、法律の判断であり、弁護士・司法書士の領域です。当社にできるのは、費目がどの条文に対応するのかを一緒に確かめるところまでです6。ほかにどのような手があるかは任意売却以外の選択肢に並べました。
小括 遅延損害金は利息ではなく、債務不履行による損害の賠償です。起点は確定期限の到来であり、請求を待ちません(民法412条1項)。額は遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定まりますが、約定利率がこれを超えるときは約定利率によります(419条1項)。法定利率は年三パーセントを起点とする変動制で(404条2項3項)、どの期にどの率が適用されるかは告示によります。上限は、利息制限法と消費者契約法が、いずれも超える部分を無効とする形で置いています。抵当権として行使できるのは、利息と通算して最後の二年分までです(375条)。本稿は現に適用される率を示していません。当社の役割と限界は私たちの立場に、費用の考え方は費用と配分に書いています。

  1. 本稿でいう遅延損害金は、金銭債務の履行遅滞による損害賠償を指す。契約書では延滞利息、遅延利息など複数の呼び方がされるが、民法419条1項が定める損害賠償である点は変わらない。
  2. 民法405条の組入れには、一年分以上の延滞と催告の二つが要件として書かれている。催告をせずに当然に組み入れられるものとしては書かれていない。
  3. 民法404条1項も、利息が生じた最初の時点における法定利率によるとしている。419条1項と同じく、ある一点で率を固定する書き方が採られている。
  4. 消費者契約法11条2項は、消費者契約の条項の効力について民法および商法以外の他の法律に別段の定めがあるときは、その定めるところによるとしている。どの条文が働くかは、この規定を含めた判断になる。
  5. 民法137条は期限の利益の喪失事由を三つ挙げるが、そこに返済の遅滞は含まれていない。住宅ローンで残額の全部について履行期が到来する根拠は、契約の期限の利益喪失条項にある。
  6. 当社は宅地建物取引業者として売買の媒介と売却条件の調整を行い、法律の判断を要する事項は提携する弁護士・司法書士におつなぎしている(弁護士法72条)。

参考文献

一次情報:https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089

遅延損害金は、いつから発生しますか。

民法412条1項は、債務の履行について確定期限があるときは、債務者はその期限の到来した時から遅滞の責任を負うと定めています。住宅ローンの毎月の返済日は確定期限にあたりますので、督促を受けたかどうかにかかわらず、期限を過ぎた時点で遅滞の責任が生じる構造です。債権者からの請求を待つ条文にはなっていません。実際にいつから計上されているかは、お手元の書面と契約書でご確認ください。

遅延損害金の率は何パーセントですか。

民法419条1項は、遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によるとし、約定利率が法定利率を超えるときは約定利率によるとしています。法定利率は同法404条2項が年三パーセントと定めていますが、3項により三年を一期とする変動制で、各期の率は基準割合の差をもとに定まり、基準割合は法務大臣が告示するものとされています(同条5項)。したがって一般的な数値を申し上げることはせず、適用される期の告示でご確認いただく形になります。

払えなかった事情があっても、遅延損害金はつきますか。

民法419条3項は、金銭債務の損害賠償について、債務者は不可抗力をもって抗弁とすることができないと定めています。あわせて同条2項は、債権者は損害の証明をすることを要しないとしています。金銭は調達できるという前提が条文に組み込まれているためです。事情の有無にかかわらず遅延損害金が生じる形になっており、この点は制度の建て付けとして押さえておく必要があります。

遅延損害金の率に上限はありますか。

利息制限法4条1項は、金銭を目的とする消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定について、その割合が同法1条の率の一・四六倍を超えるときは超過部分を無効とすると定めます。1条の率は元本の額で三段階に分かれ、元本が百万円以上の場合は年一割五分です。また同法7条1項は、営業的金銭消費貸借については年二割を超える部分を無効としています。いずれも超過部分を無効とする形の規制で、適用の判断は弁護士・司法書士の領域です。

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