返済ノート

空き家と競売のあいだ|統計の空き家と空家法の空家等は同じではない

要旨

空き家900万2千戸のうち、賃貸用が443万6千戸を占めます。空家法の「空家等」は、使用されていないことが常態である建築物という別の定義です。二つの数え方は目的が違うため、そのまま重ねることができません。

キーワード社会と地域/空き家/民事執行

空き家が九百万戸あるという話と、家が競売にかかるという話は、同じ場所で語られることがあります。売れない家が増えている、だから競売になっても買い手がつかない——そういう筋道は、聞けばもっともらしく響きます。しかし、この二つの話がどこで接し、どこで接していないのかを、公表資料にさかのぼって確かめた文章は多くありません。

本稿は、総務省の住宅・土地統計調査が「空き家」と呼んでいるものと、空家等対策の推進に関する特別措置法が「空家等」と呼んでいるものを並べ、そのうえで民事執行法が売却の見込みのない不動産をどう扱っているかを見ます1。結論を先に書けば、二つの集合は重なる部分があるだけで、同じものではありません。数値は2026年8月24日に取得したものです。

空き家 900万2千戸 賃貸等を除く 賃貸用 385万6千戸 443万6千戸 71万戸 ※ 帯の長さは空き家総数に占める割合による。
図1 空き家の種類別の内訳。出典:総務省「令和5年住宅・土地統計調査」住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)表2-1。左の帯は「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」、右端は売却用の空き家32万6千戸と二次的住宅38万4千戸の合計。

1. 統計が「空き家」と呼んでいるもの

総務省の住宅・土地統計調査は、五年ごとに行われます。令和5年調査は2023年10月1日現在のもので、確報集計は2024年9月25日に公表されました。それによると総住宅数は6,504万7千戸、空き家は900万2千戸、総住宅数に占める空き家の割合は13.8%です。

この900万2千戸は、ひとかたまりではありません。調査は空き家を四つに分けています。賃貸用の空き家が443万6千戸、売却用の空き家が32万6千戸、二次的住宅が38万4千戸、そして「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」が385万6千戸です。最後の区分が、いわゆる放置された家に最も近いものですが、調査の説明は、転勤や入院のため居住世帯が長期にわたって不在の住宅や、建て替えのため取り壊すことになっている住宅を例として挙げています2

建て方でみると、性格の違いがはっきりします。空き家のうち一戸建が352万3千戸で全体の39.1%、共同住宅が502万9千戸で55.9%です。そして一戸建の空き家の80.9%が「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」であるのに対し、共同住宅の空き家の78.5%は賃貸用の空き家でした。

一戸建 空き家全体の39.1% 352万3千戸 うち80.9%が 賃貸等を除く空き家 共同住宅 空き家全体の55.9% 502万9千戸 うち78.5%が 賃貸用の空き家
図2 建て方による内訳の違い。出典:令和5年住宅・土地統計調査 表2-2。共同住宅の戸数は建物内の一つ一つの住宅の数であり、建物の棟数ではない。

この対比から言えることは限られています。共同住宅の空き家の多くは、貸すために空いている部屋です。市場に出ている在庫であって、放置された家ではありません。空き家の総数を一つの数字として語ると、この違いが消えます。

2. 空家法が「空家等」と呼んでいるもの

法律の側は、別の定義を置いています。

空家等対策の推進に関する特別措置法2条(定義)

この法律において「空家等」とは、建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。第十四条第二項において同じ。)をいう。ただし、国又は地方公共団体が所有し、又は管理するものを除く。

2 この法律において「特定空家等」とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう。

鍵になるのは「常態であるもの」という一句です。統計は調査時点で人が住んでいるかどうかを見ますが、法律は状態の継続を要件にしています。したがって、統計上の空き家900万2千戸がそのまま空家法の空家等になるわけではありません。二つの数え方は、目的が違うために定義も違います。

空家法はさらに段階を設けます。13条1項は、そのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態の空家等を「管理不全空家等」と呼び、市町村長が指導をすることができると定めます。22条は特定空家等について、助言または指導、勧告、命令、そして代執行までの順序を置いています。

空家等 管理不全空家等 空家法13条 特定空家等 空家法22条 市町村長が判断する
図3 空家法が置く区分。出典:空家等対策の推進に関する特別措置法2条・13条・22条。どの家がどちらに当たるかは市町村長の判断によるもので、この図は区分の存在を示すにとどまる。

大切なのは、この判断をするのが市町村長であって、統計調査ではないという点です。調査員が空き家と数えた家が特定空家等になるのでもなく、その逆でもありません。制度としては別の系統に属しています。

3. 買受けの申出がなかったとき、条文は何を用意しているか

では競売の側はどうか。競売は、買受けの申出があってはじめて売却に至ります。申出がない場合について、民事執行法は二つの出口を書いています。

ひとつは63条です。差押債権者の債権に優先する債権がない場合に、不動産の買受可能価額が手続費用の見込額を超えないとき、あるいは優先債権がある場合に、買受可能価額が手続費用と優先債権の見込額の合計に満たないとき。執行裁判所は差押債権者に通知し、通知から一週間以内に差押債権者が定められた申出と保証の提供をしないときは、手続を取り消さなければならないと定めます。価額が低すぎる不動産は、条文の側で先に落ちるということです。

