別除権とは何ですか。
破産法2条9項は、破産手続開始の時において破産財団に属する財産につき特別の先取特権・質権・抵当権を有する者が、これらの権利の目的である財産について65条1項の規定により行使することができる権利を別除権と定義しています。そして65条1項は、別除権は破産手続によらないで行使することができると定めます。住宅ローンでいえば、債権そのものは破産債権であり、家に設定された抵当権は別除権として、それぞれ別の線で扱われることになります。
要旨
破産法65条1項は「別除権は、破産手続によらないで、行使することができる」と定めます。家に設定された抵当権は手続の外側にあり、行使して回収できなかった額だけが破産債権の側に回ります(108条1項)。
キーワード倒産と再建/別除権
債務の整理という言葉が出たあと、相談の場でほとんど決まって続く問いがあります。それで、家はどうなるのですか。破産の手続に入れば家の話も一緒に片がつくのだろう、という受け取り方が前提にあります。ところが破産法を開くと、抵当権はその手続の中に取り込まれていません。
破産法は、破産手続開始の時に破産財団に属する財産について特別の先取特権・質権・抵当権を有する者の権利を別除権と名づけ(2条9項)、それは破産手続によらないで行使することができると定めています(65条1項)。本稿は、この「よらないで」という一語が何を意味しているのかを条文で確かめます。手続の選び方を述べるものではありません1。
破産手続とは、債務者の財産などを清算する手続をいいます(2条1項)。破産管財人が破産財団に属する財産を管理・処分し、換価し、破産債権者に配当する。これが基本の流れです。破産債権とは、破産者に対し破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権であって、財団債権に該当しないものをいいます(2条5項)。
ここで、住宅ローンを二つに分けて考える必要が出てきます。金融機関や保証会社が持っている債権そのものは、破産債権です。一方、その債権を担保するために家に設定された抵当権は、別除権です。同じ相手が、同じ住宅ローンについて、二つの資格を持っている状態になります。
紛らわしいのは、家そのものは破産財団に属しうるという点です。破産財団とは、破産者の財産であって、破産手続において破産管財人にその管理及び処分をする権利が専属するものをいいます(2条14項)。抵当権が設定されているからといって、その不動産が財団の外に出るわけではありません。財団に属する財産の上に、手続によらないで行使できる権利が乗っている。別除権という名は、この二重の状態を指しています。
この二つは、進む道が違います。破産債権は手続の中で届出をし、調査を受け、配当を受けます。別除権は手続によらないで行使できます。担保不動産競売を申し立てることも、破産管財人との協議によって任意売却の形をとることも、条文の上では別除権の行使の場面に置かれています。競売と任意売却の違いは任意売却と競売は、何が違うかにまとめました。
条文そのものは、驚くほど短い一文です。
別除権は、破産手続によらないで、行使することができる。
2 担保権(特別の先取特権、質権又は抵当権をいう。以下この項において同じ。)の目的である財産が破産管財人による任意売却その他の事由により破産財団に属しないこととなった場合において当該担保権がなお存続するときにおける当該担保権を有する者も、その目的である財産について別除権を有する。
1項の一文だけです。禁止も制限も書かれていません。抵当権は、破産手続が始まっても、その外側で生きている。これが破産法の出発点です。2項は、任意売却などによって目的物が破産財団から出ていった場合でも担保権が存続する限り別除権を有すると定めており、財団に属するかどうかで権利が消えるわけではないことを示しています2。
66条は、留置権について別の扱いを置きます。商法または会社法の規定による留置権は破産財団に対しては特別の先取特権とみなされ(1項)、それは他の特別の先取特権に後れます(2項)。そして3項は、それ以外の留置権は破産財団に対してはその効力を失うとしています。担保であればすべて手続の外に出る、という作りにはなっていません。
手続の外にあるとはいえ、別除権が破産手続とまったく交わらないわけでもありません。184条2項は、破産管財人が民事執行法などの規定により別除権の目的である財産の換価をすることができるとし、この場合において別除権者はその換価を拒むことができないと定めます。186条1項は、任意に売却して担保権を消滅させることが破産債権者の一般の利益に適合するときの、担保権消滅の許可の申立てを置いています。
ここまでを住宅ローンの読者の側から言い直します。第一に、破産手続が始まったからといって、家が手元に残るわけではありません。抵当権は手続の外で行使できるので、家の帰趨は破産手続とは別の線で決まっていきます。任意売却がどのように進むかは任意売却とはに整理しました。
第二に、家が処分されても、それだけでは債権の全部が消えないことがあります。108条1項は、別除権者はその別除権の行使によって弁済を受けることができない債権の額についてのみ、破産債権者としてその権利を行使することができると定めます。売却代金で足りなかった額が、破産債権の側に回るという建て付けです。この不足額の証明については、198条3項が最後配当の手続への参加の要件として定めを置いています。別除権を持っているというだけでは配当の手続に入れず、いくら足りなかったのかを示すことが求められる仕組みです。
第三に、この構造は破産法に限られません。民事再生法53条1項は、再生手続開始の時において再生債務者の財産につき存する担保権を有する者はその財産について別除権を有するとし、2項は別除権は再生手続によらないで行使することができると定めています。3項は破産法65条2項と同じ趣旨の定めです。担保権を手続の外に置くという考え方は、二つの法律に共通しています。
言い換えれば、家に抵当権が付いている限り、どの手続に進んでも、家の話は独立した一本の線として残ります。段階ごとに何が起きているかは今どこにいるかに並べました。
注
参考文献
この記事のよくある質問
破産法2条9項は、破産手続開始の時において破産財団に属する財産につき特別の先取特権・質権・抵当権を有する者が、これらの権利の目的である財産について65条1項の規定により行使することができる権利を別除権と定義しています。そして65条1項は、別除権は破産手続によらないで行使することができると定めます。住宅ローンでいえば、債権そのものは破産債権であり、家に設定された抵当権は別除権として、それぞれ別の線で扱われることになります。
破産法65条1項は、別除権は破産手続によらないで行使することができると定めるだけで、消滅させる規定は置いていません。65条2項は、破産管財人による任意売却などで目的物が破産財団に属しないこととなった場合でも、担保権がなお存続するときは別除権を有するとしています。なお186条1項は、任意に売却して担保権を消滅させることが破産債権者の一般の利益に適合するときの担保権消滅の許可の申立てを定めていますが、これは破産管財人が裁判所に対して行う手続です。
破産法108条1項は、別除権者は、その別除権の行使によって弁済を受けることができない債権の額についてのみ、破産債権者としてその権利を行使することができると定めています。回収できなかった額が破産債権の側に回るという建て付けです。198条3項は、別除権者が最後配当の手続に参加するには、除斥期間内に破産管財人に対して弁済を受けることができない債権の額などを証明しなければならないとしています。金額そのものは当社が見通せる事柄ではありません。
民事再生法53条1項は、再生手続開始の時において再生債務者の財産につき存する担保権を有する者は、その目的である財産について別除権を有すると定め、2項は別除権は再生手続によらないで行使することができるとしています。3項は破産法65条2項と同じ趣旨です。担保権を手続の外に置く構造は共通しています。ただし同法の第十章には住宅資金貸付債権についての特則が別に置かれており、どの規定が働くかは事案ごとの判断になります。
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