家族や連帯保証人に内緒のまま任意売却を進めることはできますか?
共有名義人や連帯保証人がいる場合、売買契約および抵当権抹消の段階で本人の署名・実印の捺印が必須となるため、秘密のまま進めることはできません。延滞前に誠実に事情を説明し、合意を形成しておく必要があります。
この記事の結論
Q. 住宅ローンの返済が厳しくなったら、いつ家族や連帯保証人に打ち明けるべきですか? A. 延滞が始まって督促状が届いてからではなく、「返済が苦しい」と予見できた段階で家族会議を開くのが鉄則です。特にペアローンや連帯債務・連帯保証人がいる場合、滞納事故は相手の信用情報にも直結します。現在の収支表・借入残高・返済猶予や任意売却の選択肢という3つの客観的な資料を揃えて話し合う手順を宅建士の大石浩之が解説します。
住宅ローンの返済が苦しくなったとき、多くの方が「家族に心配をかけたくない」「自分の収入が減ったことを言い出せない」と一人で抱え込みます。しかし、預貯金を取り崩して何とかしのぎ、口座残高が尽きて延滞が始まってからでは、選べる解決策の選択肢は一気に狭まります。
金融機関から黄色や赤色の督促状が自宅ポストに届き、家族がそれを手にして初めて事実を知った場合、「なぜ今まで黙っていたのか」「どうして相談してくれなかったのか」という不信感と怒りが爆発します。お金の問題に家庭内の感情的な対立が上乗せされると、冷静な話し合いは極めて困難になります。
大石浩之(磐田市/宅地建物取引士)です。任意売却や住宅ローン返済相談の実務において、最も再建がスムーズに進むのは「まだ一度も延滞していない段階で、夫婦や親族が足並みを揃えて相談に来られたケース」です。金融機関への相談や住み替えの準備には一定の時間を要するため、返済が苦しいと予見できた現時点で家族会議を開く段取りが求められます。
特に夫婦でペアローンを組んでいる場合や、配偶者・親族が連帯保証人・連帯債務者になっている場合は、個人の問題として隠し通すことは法的に不可能です。
主債務者が住宅ローンの返済を滞納すると、金融機関は連帯保証人に対して即座に請求を行います。さらに、個人信用情報機関(CICやJICCなど)に延滞情報が登録された場合、ペアローンの相手方や連帯債務者の信用情報にも重大な悪影響が及び、クレジットカードの利用停止や将来の借り入れ制限が発生します。
| 契約形態 | 返済困難時の責任範囲 | 信用情報への影響 |
|---|---|---|
| 単独名義(保証人なし) | 契約者本人のみが返済義務を負う | 本人の信用情報のみに延滞情報が記録される |
| ペアローン(各自が主債務者) | 双方がそれぞれのローンに対して全額返済義務を負う | 双方が個別に延滞扱いとなり、二重に信用情報が傷つく |
| 連帯債務(収入合算) | 主債務者と同等の全額返済義務を連帯債務者が負う | 連帯債務者の信用情報にも同等に延滞情報が登録される |
| 連帯保証人(親・配偶者) | 主債務者が延滞した時点で直ちに代行返済義務が発生 | 請求が移行し、代位弁済となれば保証人側も事故扱いとなる |
相手を守るつもりで黙っていた結果、相手の信用情報まで傷つけてしまう事態は避けなければなりません。連帯保証人や共有者に対しては、延滞が発生する前の段階で誠実に状況を説明することが不可欠です。
家族会議を開く際、単に「お金が足りない」「何とかしてくれ」と感情的に訴えても、非難の応酬に終わる危険があります。話し合いを前進させるためには、以下の3つの客観的な資料をあらかじめ紙に印刷してテーブルの上に提示する手順を踏みます。
金融庁が公表している「中小企業等の貸付条件の変更等の状況」によると、金融機関における住宅ローンの条件変更(返済猶予・期間延長など)の実行承認率は約98%と高水準で推移しています。2026年9月19日に最新の開示資料を確認しました。つまり、延滞する前に金融機関の窓口へ相談に行けば、元金据え置きや返済期間の延長によって毎月の負担を軽減できる可能性が十分にあります。
条件変更の具体的な手続きやメニューの選び方は返済変更メニューの選び方に整理してあります。金融機関へ相談に行く際にも、家族の同意が得られているかどうかが厳しく確認されます。
また、条件変更を行っても家計の回復が見込めない場合には、競売による強制立ち退きを避け、周囲に知られずに通常の市場価格で売却を進める「任意売却」へ舵を切る必要があります。任意売却を行うには、共有名義人や連帯保証人の同意書への署名・捺印が必須となります。早めに家族会議で合意を形成しておくことが、後の手続きを円滑に進める決定打となります。
住宅ローンの返済に行き詰まることは、決して恥ずべきことではありません。病気や勤務先の業績悪化、予期せぬ支出など、誰の身にも起こり得る生活の危機です。最大のリスクは、問題そのものではなく、問題を一人で抱え込んで判断を先送りにしてしまうことにあります。
督促状が届いて追い詰められる前に、客観的な収支表とローン明細を用意し、家族や連帯保証人と膝を交えて話し合う時間を作ること。そして家族の同意のもとで速やかに金融機関や専門家へ相談すること。その一歩が、大切な家族の生活と未来を守る確かな足がかりとなります。
当社では、住宅ローン返済に関する初期相談から金融機関との交渉、任意売却の実施まで、ご家族の心情に配慮しながら伴走いたします。相談の流れは当事務所の相談体制をご確認ください。
一次情報:https://www.fsa.go.jp/ordinary/chusyou/jikkoujoukyou.html
この記事のよくある質問
共有名義人や連帯保証人がいる場合、売買契約および抵当権抹消の段階で本人の署名・実印の捺印が必須となるため、秘密のまま進めることはできません。延滞前に誠実に事情を説明し、合意を形成しておく必要があります。
実際に口座から引き落としができなくなる前、家計の赤字が埋まらないと分かった段階です。延滞前に相談すれば、銀行への条件変更申請により相手の信用情報に傷をつけずに解決できる可能性が高まります。
当事者同士だけで話すと感情論になりやすいため、第三者である宅建士や専門窓口を交えて面談を行うことをおすすめします。客観的な数字と選択肢を提示することで、冷静な合意形成を図ることができます。
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富士ヶ丘サービス株式会社/宅地建物取引士 大石浩之(静岡県知事 第027186号)。 記事の内容は執筆時点の法令・公表資料にもとづきます。 個別の事案の見通しを示すものではありません。