もうひとつは68条の3です。裁判所書記官が入札または競り売りの方法による売却を三回実施させても買受けの申出がなかった場合において、不動産の形状、用途、法令による利用の規制その他の事情を考慮して、さらに売却を実施させても売却の見込みがないと認めるときは、執行裁判所は手続を停止することができます。差押債権者は通知を受けた日から三月以内に売却実施を申し出ることができ、その申出がないときは、執行裁判所は手続を取り消すことができます。これらは担保不動産競売にも準用されます(同法188条)。

3回入札 民執法64条 申出なし 買受けの申出 手続の停止 民執法68条の3 3月の期間 差押債権者へ 取消し 民執法68条の3 早い 遅い
図4 売却の見込みがない場合の順序。出典:民事執行法64条・68条の3・188条。停止や取消しに至るかどうかは執行裁判所の認定によるもので、この図は条文上の順序を示すにとどまる。

ここで、冒頭の筋道に戻ります。空き家が増えているから競売でも買い手がつかない、という言い方はできるのか。公表資料からは言えません。住宅・土地統計調査は競売にかかった不動産を区別して数えていませんし、司法統計は不動産が空き家かどうかを記録していません。二つの資料を突き合わせる材料が、公表されている範囲には存在しないのです。言えるのは、条文が売却の見込みのない場合の手順を用意している、という事実までです3

  • 統計の空き家と空家法の空家等は定義が違う
  • 特定空家等かどうかを判断するのは市町村長
  • 買受けの申出がない場合の手順は条文にある
先に申し上げること 空き家の統計から、ご自身の家が売れるかどうかを申し上げることはできません。全国の集計は個別の価格や需要の根拠になりません。また、ある家が特定空家等に当たるかどうかの判断は市町村長の権限であり、当社が代わって申し上げる事柄ではありません。競売手続の停止や取消しの見通しについても、当社は述べていません。条文の解釈と手続の見通しは弁護士・司法書士の仕事です4。用語の意味は用語集に置きました。
小括 住宅・土地統計調査の空き家900万2千戸のうち、賃貸用が443万6千戸を占め、一戸建と共同住宅では内訳の性格が異なります。空家法の「空家等」は使用されていないことが常態である建築物を指し、統計の空き家と定義が一致しません。民事執行法63条と68条の3は、買受けの申出がない場合の手順を置いています。ただし本稿は、空き家の増加と競売の帰結を結びつける材料が公表資料にないことを確かめたにとどまり、両者の関係を述べるものではありません。ご自身の段階は今どこにいるか、競売との違いは任意売却と競売は、何が違うかをご覧ください。当社の立場は私たちの立場に書いています。

  1. 住宅・土地統計調査は統計法に基づく基幹統計調査であり、1948年以来五年ごとに行われている。令和5年調査は第16回にあたる。空家等対策の推進に関する特別措置法は平成26年法律第127号で、2023年の改正により管理不全空家等の区分が加わった。
  2. 同調査は、空き家の種類の判断が困難な住宅もこの区分に含まれると注記している。したがって385万6千戸のすべてが管理されていない家であるとは、資料からは言えない。なお令和5年調査では、平成30年調査の「その他の住宅」がこの名称に改められている。
  3. 民事執行法68条の3第1項は「強制競売の手続を停止することができる」と定めており、停止を義務づけていない。同条3項の取消しも「取り消すことができる」である。これに対し63条2項の取消しは「取り消さなければならない」であり、条文の書き分けがある。
  4. 弁護士法72条は、報酬を得る目的で法律事件に関して法律事務を取り扱うことを弁護士でない者に禁じている。当社は宅地建物取引業者として売買の媒介と売却条件の調整を行い、法律の判断を要する事項は提携する弁護士・司法書士におつなぎしている。

参考文献

一次情報:https://laws.e-gov.go.jp/law/426AC1000000127

空き家は全国にどれくらいあるのですか。

総務省「令和5年住宅・土地統計調査」の住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計、2024年9月25日公表)によると、2023年10月1日現在の空き家は900万2千戸、総住宅数6,504万7千戸に占める割合は13.8%です。ただし内訳をみると、賃貸用の空き家が443万6千戸、売却用の空き家が32万6千戸、二次的住宅が38万4千戸、これらを除く空き家が385万6千戸です。総数だけを見ると、貸すために空いている部屋と放置された家の違いが消えます。

統計の空き家は、そのまま空家法の「空家等」になるのですか。

なりません。空家等対策の推進に関する特別措置法2条1項は、空家等を「建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地」と定義しています。統計調査が調査時点で人が住んでいるかどうかを見るのに対し、法律は状態が常態であることを要件にしています。また特定空家等に当たるかどうかは市町村長が判断する事柄であり、統計調査が決めるものではありません。

買い手がつかない不動産は、競売にかけられたらどうなるのですか。

民事執行法68条の3第1項は、入札または競り売りを三回実施させても買受けの申出がなかった場合において、不動産の形状や用途などを考慮してさらに売却を実施させても見込みがないと認めるときは、執行裁判所が手続を停止することができると定めています。差押債権者が通知から三月以内に売却実施を申し出ないときは、手続を取り消すことができるとされています。ただし、これは条文上の手順であり、個別の事案でどうなるかを当社が申し上げることはしていません。

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