空き家は全国にどれくらいあるのですか。
総務省「令和5年住宅・土地統計調査」の住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計、2024年9月25日公表)によると、2023年10月1日現在の空き家は900万2千戸、総住宅数6,504万7千戸に占める割合は13.8%です。ただし内訳をみると、賃貸用の空き家が443万6千戸、売却用の空き家が32万6千戸、二次的住宅が38万4千戸、これらを除く空き家が385万6千戸です。総数だけを見ると、貸すために空いている部屋と放置された家の違いが消えます。
要旨
空き家900万2千戸のうち、賃貸用が443万6千戸を占めます。空家法の「空家等」は、使用されていないことが常態である建築物という別の定義です。二つの数え方は目的が違うため、そのまま重ねることができません。
キーワード社会と地域/空き家/民事執行
空き家が九百万戸あるという話と、家が競売にかかるという話は、同じ場所で語られることがあります。売れない家が増えている、だから競売になっても買い手がつかない——そういう筋道は、聞けばもっともらしく響きます。しかし、この二つの話がどこで接し、どこで接していないのかを、公表資料にさかのぼって確かめた文章は多くありません。
本稿は、総務省の住宅・土地統計調査が「空き家」と呼んでいるものと、空家等対策の推進に関する特別措置法が「空家等」と呼んでいるものを並べ、そのうえで民事執行法が売却の見込みのない不動産をどう扱っているかを見ます1。結論を先に書けば、二つの集合は重なる部分があるだけで、同じものではありません。数値は2026年8月24日に取得したものです。
総務省の住宅・土地統計調査は、五年ごとに行われます。令和5年調査は2023年10月1日現在のもので、確報集計は2024年9月25日に公表されました。それによると総住宅数は6,504万7千戸、空き家は900万2千戸、総住宅数に占める空き家の割合は13.8%です。
この900万2千戸は、ひとかたまりではありません。調査は空き家を四つに分けています。賃貸用の空き家が443万6千戸、売却用の空き家が32万6千戸、二次的住宅が38万4千戸、そして「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」が385万6千戸です。最後の区分が、いわゆる放置された家に最も近いものですが、調査の説明は、転勤や入院のため居住世帯が長期にわたって不在の住宅や、建て替えのため取り壊すことになっている住宅を例として挙げています2。
建て方でみると、性格の違いがはっきりします。空き家のうち一戸建が352万3千戸で全体の39.1%、共同住宅が502万9千戸で55.9%です。そして一戸建の空き家の80.9%が「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」であるのに対し、共同住宅の空き家の78.5%は賃貸用の空き家でした。
この対比から言えることは限られています。共同住宅の空き家の多くは、貸すために空いている部屋です。市場に出ている在庫であって、放置された家ではありません。空き家の総数を一つの数字として語ると、この違いが消えます。
もうひとつ、この調査が持っていない情報を挙げておきます。統計は、住宅を所有者の名前で数えていません。調査の単位は住宅と世帯であり、誰の所有かは集計の軸に立っていません。抵当権が付いているかどうかも、住宅ローンの残高も、調査項目ではありません。ある住宅が競売の手続の中にあるかどうかも、区別されていません。数えているのは、そこに住んでいる世帯があるかどうかです。
法律の側は、別の定義を置いています。
この法律において「空家等」とは、建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。第十四条第二項において同じ。)をいう。ただし、国又は地方公共団体が所有し、又は管理するものを除く。
2 この法律において「特定空家等」とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう。
鍵になるのは「常態であるもの」という一句です。統計は調査時点で人が住んでいるかどうかを見ますが、法律は状態の継続を要件にしています。したがって、統計上の空き家900万2千戸がそのまま空家法の空家等になるわけではありません。二つの数え方は、目的が違うために定義も違います。2条1項のただし書が国と地方公共団体の所有・管理するものを外していることも、統計にはない線引きです。
法律の側は、統計にできないことをします。名前で特定するのです。9条1項は、市町村長が空家等の所在および所有者等を把握するための調査を行うことができると定め、2項は特定空家等に対する措置の施行に必要な限度で、報告を求め、または職員に立ち入って調査させることができるとします。立入りには五日前までの通知が要り(同条3項)、身分を示す証明書の携帯と提示が求められ(同条4項)、この権限は犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならないと明記されています(同条5項)。
そして10条1項は、市町村長が、固定資産税の課税その他の事務のために保有する情報を、この法律の施行に必要な限度において、本来の利用目的以外の目的で内部で利用することができると定めます。統計は所有者を数えませんが、税の台帳は所有者の名前を持っています。空家法は、そちらに手を伸ばす条文を置いたということです3。
もうひとつ、統計との対応がはっきり出る条文があります。
市町村は、空家等(建築物を販売し、又は賃貸する事業を行う者が販売し、又は賃貸するために所有し、又は管理するもの(周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう適切に管理されているものに限る。)を除く。以下この条、次条及び第十五条において同じ。)に関するデータベースの整備その他空家等に関する正確な情報を把握するために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
括弧の中を読んでください。販売または賃貸の事業を行う者が、そのために所有し、適切に管理しているものは、この条以下の「空家等」から外されています。統計でいえば、賃貸用の空き家443万6千戸と売却用の空き家32万6千戸の相当部分が、この除外に当たり得ます。統計がひとつの数に束ねたものを、法律は用途と管理の状態で切り分けている。同じ建物を見ていても、数え方の入口が違うということです。
空家法はさらに段階を設けます。13条1項は、そのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態の空家等を「管理不全空家等」と呼び、市町村長が指導をすることができると定めます。2項は、指導をしてもなお状態が改善されないときの勧告を置きます。22条は特定空家等について、助言または指導(1項)、勧告(2項)、命令(3項)、そして代執行(9項)までの順序を定めています。
命令の前には手続が置かれています。22条4項は、命じようとする措置とその事由、意見書の提出先および提出期限を記載した通知書の交付を求め、5項は、交付を受けた者が五日以内に公開による意見の聴取を請求できるとします。聴取を行うときは、その期日と場所を期日の三日前までに通知し、公告しなければなりません(7項)。五日と三日という短い期間が、条文に書かれています。命令をしたときは標識の設置その他の方法で公示され(13項)、命令に違反した者は五十万円以下の過料に処せられます(30条)。
大切なのは、この判断をするのが市町村長であって、統計調査ではないという点です。調査員が空き家と数えた家が特定空家等になるのでもなく、その逆でもありません。制度としては別の系統に属しています。
では競売の側はどうか。競売は、買受けの申出があってはじめて売却に至ります。その申出には下限が定められています。60条1項は、執行裁判所が評価人の評価に基づいて売却基準価額を定めるものとし、3項は、買受けの申出の額は売却基準価額からその十分の二に相当する額を控除した価額(買受可能価額)以上でなければならないと定めます。八割まで下がったところに床がある、という形です。
申出がない場合について、民事執行法は二つの出口を書いています。ひとつは63条です。差押債権者の債権に優先する債権がない場合に、不動産の買受可能価額が手続費用の見込額を超えないとき、あるいは優先債権がある場合に、買受可能価額が手続費用と優先債権の見込額の合計に満たないとき。執行裁判所は差押債権者に通知し、通知を受けた日から一週間以内に差押債権者が定められた申出と保証の提供をしないときは、手続を取り消さなければならないと定めます。価額が低すぎる不動産は、条文の側で先に落ちるということです。
もうひとつは68条の3です。こちらは条文をそのまま読みます。
執行裁判所は、裁判所書記官が入札又は競り売りの方法による売却を三回実施させても買受けの申出がなかつた場合において、不動産の形状、用途、法令による利用の規制その他の事情を考慮して、更に売却を実施させても売却の見込みがないと認めるときは、強制競売の手続を停止することができる。この場合においては、差押債権者に対し、その旨を通知しなければならない。
三回という回数と、考慮すべき事情の並びが条文にあります。形状、用途、法令による利用の規制、その他の事情。ここに「周辺に空き家が多いこと」は挙げられていません。差押債権者は通知を受けた日から三月以内に売却実施を申し出ることができ(同条2項)、その申出がないときは、執行裁判所は手続を取り消すことができます(3項)。これらは担保不動産競売にも準用されます(188条)4。
ここで、冒頭の筋道に戻ります。空き家が増えているから競売でも買い手がつかない、という言い方はできるのか。公表資料からは言えません。住宅・土地統計調査は競売にかかった不動産を区別して数えていませんし、司法統計は不動産が空き家かどうかを記録していません。二つの資料を突き合わせる材料が、公表されている範囲には存在しないのです。言えるのは、条文が売却の見込みのない場合の手順を用意している、という事実までです。
もう一点だけ、法律が空き家と競売の間に置いた接点を挙げておきます。空家法14条1項は、市町村長が、空家等の適切な管理のため特に必要があると認めるときは、家庭裁判所に対し、民法25条1項の規定による命令(不在者の財産の管理)または同法952条1項の規定による相続財産の清算人の選任を請求することができると定めます。2項は、地方裁判所に対する民法264条の8第1項の命令(所有者不明建物管理命令)の請求を置きます。所有者が分からない建物について、誰も動かせない状態を解く筋道が用意されているということです。売却の当事者を立てる場面で効いてくる条文ですが、動かすのは市町村長であり、当社ではありません。
注
参考文献
この記事のよくある質問
総務省「令和5年住宅・土地統計調査」の住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計、2024年9月25日公表)によると、2023年10月1日現在の空き家は900万2千戸、総住宅数6,504万7千戸に占める割合は13.8%です。ただし内訳をみると、賃貸用の空き家が443万6千戸、売却用の空き家が32万6千戸、二次的住宅が38万4千戸、これらを除く空き家が385万6千戸です。総数だけを見ると、貸すために空いている部屋と放置された家の違いが消えます。
なりません。空家等対策の推進に関する特別措置法2条1項は、空家等を「建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地」と定義しています。統計調査が調査時点で人が住んでいるかどうかを見るのに対し、法律は状態が常態であることを要件にしています。また特定空家等に当たるかどうかは市町村長が判断する事柄であり、統計調査が決めるものではありません。
民事執行法68条の3第1項は、入札または競り売りを三回実施させても買受けの申出がなかった場合において、不動産の形状や用途などを考慮してさらに売却を実施させても見込みがないと認めるときは、執行裁判所が手続を停止することができると定めています。差押債権者が通知から三月以内に売却実施を申し出ないときは、手続を取り消すことができるとされています。ただし、これは条文上の手順であり、個別の事案でどうなるかを当社が申し上げることはしていません。
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